学部・大学院・専門職大学院

アメリカの文化について考える(中村 亨ゼミ)

教員氏名

中村亨先生

授業日

2016年11月11日

授業名

ベーシック演習

授業場所

5701教室

履修人数

16人

授業実施結果

昨年出版された単行本『アメリカとグアム―植民地主義、レイシズム、先住民』の著者、長島怜央氏をお招きし、アメリカによって実質的には植民地化されていると言っていい、グアムの現状と歴史についてお話しいただいた。グアムには、来年の春に授業の一環として受講生と教員で実態調査に行く予定であり、その準備として長島氏の『アメリカとグアム』のいくつかの章を授業で読んでいたので、その本の著者からお話をうかがい、直接対話を交わす機会を持てたことは、受講生にとって貴重な体験となった。
長島氏は、現地で撮影した写真を見せながら、アメリカの軍事体制が生活の中に浸透しているグアムの人々の暮らしについて、具体的に説明してくださった。軍に入隊する島民が多く、旅行者が空港に到着すると、アメリカの対テロ戦争で亡くなったグアム出身の軍人たちのおびただしい数の顔写真と氏名が掲げられてることや、軍のパレードが広く受け入れられた恒例の催しとなっていること、学校の課外活動に軍事教練のようなものがあることなど、数々の興味深い事例をうかがうことができた。長島氏の著書を読んで、グアムの社会がアメリカの軍事化に組み込まれていることはすでにある程度学んではいたが、活字や本からだけでは得られない、生きた知識を得られたように思う。
また、グアムの人々は一般にアメリカへの愛国心が強い一方で、多くの人がアメリカからの脱植民地を求めていること、またその脱植民地化とは必ずしもアメリカからの独立ではなく、グアム島民が自分たちの進路を自分で決定する権利を獲得することであって、アメリカの州への編入を求める立場も含むものであることなどもご説明いただいた。
長島氏のお話のあとは、質疑応答と受講生との対話の時間とした。第二次世界大戦後、基地建設のために島民の土地が接収されたり、アメリカに対し従属的な立場にあるのに、島民が一般に親米的なのはなぜか、といったことや学校卒業後のグアムの若者の進路についてなど、様々な質問が出された。質問の一つ一つに長島氏は丁寧に答えられ、活発で有益な質疑応答の時間となった。