2025年10月21日、経済学部の科目「国際開発論」(担当教員:林光洋)にて、フェアトレードをテーマとする公開特別授業を実施しました。講師は、国際協力NGO「認定NPO法人 シャプラニール=市民による海外協力の会(以下、シャプラニール)」の長瀬桃子さんです。
本特別授業は、FLP国際協力プログラムおよび経済学部の林光洋ゼミの学生が中心となって活動する学生団体「FACT (Fair Trade Chuo University Team)」が企画しました。公開特別授業に先立ち、FACT代表の学生2人が登壇して、フェアトレードの概要や意義、具体例、課題に加え、FACTの活動について紹介しました。

特別授業を企画した学生団体FACTの代表2人
続いて登壇した長瀬さんは、シャプラニールで広報およびフェアトレード事業(クラフトリンク)を担当されています。特別授業では、バングラデシュとネパールで展開するフェアトレードの取り組みを中心に、現地の人々の生活改善や女性の自立支援についてお話しいただきました。
シャプラニールは1972年に設立され、「貧困のない社会の実現」を目指して活動を続けてきました。独立直後のバングラデシュでの農村開発支援から始まり、現在は、子どもの保護と教育支援、防災、社会的孤立の防止、そしてフェアトレードを軸に市民同士のつながりを促す活動を柱としています。

講師の長瀬桃子さん(シャプラニール)。「シャプラニール」はバングラデシュの言葉(ベンガル語)で「睡蓮の家」を意味します。
フェアトレード事業「クラフトリンク」は1974年に始まり、日本でも草分け的な取り組みの一つです。洪水被害に苦しむバングラデシュの女性たちが、家の中でもできる仕事として麻素材を編んだ製品をつくり、日本へ輸出したことが発端でした。その後も、現地の伝統技術や素材を生かした手工芸品を通じて、安定した収入を得られる仕組みを築いてきました。
クラフトリンクのモノづくりで大切にしているのは1)伝統と文化を尊重する、2)身近にある素材を使う、3)手仕事の良さを生かす、の3点です。特別授業では、刺しゅう布「ノクシカタ」や、ネパールの伝統織物「地機織り(ぢばたおり)」など、実際の製品も紹介されました。
ノクシカタは、母から娘へと受け継がれる刺しゅう文化で、家族や豊かさを象徴する模様が縫い込まれています。長瀬さんは、ある女性生産者が「子どもの教育費を自分の手でまかなえるようになった」と語ったエピソードを紹介し、「仕事を通して自信や尊厳を取り戻す姿が印象的だった」と述べました。
また長瀬さんは、貧困を「人が本来持っている可能性を発揮できない状態」と捉えており、一方的な援助ではなく、市民同士が対話しながら課題を解決していく姿勢を重視していることも語りました。
バッグを縫製する女性(左)、ジュート素材のぬいぐるみ(右)。(写真提供:シャプラニール)

学生たちは刺しゅう布を広げ、手触りなどを確かめていました。
さらにネパールでは、障がいのある女性が伝統織りの技術を学び、自宅で製品を制作するなど、多様な人々の自立を支える仕組みが根づいていることも紹介されました。長瀬さんは、「フェアトレードは単なる物の売買ではなく、人と人の尊厳を結ぶ活動。買うことが誰かの未来につながる」と語りました。
最後に、世界では今も約1億人の子どもたちが労働を強いられている現状に触れ、「公正な取引は児童労働の削減にも直結する」と強調しました。参加した学生たちは、身近な買い物が社会を変える一歩になり得ることを学びました。
公開特別授業後の質問タイムでは、フェアトレードへの理解をどのように広めているのか、長瀬さんはどのような経緯でシャプラニールに参加したのかなど、具体的な行動につながる質問が多く寄せられました。長瀬さんは一つひとつ丁寧に答えてくださいました。

公開特別授業後の集合写真(長瀬桃子さん、林、FACTメンバーのFLP国際協力プログラム/経済学部林ゼミ学生)