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吉村ゼミ 国内実態調査

授業科目:ベーシック演習「国際人入門」
教員氏名:吉村謙輔先生
調査日:2016年2月28日〜3月2日
調査先:沖縄

調査の趣旨

商学部一年生が対象のこの演習では、人権問題と環境問題に焦点をあてた活動を行っています。毎年世界の様々な国を訪問し、教室ではなかなか見ることのできない、現地の生の実態を体験してきています。

調査結果

2月28日には那覇到着後、国際通り近くの那覇市伝統工芸館を視察しました。そこでは沖縄の自然と風土から生まれ、海外との交流を通して磨き上げられ、現代に引き継がれて来た那覇の伝統工芸が紹介されいます。工芸館では館長の渡久地一彦氏から直接、沖縄のツーリズムにおける伝統工芸の役割と技能後継者育成事業の現状について詳しい説明を受け、質疑応答を行いました。那覇の5つの事業協同組合によって運営されているこの工芸館はマーケティングにも力を注いでおり、変化する消費者嗜好に対応しようとしています。琉球銀行の紅型(びんがた)デザインコンテストの優れた入賞作にも接する事ができました。体験工房では実際に琉球ガラスとシーサーの製作を行いました。シーサー工房担当の高江洲貴氏からは沖縄のシーサーの歴史について詳しい説明を受けるとともに日本国内の米軍基地の74%が集中している沖縄の基地問題についても率直な意見を伺いました。
 翌2月29日の10時からは那覇市内にある琉球新報本社を訪問し、新聞博物館の岡田輝雄館長から、沖縄の歴史について詳しい説明を受けました。そこでは本土での歴史教育において何が欠落しているかを確認する事ができ、負担の偏在の実態を豊富な映像史料で見る事ができました。12時からは松本剛論説委員、与那国松一郎と会見し、この会見のために用意して下さった「命の二重基準と民主主義の塾度—辺野古新基地問題」と題した資料の提供を受けると同時に、騒音問題、代執行訴訟などについても説明を受け、本土のメディアの論調などについても質疑応答を行いました。
 2月29日午後は、貸し切りバスで名護市に移動し、地元資本で本土にも出荷しているオリオンビールの工場を視察しました。行きの移動には一般道を使用したので途中、嘉手納基地やキャンプ・ハンセン、山岳地帯の特殊部隊射撃演習場なども見る事ができ、いかに広大な面積を米軍施設が占めているかを確認する事ができました。
 1957年に米国統治下で設立されたオリオンビールは、第二次産業が沖縄の経済発展には不可欠であるとの哲学に根ざし、県民ビールを目指して発展して来た。現在ではアサヒビールと積極的に技術提携・業務提携を行うまでになっています。ここでは沖縄の風土にあった飲料の開発の努力について詳しい説明を受けました。中国、台湾、韓国からの訪問者も多く、この工場は本来観光資源の乏しい沖縄本島中部における教育ツーリズムの機会も提供しています。
 翌3月1日には慶良間諸島でザトウ鯨の生態観察を行いました。この時期、この海域ではザトウ鯨の繁殖行動が見られるとされますが、当日は一頭と遭遇しただけで過去の乱獲が海洋性哺乳類に深刻な打撃を与え、それがエコツーリズムにとっても打撃になっている厳しい現状を体験しました。
 3月2日は渡嘉敷島周辺でシュノーケリングによる珊瑚などの生態観察を行いました。渡嘉敷島のマリンハウス阿波連の代表富濱大輔氏から、最近のツーリズムの動向について説明を受けると共に今後の課題について意見交換を行いました。近年はここでも台湾と中国からの訪問者が増え、多言語でのツアーを導入しています。スタッフも語学力と異文化コミュニケーション力を養う努力をしています。
 3月2日の午後は5つの班に分かれて阿波連市内でエコツーリズムについて街頭調査を行いました。小学校でも珊瑚の根付けやゴミの清掃活動を行っている他、体験ダイブなども行っていることが確認されました。珊瑚の上に石を投げない、ゴミを捨てない、島の食材を中心に料理をつくるなど環境・文化ツーリズムの前提となる教育が小学校でも行われています。宿泊観光客の減少は課題ですが、利益優先ではなく島の固有の文化や環境を守る事が大切という意識の強さが調査結果には顕著に現れました。また沖縄戦体験者からは集団自決の時の状況についても直接体験を聞くことができました。