情報農学部(仮称)【設置構想中】

開設準備室長挨拶

斎藤 正武
中央大学 情報農学部(仮称)
開設準備室長

近年、私たちを取り巻く社会は大きな転換期にあります。気候変動の深刻化、食料安全保障への関心の高まり、農業従事者の減少と高齢化、さらには環境負荷の低減と持続可能性への要請など、「農」「食」「環境」をめぐる課題は一層複雑化しています。一方で、AIやIoT、ビッグデータといった情報技術は急速に進展し、産業や社会の構造そのものを変革しつつあります。こうした時代において、農業や食料システム、環境問題の解決には、データとテクノロジーを基盤とした新たなアプローチが不可欠となっています。

中央大学が設置を目指す「情報農学部(仮称)」は、このような社会的要請に応えるために構想された学部です。本学部が掲げる「情報農学」とは、農業・食料・環境に関わる多様な現象をデータとして捉え、それを分析・活用することで、持続可能な生産と社会システムの実現を目指す新たな学問領域です。センサーやドローンによるデータ取得、AIによる高度な分析、さらにはデータに基づく経営や政策の意思決定までを一体的に扱い、従来の経験や勘に依存してきた領域を、科学的かつ戦略的に再構築していきます。すなわち情報農学は、「農」を対象としながらも、情報科学と社会科学を横断し、現実社会の課題解決に直結する実践知を創出する学問であると言えます。

中央大学の建学の精神は「實地應用ノ素ヲ養フ」にあります。本学部はこの理念を基盤に据え、理論と実践の融合を徹底した教育を展開します。データサイエンスや情報技術の基礎を体系的に学ぶとともに、「アグリ・チャレンジ・プログラム」のような農業や環境の現場におけるフィールドワーク、企業や自治体と連携したプロジェクト型学習を通じて、現実の課題に向き合います。学生は、課題の発見からデータの収集・分析、解決策の設計と実装に至るまでの一連のプロセスを経験し、知識を社会の中で活かす力、すなわち「實地應用」の力を身につけていきます。

本学部が位置する中央大学多摩キャンパスのある八王子地域は、都市と自然が共存する特色を持ち、都市近郊農業や地域課題を実践的に学ぶ上で極めて恵まれた環境にあります。地域社会や企業、自治体との連携を通じて、農業・食・環境に関する具体的な課題に取り組み、その成果を社会へ還元することで、大学の知を実社会に活かす教育・研究を推進していきます。

情報農学部(仮称)が育成するのは、データとテクノロジーを駆使し、農業や食、環境の未来を構想し実装できる人材です。農業分野にとどまらず、食料産業、環境ビジネス、さらにはデータサイエンスや政策分野など、多様な領域で価値を創出できる力を養います。そして、持続可能な社会の実現に向けて、複雑な課題に対し自ら問いを立て、データに基づいて解決へと導く次世代の担い手を社会に送り出すことを目指します。 情報農学部(仮称)の挑戦は、単に新しい学部を設置することにとどまりません。それは、農・食・環境という人類の根源的な課題に対し、情報と知の力で新たな価値を創出する教育と研究の拠点を築くことにほかなりません。本学部の取り組みにご期待いただくとともに、多くの方々とともに未来を切り拓いていくことを願っております。

農業や食、環境の未来を、データとテクノロジーで変えてみたい——そんな思いを持つ皆さんをお待ちしています。

中央大学 情報農学部(仮称)開設準備室長
斎藤 正武