中央大学法学部とミュンヘン大学との学部間交流の一環として、ミュンヘン大学ドイツ法・EU 法サマープログラム(Munich University Summer Training in German and European Law(MUST))に毎年本学法学部生や法学研究科生(大学院生)を派遣しています。
このプログラムは、ミュンヘン大学において約4週間ドイツ法およびEU 法を学ぶもので、世界中から法律学を学ぶ30 人の学生だけが参加することができる、大変高度かつ希少なプログラムです。
2025年度は7月1日~25日に実施され、本学法学研究科生を1名派遣しました。
以下、参加した大学院生からの報告を掲載いたします。
1. MUSTプログラムで学んだこと
このプログラムには、⼤きく⼆つの学びがありました。
第⼀に、学問的な学びです。約1ヶ⽉の間に、ドイツ法の主要9科⽬(契約法、憲法、EU法、不法⾏為法、競争法、企業法、知的財産法、不動産法、税法)を英語で集中的に履修しました。
加えて、希望者はドイツ語を英語で学ぶ語学クラスにも参加できます。
「ドイツ語を英語で学び、さらにその中でドイツ法の考え⽅に触れる」という経験は、⾮常にユニークであり、MUSTプログラムならではの学習環境が整っています。
このような⾔語環境によって、法制度の背景や概念の形成過程を多⾓的に捉える姿勢が⾃然と養われ、これまでの法学の学び⽅とは異なる新鮮さがありました。
第⼆に、共に学ぶ仲間との出会いです。参加者は、ポーランド、オーストラリア、ジョージア、中国、ブラジル、トルコ、アメリカ、ペルー、デンマーク、ギリシャなど、多様な国や地域から集まっていました。また、ロースクール⽣、弁護⼠、⼤学院⽣など、⽴場や経験、視点も多様でした。中には共通法(Common Law)を基礎とする国の参加者もいれば、⼤陸法(Civil Law)の伝統の中で学んできた参加者もいました。
こうした違いの中で、互いに理解を共有し、補い合いながら議論を深める姿勢が共通しており、学修内容だけでなく、「法をどのように捉えるか」という視点そのものを広げる貴重な機会となりました。
2. ⼤変だったこと
授業内容は⾼度であり、さらに期間中には2回の試験が実施されるため、⽇々の復習と整理が⽋かせませんでした。
しかし、授業後にはミュンヘン⼤学の広い図書館やカフェ、学内の⾷堂で仲間と机を並べ、疑問点を出し合いながら理解を深めていく時間が多くありました。
学修の困難さを共有し、互いに補い合う経験は、このプログラムをより豊かなものにしていたと感じています。そして、⼤変さと充実感が同時に存在する、忘れ難い時間でした。
3. 良かったこと
学修⾯に加えて、ミュンヘンでの⽣活は、学びを実感へとつなげる時間でもありました。最も⼤きな収穫は、世界中に「話せる仲間」「相談できる仲間」ができたことです。
毎⽇の会話の中で、価値観や考え⽅の違いに気づき、それを共有する中で信頼が育っていきました。
また、以下のような⽂化的・実地的な経験は、学びをさらに深めるものでした。
・ノイシュバンシュタイン城への訪問を通じ、同じ景⾊を共有する
・ミュンヘン⼤学の近くにあるイングリッシュガーデンで放課後にピクニックする
・オペラ鑑賞を通じて同じ舞台を⾒つめ、感想を共有する
・The Palace of Justice Munich (ミュンヘン裁判所)を訪問し、法律が息づく場所を感じる
・現地法律事務所を訪問し、実務のあり⽅に触れる
授業で得た知識を、街や⽂化の中で確かめていくような時間が⽇常的にあり、学びが⽣活の中で育っていく感覚がありました。
4. 伝えたいこと
このプログラムは、単に海外で学修を⾏うという枠にとどまりません。
専⾨的の⾼い学び、多様な価値観を持つ仲間との協働、そして⽂化的体験が、互いに結びつきながら進んでいく1ヶ⽉です。
事前に全ての知識がそろっている必要はありません。必要なのは、
・法を主体的に学びたいという意欲
・新しい考え⽅に触れる柔軟さ
だと思います。
プログラムを終えた今でも、プログラムメンバーと定期的に連絡を取り合っています。
互いの進路や挑戦を励まし合う関係は、むしろこれからのキャリア形成においても確かな⽀えとなると思います。
1ヶ⽉という時間は短いようでいて、新しい視点やつながりを得るには⼗分です。
ぜひ、この機会を⾃分⾃⾝を広げる時間にしてほしいと思います!