経済学部

経済学部「交通経済論」にて京王電鉄株式会社様による特別講演が行われました

2025年7月3日(木)、「交通経済論(担当:後藤 孝夫)」にて、京王電鉄株式会社経営統括本部デジタル戦略推進部の秋山さまをお招きし、「京王電鉄を取り巻く環境とデジタルを通じたお客様との新たな接点」というテーマでお話しいただきました。

秋山さまはもともと銀行のシステム部門にてネットバンキングなどの開発に従事していましたが、よりお客様接点のある実務に携わりたいと幅広い業種のグループ会社を持つ京王電鉄に転職されたということです。経営企画部門やバス部門を経て、現在は同社に勤務しながら、感性工学を活用した感性AI社の代表も務めていらっしゃいます。感性工学とは、知覚や触覚など人間の感性を数値化し、商品開発やマーケティングに活かす学問です。

講演ではまず、京王電鉄の概要や歴史、沿線の特色が紹介されました。京王線・井の頭線で総延長84.7kmを結ぶという私鉄としてはコンパクトな規模ですが、交通・不動産・ホテル・生活サービスなど多角的なグループ事業を展開しています。最初は路面電車から始まり、戦後の発展を経て1990年代に鉄道網が現在の形になりました。以降は保育園や高齢者住宅、葬祭事業といった生活サービスを充実させるなど、地域全体の活性化に活路を見出しているとのことです。

その上で、今後の取り組みについては、京王グループ中期経営計画に示された2030年までの基本方針や重点施策のご紹介がありました。さらに一例として秋山さまは、京王電鉄が取り組むデジタルを活用した施策を中心に解説くださいました。アプリを通じて生活に密着した情報提供を行い、お客様との接点を増やす仕組みを構築しているほか、デジタルチケット「TAMa-GO」や乗車に対して京王トレインポイントを付与するなど、外出を促す取り組みをさまざまに行っているとのことです。
更なる賑わいの創出としてユニークなのがeスポーツへの積極的な取り組みです。新宿や笹塚、調布にeスポーツ拠点を設置するとともに、沿線でさまざまな大会を開催。ストリートファイターの大会には約4,700人が来場、配信は250万回を超える視聴数を記録し、ほかにポケモンの大会も開催したそうです。またイベントの協賛にとどまらず、記念乗車券や各駅ごとに違うポスターを掲出するなど実際に人が訪れるような仕掛けをし、京王グループとしても持続可能性を考慮した形で関わっているということでした。

学生からは「千歳烏山の特急停車について」など具体的な質問も出され、秋山さまは、これにより乗降客数が増加したほか、今後連続立体交差事業が完了すれば、もっと便利な街になるのではないかと語りました。 最後に紹介された京王グループの理念は、「すべての人に誠実であり、環境にやさしく、『信頼のトップブランド』を目指す」というものであり、デジタル施策も、単なる効率化ではなく、人の流れ=まちの活力を生む「スパイス」として捉えていることが印象的でした。