文学研究科

文学研究科 公開講演会が開催されました。

2019年06月26日

              Aldrin P. Lee 先生

全学協定に基づく研究協力関係をより一層発展するために、フィリピン大学准教授 リー・オールドリン先生(元言語学部主任)を招聘し、公開講演会および特別講演会を開催しました。聴講者は文学部学部生および文学研究科院生を中心でしたが、講演会とその後の懇親会等を通して、リー先生と学生の間で活発な交流をすることができました。公開講演会では、フィリピンにおける「災害用語」をテーマに、語用論的観点から分析が行われました。自然災害が多発する日本に住む学生たちにとっても、身近な話題であったため、質疑応答も熱心に行われ、実りある講演会となりました。

テーマは「UNDERSTANDING DISASTER TERMS IN A PACIFIC RIM COUNTRY: THE CASE OF THE PHILIPPINES」

              講演会風景

「UNDERSTANDING DISASTER TERMS IN A PACIFIC RIM COUNTRY: THE CASE OF THE PHILIPPINES」要旨はこちら

本講演では、災害用語に焦点をあて、language documentation (ドキュメンテーション言語学)の例示とその重要性、さらに社会科学的な観点も含め、研究の必要性が唱えました。環太平洋地域にあるフィリピンは、世界でも自然災害が頻発する国です。地震や津波などの災害から、人々が被る危険を最小限にとどめるためには、人々の行動に影響を与え得る災害用語の理解が必要です。フィリピンでは公用語としてのタガログ語また教育現場で使用されている英語以外にも多くの現地語があり、それらの言語話者が存在します。そのため、例えば、storm charge(高潮)という用語を聞いても、それが何を表すのか、理解できない人々がいるのが現状でです。storm chargeという現象を理解するための一つの方策として(言語学からの貢献として)、言語語用論的メタファー(Lakoff & Johnson 1980) を用いて、人々の理解を容易にし、その結果、災害を回避することが提案されました。多くの事例と共に幅広いトピックが取り上げられ、メタファーと災害用語の関係、人々の理解とその後の行動、フィリピンまた環太平洋国における災害回避への貢献について、説明いただきました。

文学研究科博士学位請求論文の審査委員や日本第二言語習得学会にも参加

リー先生には、文学研究科博士学位請求論文の審査にも加わっていただきました。フィリピンからの留学生Duenas Ian Francis Carillo氏による博士論文では、ビサヤ語を母語とする英語の第二言語習得を扱いました。フィリピンの言語の一つであるビサヤ語の言語学的分析については、本学教員ではカバーできない領域も含まれているため、リー先生に副査として加わっていただくことで、様々な視点から貴重なフィードバックを得ることができました。さらに、6月1日、2日に本学で開催された日本第二言語習得学会に出席されました(大会参加者139名)。学会では、言語学的枠組みによる第二言語習得の最新の研究成果の報告が数多くなされたましたが、本学の学生や教員のみならず、他大学からの参加者(学部生、院生、研究者)との研究交流もなされ、滞在期間中、有意義な時間を共有することができました。

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