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木立 真直ゼミ 見学調査報告書

テーマ  :ヤクルトの農耕型経営と国際化戦略
調査日  :2018年4月9日(月)
参加学生数:3年生19名 院生1名
調査先  :株式会社ヤクルト本社(東京都港区)

ご対応者 :株式会社ヤクルト本社
      国際部 島田淳一様 梅田武志様 内山 大様

調査の趣旨:

 乳酸菌飲料を軸に海外市場に早い段階から積極的に進出し、成功を収めている株式会社ヤクルト本社の国際事業とくにマーケティング・販売戦略についてお話を伺うことで、国際事業成功の軌跡を学ぶ。

調査結果:

 国際部事業推進課の梅田様から「ヤクルト本社の国際事業」についてのプレゼンテーションをして頂いた。内容は、①ヤクルト本社の概要、②国際事業の歩みと現状と特徴、③学術広報活動、の3つの柱からなっていた。

 ヤクルト本社は、創業者の理念である、手に入れやすい価格のヤクルトを提供することにより誰もが願う健康を実現したいという「代田イズム」を軸に、国内のみならず海外においても事業を展開してきている。海外でも、同社の確かな技術力と商品力、現地の消費者にとって購入できる手ごろな価格の実現によって、消費者からの信頼という価値を獲得している。現在、世界37か国・地域で主力商品であるヤクルトを販売しており、世界中の消費者にとっての予防医学の実現と「健腸長寿」を支える大きな役割を担っている。

 ヤクルト本社は、1964年の台湾への進出を起点に、東南アジア、アメリカ合衆国、ヨーロッパなどに販売網を拡大してきた。予防医学が必要な発展途上国から、ヤクルトという商品を「求められる」ことで、海外進出を行ったケースもある。一般的には、同社の海外進出は、事前の市場調査を十分に行った上で慎重に決定され、進出先国にしっかり根付くことを目指した地道な「農耕型経営」という基本方針の下で進められている。

 海外市場でのマーケティング・販売戦略については、日本と同様のヤクルトレディによる訪問販売を基本としながらも、現地市場の特性に応じた修正が加えられている。東南アジアの国々では、ヤクルトレディを現地でスカウトし訪問販売を展開し、同時に店頭販売も行っている場合が多い。これに対し、先進国では、国民性や文化、法的規制などの違いから店頭販売のみが一般的である。例えば、オーストラリアでは当初、訪問販売の展開を試みたが、最終的には店頭販売方式のみとなった。ある程度市場が成熟し、インフラが整っている先進国では、訪問販売に対する消費者の抵抗もあるようである。このように、それぞれの進出先国の市場特性に合わせた販売戦略を採用することで、ヤクルト本社の海外企業規模は同社の営業利益の68.3%を占めるまでに拡大している。

 ヤクルト本社が日本国内だけでなく海外市場においても消費者の価値評価と信頼と獲得できたのは、「健康で楽しい生活づくりに貢献する」という企業理念によるところが大きいのではないかと強く実感できた。また、ヤクルト本社では乳酸菌飲料に加え、化粧品、医薬品など様々な事業を展開しているが、その展開の基やきっかけは乳酸菌であり、ヤクルト本社の事業には絶えず乳酸菌が絡んでいる。他の事業を展開しながらも、主軸にあるのは乳酸菌飲料であると感じた。さらに、プレゼンテーション内で、実際に海外に派遣された日本人社員の仕事ぶりをビデオで拝見し、海外事業を支える普及・営業活動がどのように取り組まれているのかを知ることで、我々、学生の視野を広げることができた。

 今回の訪問は、ヤクルト本社が創業者の理念を大切にし続け、その理念を基本に現地市場の特徴を踏まえて海外に進出する経営戦略を採用していることが結果的に多くの国々の消費者からの支持につながっていることを学ぶ貴重な機会となった。

(文責:木下剣一、大鷹りか、冨田浩史、石黒彩、奈古澄香、山下舞子)

 

(株)ヤクルト本社会議室にて