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中村亨 1年ベーシック演習 実態調査報告

調査日:2017年2月28日~3月2日
参加学生数:1年生5人
調査先:グアム大学、チャモロ文化村、タモン地区の商業施設、ショッピングセンター

調査の趣旨(目的)

 『アメリカとグアム:植民地主義、レイシズム、先住民』の読解をもとに授業で学んだグアム社会と先住民チャモロ民族の現状について、現地での実際の直接的な体験を通して、知見を広めることを目指す。
 そのために、グアム大学で文化交流会を行い、チャモロ語とチャモロ文化を教えているベヴァクア教授と、教授に教わっている現地の大学生の話を聞いて、チャモロの人々の日常生活とグアムの現状についての理解を深める。また現地の商業施設とマーケットを訪れ、グアムでのアメリカナイゼーションの実情と伝統文化の維持について調査する。

調査結果

 今回のグアムの活動は、3月1日にグアム大学で行った文化交流会を中核とするものである。グアム大学のベヴァクア教授の授業に参加させてもらい、そこでベヴァクア教授と受講生の現地学生からチャモロ文化とグアムの現状について教わり、一方中央大学の学生は、日本の伝統文化についてプレゼンテーションを行う、という企画だ。ちなみにこの交流会は、ベーシック演習の授業にゲストスピーカーとしてお呼びした『アメリカとグアム』の著者長島怜央氏に、ベヴァクア教授を紹介していただいて実現した。長島氏とベヴァクア教授のご好意には心より感謝したい。
 交流会は昼の12時半からの授業を使って行われたが、その時間の授業を受講している学生以外に、ベヴァクア教授が担当している別の授業からも参加希望者を募っていただき、結果的には45名もの学生がやってきて、盛大な催しになった。

【文化交流会―中大生のプレゼンテーションと、チャモロ伝統料理の昼食】
 最初に中大生が、日本から持参した浴衣と祭り半纏の実物を展示し、今日の日本人が着物を着る機会となっている、正月、成人式、七五三や夏祭りといった行事について写真なども使いながら英語で説明を行った。正月についての説明では、コマ回しなど伝統的な遊びについても解説と実演を行い、グアム大学の学生からは歓声が上がった。
 伝統的な行事の説明に続いて、グアム大学の学生のうち希望者何人かを対象に実際の浴衣の着付けを行い、さらにその後、グアム大の学生をいくつかのグループに分け、一人一人に中大生が作り方を教えながら、折鶴を全員で一緒に作った。日本から学生が持参した和柄入りの折り紙が好評で、グアム大生は自分で作った鶴を自宅へのおみやげにし、終始楽しんでいる様子だった。
 中大生のプレゼンテーションのあとは、グアム大学の学生たちが手作りのチャモロ伝統料理を持ち寄り、それぞれの料理について説明してくれた。その料理を食べながら、中大生とグアム大学の学生たちは歓談の機会を持つことができた。
 当初の予定では、食事をしながらさらにベヴァクア教授によるグアムの歴史についての講義を、中大生とグアム大の学生が一緒に聞く予定だったが、双方の学生のプレゼンテーションでほぼ授業終了時間となった。

【ベヴァクア教授との対話】
 授業が終わり、グアム大学の学生たちが帰ったあと、ヴェバクア教授のご厚意により、グアムの歴史と現状についての中大生の質問に教授が答え、説明をする時間を設けていただいた。第二次大戦後のアメリカ合衆国による同化主義的な教育と、それに対するチャモロの人々の反応についての質問、あるいは沖縄と比べるとグアムでは米軍基地への抗議運動や反発があまり見られないように思えるがそれはなぜなのか、トランプ大統領が選ばれたことでグアムにはどのような影響があるのか、といった一つ一つの質問に対し、教授は身近な具体例を挙げながら丁寧に、分かりやすく答えてくださった。年配のチャモロ人は学校でチャモロ語を話すと罰金を取られた苦い記憶があるため、今でも話したがらない人が多い、という説明に、学生たちはとりわけ驚いたようだった。

【グアムのマーケットと商業施設】
 3月1日は、グアム大学での交流会が終わったあと、チャモロ文化村で週に一度開かれるマーケットに出かけた。昼の食事とはまた違ったチャモロ料理の屋台が立ち並び、観光客だけでなく地元の人も訪れており、お祭りのように賑わいだった。
 交流会前日の2月28日と翌日3月2日は、タモン地区の商業区域といくつかのショッピングモールを訪れ、アメリカの消費文化・大衆文化の島への浸透ぶりを知ることができた。ベヴァクア教授は中大生との質疑応答の中で、「もし日本に住んでいるのに、テレビをつけたら韓国や中国で製作された番組ばかりで日本の生活が映し出されていなかったらどう思う?アメリカ本土から発信される情報にほとんど埋め尽くされている、グアムの現状はそんなようなものだ」という主旨の発言をされたが、その意味が多少なりとも理解できたように思う。確かに書店を覗いてみても、アメリカ本土と変わりない雑誌や本ばかりで、グアムで発行された出版物はほとんど見当たらない。
 またベヴァクア教授は、「戦後のグアムは基地建設のために農地を奪われ、基地と観光に依存するサービス業以外の産業は衰退してしまった。食料も何もかも島外から買い入れなければならなくなった」とも語っていたが、スーパーマーケットに行くと、「ローカル」という札のついたごく一部の野菜や魚以外は、肉も野菜も加工品もほとんどアメリカ本土から輸入されたものだった。
 グアム社会が抱える問題について学んだ上で現地を回ってみると、青い海、南国の楽園という観光化されたグアムのイメージとは異なる、現実の一端が垣間見えた。

【参加学生たちの感想】
 最後に、参加した学生たちがレポートに書いた感想の一部を紹介しておく―

「グアム大学では日本の文化について、着物を軸としてプレゼンテーションを行った。学生は熱心に聞いてくれて、中にはメモをとりながら聞いてくれる方もいた。そのような環境だったので、緊張したが非常にやりがいのあるプレゼンテーションだった。」

「(プレゼンテーションは)すごく緊張しましたが、みんな興味関心を持って聞いてくれて、頑張って練習した甲斐もあり、とても達成感がありました。日本からのお土産もすごく喜んでくれてよかったです。」

「(交流会で)一緒に食事を囲み、同年代の外国人と会話するのはとても新鮮でした。」

「今回のグアム研修では、やはりグアム大学を訪ねたことが大きかったと思う。違う国の同年代の学生たちや先生と出会って言葉を交わしたり触れ合うことで、決してただの旅行では得ることのできない有意義な時間を過ごすことができた。」

「今回の旅行が自分にとって初めての海外旅行であったが、海外で英語を話す楽しさが感じられ、とても自信がついた。語学力や対話力をもっと向上させ、たくさんの国や地域を見て、世界をもっと知りたい、と本気で思った。」