ビジネススクール
日本企業の成長とガバナンスの未来について、EY新日本有限責任監査法人 相談役 片倉正美氏による特別講義を実施
2026年05月16日
2026年5月9日(土)、中央大学ビジネススクール(CBS)MBAプログラム プロジェクト研究科目(担当:八尋俊英特任教授)において、EY新日本有限責任監査法人 相談役の片倉正美氏をお招きし、「日本企業を取り巻く現状」をテーマとした特別講義を実施しました。本講義は八尋俊英特任教授が担当するプロジェクト研究の特別講義として行われ、たくさんの質問にもお答えいただきました。 またその後の通常ゼミにも参加いただき授業中の学生の意見も温かく見守っていただきながら意見交換等の温かい交流が夜まで続きました。
●概要
片倉氏の講義では、近年の日本企業を取り巻く環境変化を多角的に捉えながら、以下の主要テーマについて熱の籠る講義が行われました。
• 世界における日本の経済的立ち位置
GDP成長率の国際比較やアジアにおける相対的地位の変化を示し、日本が直面する構造的課題を提示。
• 失われた30年で日本企業が歩んできた軌跡
時価総額の推移や生産性の停滞をデータに基づき説明し、「稼ぐ力」の源泉を問い直す視点を提示。
• ガバナンス改革の歴史と現在地
日本と米国の制度比較を通じて、ガバナンスの本質的な違いと日本企業が抱える課題を整理。
• 会計制度の変化と企業経営への影響
会計ビッグバン以降の制度改革や、のれん償却をめぐる国際的議論など、企業価値評価に関わる重要論点を解説。
• 企業のレジリエンスとパーパス経営
ポリクライシス時代における企業の変革力、人的レジリエンス、ESG統合の重要性を強調。
• グローバル競争力と日本企業の強み・弱み
学生とのディスカッションを交え、今後の日本企業が世界で戦うための条件について議論が深まりました。
講義はデータと長年の監査法人トップとしての実務経験に裏打ちされた内容で、学生からは「日本企業の現在地を俯瞰し、未来を考える視座が得られた」との声が多く寄せられました。
●受講生の感想(一部抜粋)
① 日本企業の構造問題と“攻めのガバナンス”の必要性を痛感した
日本企業が本来淘汰されるべき企業を温存し、生産性向上や資源再配分が進まなかったという指摘が強く胸に刺さりました。GDPシェア低下や労働分配率の歪みは、私自身が働くヘルスケア現場でも実感している課題です。守りに偏ったガバナンスから、未来への投資を可能にする「攻めのガバナンス」へ転換する必要性を痛感しました。社会の豊かさをどう実現するか、自分の役割を問い直す機会となりました。
② ガバナンス実務の視点から“稼ぐ力”の本質を再考した
日本の一人当たりGDPがアジア7位・世界40位まで低下している現実を示され、日本企業の構造的課題を改めて認識しました。ガバナンスは制度運用にとどまらず、企業の「稼ぐ力」を取り戻すための仕組みであるという視点が大きな学びでした。形式的な改革ではなく、経営資源配分や議論の質を高める重要性を実務の立場から再確認しました。
③ 日本経済停滞の背景をデータで理解し、企業変革の必要性を痛感した
人口減少よりも「生産性低下」が日本経済停滞の主要因であり、ゾンビ企業の存在が新規参入を阻害している点が特に印象に残りました。産業構造の変化に対応できず伸び悩む企業の姿から、イノベーション不足の深刻さを実感しました。日本企業が世界で戦うためには、生産性向上と適切な利益配分が不可欠だと強く感じました。
④ 「守る力」ではなく「変わり続ける力」への転換を考える契機となった
片倉相談役のお話の中で「守る力ではなく、変わり続ける力」という言葉が特に印象に残りました。自社ではM&Aや中途採用を通じて多様性が拡大していますが、本当に多様性を活かし、変わり続けられているのかを改めて問い直す必要性を感じました。変革を続ける組織であるための視点を得ることができました。
⑤ アクティビストとの対話や株主構成の視点など、ガバナンスの本質を学んだ
アクティビストを“厄介な存在”と捉える従来の見方が変わり、対話を通じて経営に専門的知見を取り込む企業の事例は非常に示唆に富んでいました。適切な株主構成は企業自身がつくるという視点は新鮮で、ガバナンスの本質を考え直すきっかけとなりました。日本企業の停滞を生んだ構造的要因を多角的に理解できた講義でした。
⑥ 構造的な課題に目を向ける勇気を得た
日本企業が直面している経済的・構造的な課題を多角的に整理いただき、日本経済が長期停滞してきた背景を再考することができました。半導体関連の好調や円安により景気が良いように見える一方で、5人に1人が低所得層という現実や、かつての1億総中流社会から格差社会へ移行している点は強い問題意識を持ちました。今後、日本企業が世界で戦うためには、弱みの克服、適切な利益分配、イノベーション創出、生産性向上が不可欠であると理解しました。
●CBSについてもっと知りたい方へ
本講義は、八尋俊英特任教授が担当するプロジェクト研究(中期的な企業の役割再定義)の授業内講演として実施されました。 プロジェクト研究は、2年間の集大成を作り上げる科目です。CBSでの学びと受講生の実務経験を、専任教員からの指導を受けながら1年間にわたって練り上げることで、オリジナルのアプトプットを作成していきます。
各専任教員ごとに様々なテーマで指導を受けながら論文、ケース分析、ビジネスプラン、プロジェクトレポート等学生ごとにめざすアウトプットをまとめていきます。 八尋特任教授のプロジェクト研究では「2040年の企業のあり方」や「ハードトレンド」をテーマに、企業の未来像を多面的に探究しています。今回の講義は、実務家の視点から参加者が日本企業の現状と未来を考える貴重な機会となりました。
CBSのカリキュラムの全体像は以下をご覧ください。
https://www.chuo-u.ac.jp/academics/pro_graduateschool/business/mba/