文学研究科

専攻(コース) 特色と研究内容

国文学専攻

本専攻の研究分野には大きく分けて国語学と国文学とあります。国語学は、文法、語彙、音韻等、様々な日本語の現象を対象にし、国文学は、上代から現代にいたる文学・芸能の諸ジャンルを対象として研究します。対象へのアプローチの仕方は多様です。たとえば、言語学的手法による文献解読、木簡など新しく出土した文字資料を取り入れた研究、古い資料の同位元素による年代分析、電子メディアによる資料の分析など、他の学問分野との協力による新しいアプローチも行われています。その他、読者論、メディア論など、文学を多様な観点から分析するアプローチも試みられています。本専攻は、学問の伝統的な研究を継承しつつ、それらの新しいアプローチも取り入れ、オーソドックスでありながらも、常に学問の最先端を目指しているのが特色です。
前期課程では、高度な専門性を持つ社会人の育成を目標としています。各々における分野の専門的な研究を行うだけではなく、「書誌学」「浮世絵学」「映像文化史」「マンガ論」といった隣接する分野の多彩な授業科目も設け、幅広い知識を身につけることを目標としています。また、国語科教員を目指す学生のために「国語科教育演習」も設けています。後期課程では、前期課程での成果を踏まえ、研究をさらに深化させ、学位取得、専門職を目指す人材を育成します。
本専攻では、国語国文学の高度の知識を身につけ、それを活かして国語科教員や研究職、情報産業に就く人材を養成します。日本固有の文化を継承し、その価値をさまざまな観点・方法で世界に発信しようとする意欲を持った人を心から歓迎します。

英文学専攻

本専攻では、専任教員12名(うち外国人教員2名)と兼任教員2名という充実したスタッフの下で、英文学・米文学・英語学の3分野にわたる講義・演習が開設されています。文学関係では詩・小説・演劇・文化、英語学関係では英語史・言語理論・第二言語習得などさまざまなテーマを扱う授業があり、学生の多様な関心に対応できるカリキュラムを用意しています。 博士前期課程では、それぞれの分野の専門研究を深めると同時に、研究方法や分析理論についても学び、さらには修士論文作成のための基礎的英語力を養いつつ英語で論文を書く技術を身につけられるように、授業が編成されています。博士後期課程では、個別的な研究指導に重点を置き、それぞれの学生の博士論文の執筆をきめ細かくサポートする体制が整っています。また、中央大学と英語圏の大学との協定を利用することにより、在学中に留学して専門的知識を深めつつ、英語力を高め、異文化への理解を身につけることもできます。
本専攻独自の学会もあり、年1回の学会誌の発行、外部講師による講演会の開催など、多彩な活動が展開されています。そのほか、学外の学会での口頭発表や査読審査のある学会誌等への論文の投稿を奨励しており、発表や投稿の前には懇切丁寧な指導を行って、研究機関への就職に結びつく成果を積み重ねることができるように支援しています。
卒業後は、中学・高校教員、大学教員、塾講師などの教育職に就く学生もいれば、英語力を生かして企業に就職する学生もいます。教員を志望し、高度な英語力を身につけたい学生、英語圏文学の多様かつ豊穣な世界を探求したい学生、英語という言語の歴史や構造を理論的に学びたい学生を歓迎します。

独文学専攻

本専攻は教員7名(うちドイツ人2名)から成り、ドイツ語学、ドイツ文学、ドイツ思想、ドイツ文化学、ドイツ演劇、ドイツ現代史の6分野を主な研究・教育の対象とし、さらに言語教授法、比較文学、比較文化、異文化コミュニケーション論、メディア学の5分野も視野に入れています。ドイツ語学では言語理論と応用言語学、ドイツ文学では近現代文学、文学理論、ドイツ思想では近現代思想と芸術美学、ドイツ文化学では美術、ドイツ演劇ではパフォーミングアーツ、ドイツ現代史ではドイツ語圏の社会と歴史が研究・教育の中心です。少人数のアット・ホームな雰囲気の中で、日本語・ドイツ語双方を用いた高いレベルのリサーチ能力、分析能力、発表能力、そして異文化コミュニケーション能力を身につけ、国際的教養を磨いていくことができるよう、ドイツ語圏の大学、研究者との研究協力・学生交流を積極的に進めています。通常の授業形態のほか、教員と大学院生全員が参加する研究発表会があり、ドイツ語圏からの客員教授や客員講師が同席することもあります。また、ドイツ人研究者による講演会や研究セミナーも開催しています。

仏文学専攻

本専攻は専任教員6名と兼任教員1名により、フランスとフランス語圏の文学・文化・思想・芸術を広く深く学ぶ場を提供します。博士前期課程では、学部で身につけたフランス語力をさらに強化し、フランスや仏語圏の文学・文化・思想・芸術を深く学ぶことによって、コミュニケーション能力とさまざまな職業で活かせる専門知識を身につけます。また、博士後期課程での研究を志す学生には、後期課程につながる学問的基盤を養成します。博士後期課程ではより専門的な研究を行い、各種制度を活用して留学し博士論文を書いて研究教育職を目指す人のための高度な学問探究の場となります。本学の交換留学制度は充実しており、毎年リヨン、トゥールーズ、パリ・ナンテール、ブリュッセル、ジュネーヴの協定校で本専攻の学生が勉学に励んでいます。フランスや仏語圏から第一線の作家や研究者を招いて講演会を開くのも、本専攻の特徴です。

中国言語文化専攻

本専攻の研究分野は、中国語学、中国文学、中国文化学の3つに分かれ、各分野をカバーする専任教員5名と兼任教員1名で構成されています。中国語学の分野では、文法学、方言学、中国語教育学の各領域で問題となる諸現象の分析能力を養います。中国文学の分野では、古典文学および近現代文学の各領域について、単なる「作家研究」「作品研究」にとどまらない新たな文学研究のあり方を模索します。中国文化学の分野では、伝統中国から近代中国への転換についての思想文化学による研究、そして近代中国における西洋文化の導入や日本文化との影響関係についての比較文化学による研究などを行います。いずれの分野においても、活字媒体の資料だけでなく、電子データも扱える調査能力、資料読解力を身につけます。また、中国本土のみならず、台湾をはじめ、世界の華人社会を含めた中国語圏全体の文化事象に目を向けます。
博士前期課程では21世紀の中国研究の方向性を視野に入れ、①中国の伝統文化から同時代文化までの幅広い専門知識、 ②言語の背景となるさまざまな文化知識に裏打ちされた高度な中国語運用能力、③中国文学、中国語学の諸理論に関する高度な専門知識、④中国の言語と文化にかかわる特定の領域についての高度な専門知識と研究方法、⑤中国語圏の多様な文化事象を正確に分析できる能力、などを培うことを目標にしています。博士後期課程では、前期課程で培った知識と能力を基礎として、より専門的な研究の深化を図ります。学界の第一線で活躍する指導教員のもとで研鑽を積んで博士論文を執筆し、博士の学位を取得することも可能です。本専攻では、上述のような多様な専門知識と高度な中国語運用能力を身につけて、日中間の経済活動、文化交流、報道、教育研究などの分野で活躍を志す人の入学を期待しています。

日本史学専攻

本専攻では、実証を基礎として、視野を広く持ち、客観的・総合的に歴史事象の把握に努めることを目標としたカリキュラムを編成しています。前期課程では、学部時代に培った史料読解の能力を基盤に、さらに深い学識と研究能力を養うことを目標とし、後期課程では、自立して研究活動を行うのに必要なさらに高度な研究能力と、その基礎となる豊かな学識を養うことを目標としています。これらの目標を達成するため、先史・古代から近現代まで各時代の専任の教員が院生の多様な問題関心に応える態勢を整えています。
カリキュラムの特色の一つとして、史料学・史料管理学の充実が挙げられます。本専攻では近年歴史学界において重視され、社会からも要請されている史料管理学・博物館学関連の授業を早くから取り入れてきましたが、2007年度から科目を再編・増加し、一層の充実を図っています。また、日本史学の世界でもグローバル化が進み「日本」という枠にとらわれず、東アジアからさらには世界へと視野を広げることが、研究のうえで不可欠なものとなっています。こうした情勢に対応するため、認定留学制度を積極的に利用して韓国やロシアへ留学し、多くの成果をあげる院生も出てきています。修了生には大学・高校・中学校などの教員、博物館・史料館の学芸員など、研究・教育の分野で活躍する多くの人がいます。その母体となっているのが教員・院生・学生および卒業生で構成される「中央史学会」で、大会における研究発表、機関誌『中央史学』への論文掲載など、研究の環境も充実しています。本専攻は、学問に意欲的・積極的に取り組む学生の入学を求めています。充実した環境の中で、共に学び、大いに論議しましょう。

東洋史学専攻

本専攻では、深い専門知識を身につけると同時に、アジア全域にわたる幅広い教養を持つ人材を育てることを教育の目標に置いています。本専攻は、アジア全域をカバーできる幅広さと、深い専門性をともに備える教育課程を持ち、優れた教授陣と豊かな蔵書を擁する、日本を代表するアジア史専攻の研究室の一つです。専任教員は、中国史を専門とする2名の教員と、イスラーム(中東)、中央アジア、東南アジアの歴史を専門とする3名の教員で構成され、院生が博士課程在学中に博士号の取得が可能となるよう密度の濃い指導を行っています。海外の諸大学や研究機関との共同研究、学術交流も多く、院生の多くは在学中に海外に留学しています。アジアという広大な時空を対象とするために、本専攻の研究室には貴重書を含む4万冊に及ぶ内外の重要な研究書を開架しています。在学した人の多くは、全国の大学や研究所の研究者、高校の教員として活躍しています。近年は、特に博士前期課程修了者の中で、専門知識を生かして一般企業に就職し、アジア各国・各地域と関わりをもちながら活躍する人も増えてきました。このような卒業生の活躍を背景の一つにして、本専攻では、「白東史学会」という全国組織の学会を持ち、年次大会と月例会を定期的に開き、学界において定評のある機関誌『アジア史研究』を毎年刊行しています。アジアの歴史に興味を持ち、専門的な勉強を恵まれた環境のもとで深めたいと考えている人は、本専攻の門をたたかれんことを強く希望します。

西洋史学専攻

本専攻は、古代オリエント史、ヨーロッパ中世史、ヨーロッパ近世史、ヨーロッパ近代史、アメリカ現代史を専門とする5名の専任教員で構成され、古代から現代まで、ヨーロッパ、メソポタミア、アメリカの歴史を研究できるよう、指導を行っています。各専門分野の教員による指導だけでなく、年2回の院生報告会などで、博士前期・後期課程の院生の報告を全専任教員参加のもとで指導することにより、幅広い視野と的確な研究方法を学生が修得できるよう配慮しています。西洋史に関心があり、学びながら自分で考え、積極的に発信できる人を歓迎します。博士前期課程では、基礎的な研究能力を高めるとともに、前期課程を修了して教職等に就く学生も視野に入れて国際的な視野とコミュニケーション能力を養成することを目的としています。なお本専攻では語学が重要であるため、古代の言語やラテン語を中心に語学力を高める指導を行っています。博士後期課程では、自立した研究者となるために研究を深化させ、博士論文を完成させることを目標とし、学会報告や論文執筆のための指導を行っています。西洋史学の研究では、研究対象とする地域に赴いて学び、史料収集することが必要であるため、留学するための支援や留学中の指導も行っています。修了後の進路は、教員(大学、高校ほか)や一般企業、出版社、公務員など多岐に渡っています。

哲学専攻

哲学は、すべての学問の始まりであり、いまでも万学を支える土台であることには変わりありません。本専攻の大きな特徴は、西洋と東洋の哲学・思想を同時に学べることにあります。しかも、西洋哲学では古代ギリシア哲学から現代哲学まで、東洋思想では中国哲学から日本思想まで、さらに科学史・科学哲学も学ぶことができます。このように時代的にも分野的にも幅広い領域を備えた本専攻では、複数の領域の授業を受け視野を広く持ったうえで、専門領域を深く学ぶことも可能です。また、語学を重視していることも本専攻の特徴です。原典を原語で正確に精緻に読解する力がなければ、先哲の思想を真に理解することはできません。原典を丹念に読み解き、先哲の偉大な思想に肉薄し、そのうえでさらに自分の考えを創り上げていく。その作業は忍耐を要するものですが、哲学することの本当のおもしろさは、そうした中でこそ味わえます。本専攻はこの2つの特徴を生かして、広く、深く、正しく思索し、創造することのできる人材育成を目指しています。本専攻が、学問世界のみならず、創造的な分野や教育分野に多くの優れた人材を輩出してきたのも、そのような教育方針によるものと自負しています。こうした能力の修得のために忍耐と努力を惜しまない人には、ぜひ本専攻の扉をたたいてほしいと思います。

「学びて思はざれば則ち罔(くら)し、思ひて学ばざれば則ち殆(あやふ)し」(『論語』)

社会学専攻

社会学専攻は、実証研究を重視する歴史によって、多彩な研究実績を積み重ねてきました。修了生は、研究職、教育職、社会調査員、公務員、家裁の調査官、少年院・刑務所教官、福祉の専門家、NGOの専門家、さまざまな企業の会社員など、各方面で活躍しています。前期課程では、指導教員をはじめとした研究室スタッフのもとで、個々人の専門分野について指導教員のもとで錬磨するのと同時に、社会学理論と実証、そして調査研究の手法について、できる限り幅広く学び、社会学的思考力を身につけることを追求します。後期課程では、緊密な個別指導と研究室内外の知的刺激によって、学会発表や投稿論文・博士論文の執筆に向けての実践的な訓練を行い、専門的技量を高めることを追求します。研究・教育の専門分野も多彩で、社会病理、社会運動、家族、都市・地域、社会学理論と社会学史、臨床社会学などを専門とするスタッフを擁しています。隣接専攻の「社会情報学」とカリキュラムや共同研究で協力することで、一段と厚みのある研究・教育体制になっています。海外の大学との交流や、留学生の受け入れ、共同調査・研究などを通じて、知的コミュニティの形成を目指しています。

社会情報学専攻

社会情報学は、社会に存在するさまざまな情報(社会情報)とそのコミュニケーション・蓄積・加工について多元的に考察する学問分野です。本専攻では、メディア・コミュニケーション、メディア文化、社会意識と社会心理、社会調査とデータ解析、図書館情報学、情報システム学の6つの学問領域を柱に、演習を中心とした少人数授業を行っています。博士前期課程では、基礎理論やそこから派生した基本的研究テーマ、実際の社会的課題の解決に資するようなテーマを推奨し、研究と指導を行っています。博士後期課程では、学術的見地から見てより高度な、もしくは、社会への波及効果やインパクトのより大きい研究テーマを設定するよう研究指導をしています。これらの授業を通じて、情報の溢れる現代社会において、情報と情報処理について理論的に深く考える人材、情報と社会の相互作用を多角的に捉えることのできる人材、適切な情報を適切なタイミングで探索・変換・提示・運用できる人材、社会と人々の記録・知識・世論などを積極的に収集・評価・活用できる人材の育成を目指しています。

教育学専攻

教育学とは、人間形成と教育の事実と概念を科学的に解明する学問です。理論的・歴史的なアプローチをとることもできますし、また、行政文書の分析や授業分析、インタビューやエスノグラフィー、アンケートなどの実証的な研究方法をもちいて課題に取り組むことも可能です。領域としては、教育哲学、教育史、教育方法学、教育社会学、教育行政学、生涯学習論など6つの領域があり、専任教員6名が指導にあたっています。前期課程では、学校、社会教育や福祉の現場、企業、地域社会等において、人間形成について広い視野と専門的な知識をもって活躍する職業人を育てるとともに、後期課程への進学を目指して、基礎的な研究法を習得させることを目的としています。後期課程においては博士論文に向けて、専門分野について個別指導を行うとともに、学会活動や他大学の教員や院生との研究交流を活発に行うよう指導しています。修了生は、大学や短大、研究所等の研究者、中学校や高等学校の教員、社会教育や福祉関係、人材養成やキャリア支援、国際協力にかかわる企業などで活躍しています。

心理学専攻

心理学は人間の行動と心を科学的に解明する学問です。本専攻では、実験室だけにとどまらず、広く人間の活動の場に触れ、また他領域の専門家との共同・交流を通じて教育と研究を進めています。博士前期課程には、心理学コースと臨床心理学コースを設置しています。心理学コースは、発達心理学、知覚心理学、認知心理学を専門とする教員が指導に当たり、心理学に関連する専門職につくことのできる人材の育成を目指しています。臨床心理学コースは、教育臨床、司法臨床、精神医学、神経心理学を専門とする教員が指導に当たり、心理臨床家に必要な知識と実践能力を培います。なお、臨床心理学コースは日本臨床心理士資格認定協会から臨床心理士指定大学院(第2種)の指定を受けており、1年間の実務経験の後に資格審査を受けることが可能です。博士後期課程では次代の心理学の教育・研究者の養成を目的として、前期課程での研究をふまえたより高度な研究を行い、博士学位取得を目指します。