2021.12.09

充実した活動内容 順調な滑り出し
日野市スポーツ促進事業「青空たいそう」への協力
生まれ変わるサッカー部 「地域貢献&ファンを増やす」

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地域貢献活動の一環として、中央大学サッカー部が10月から協力している東京都日野市の運動促進事業「ちょっとお散歩&青空たいそう~withコロナも元気に過ごす♪~」(以下、青空たいそう)。地域の子供たちに運動する楽しさを知ってもらい、サッカー部を応援してくれる人を増やそうという活動は、12月4日までに計9回を終えました。

 

実際に活動して感じた難しさや工夫している点、今後の活動内容などについて、前回に続いてサッカー部の横山祐一郎さん(経済3)に綴ってもらいました。

 

 

児童とサッカー部員が一緒になってボールを追いかけた

中央大学サッカー部

1927(昭和2)年、中央大学蹴球同好会として創設された。塩﨑悠司主将(経済4)。2009年以降、獲得タイトルがなく、2020年には関東大学リーグ2部に降格。選手とスタッフ、関係者が一丸となって関東リーグの1部昇格と、全国大会のタイトル獲得を目指している。

部として“生まれ変わる”必要性から、その一環として大学サッカー版「フロント」を今季から設立。営業部、広報部、企画部、運営部の4部で構成する新設の事業本部に計25人が所属し、「学生がプレーし、学生がそれを支える」という体制を敷く

さまざまな活動により、競技力だけでなく、営業であればビジネスマナー、広報なら適切な言葉遣いを知ることなど、人間力の向上を図る狙いがある。プレーヤーでない部員は従来、マネジャーと広報だけだったが、事業本部の学生も部員として認め、サッカーという競技の枠を超えて活動の場を広げている。

主なOBは元日本代表の中村憲剛さん、シュミット・ダニエル選手(シント=トロイデンVV〈ベルギー〉)、古橋享梧選手(セルティックFC=スコットランド)ら。

「高い評価」の一方で困難なことも

私たちが日野市のこの事業に協力するにあたり、次の2つを目的として定めました。「サッカーを通して運動することの楽しさを感じてもらう」「応援してくれる人、つまりファンを増やす」です。応援してくれる人を増やすことは、私たちのモチベーションや、応援されていることに対する責任感の向上につながります。これらが中大サッカー部をより強くするために必要なことだと考え、実施に至りました。

 

応援していただく。つまり中大サッカー部について深く知ってもらうために、この活動のゴールを「サッカー部のSNSをフォロー」として設定し、達成までの導線を準備しています。

 

毎回の活動では基本的に事業本部営業部に所属する5人が指導に当たっています。児童の参加人数は各回10~15人。保護者同伴で参加する児童が多く、当初の狙いである“ターゲティング”は成功したといえます。最初のみなみだいら児童館での顔合わせから来てくれている児童もいて、青空たいそうを始める前に行った活動も効果的だったようです。

 

また、毎回参加してくれる児童や、評判を口コミで聞いて参加を決めた児童もいたことから、内容についても高い評価を頂けていると感じました。しかし、すべてうまくいっていたわけではなく、スタートしてから感じる困難も多々ありました。

「どのようなことに楽しさを感じるのか」
児童の気持ちをつかむ

事業本部営業部に所属する勝田泰智(経済2)は、その困難について次のように指摘します。

 

「児童が楽しくできるように上手に配慮すること、全員が楽しめるように(活動の)バランスを取ることに難しさを感じました。小学生はどのようなことに楽しさを感じるのかをコミュニケーションの中で探っていました。児童たちはサッカー経験者も未経験者もいて、全員が楽しめるように活動を行うことが特に困難でした」

 

楽しめる活動メニューを用意していましたが、実行するにあたって、それらをいかに楽しんでもらうかは指導する部員によっても左右されます。大学生が考える小学生の楽しいことと、小学生が思う楽しさは同じではありませんでした。勝田はこのギャップを解消するため、児童と繰り返しコミュニケーションをとっていました。

 

一方、活動の中で工夫している点について、進行のリード役を務める営業部の小野寺巧(文3)は次のように説明してくれました。

 

「毎回異なるメニューを実施していました。サッカーという競技の枠にとらわれず、児童が楽しめることを第一に考えました。メニューを工夫するとともに、経験者にも未経験者にも個別のサポートを心掛けています。全員で同じメニューを行うときも、個々のペースに合わせて指導しています」

 

勝田や小野寺を含む参加した部員たちが、活動をより良くしていくために知恵を絞り、実践した方法が、充実した内容に結びついていることが分かります。児童10~15人に対して部員5人が指導に当たり、子供たち一人ひとりと向き合う時間を確保できていることも評価の要因になったと考えています。

「駄菓子屋さん×サッカー部」のコラボ=子供たちの笑顔に

「駄菓子屋横さんち」店主の横山博則さん(右)とサッカー部の持田温紀さん

これだけでは終わらずに残りの活動においても施策を練っています。その旗振り役となっているのが、営業部の持田温紀(はるき)(法2)です。

 

持田は高校時代の事故で脊髄を痛めて以降、車椅子生活を送っています。事故の前はサッカーをプレーしていました。中大に入学後、商学部「Jリーグビジネス論」を他学部履修制度を使って受講し、担当する渡辺岳夫教授を通じて改革を始めたサッカー部のことを知り、「もう一度、大好きなサッカーでチャレンジしたい」と入部しました。

 

話は持田が中大1年生のときにさかのぼります。公共政策やまちづくりを学ぶゼミの現地調査合宿で訪れた静岡県掛川市で、合宿終了後、車椅子の方が店主を務める「駄菓子屋横さんち」に立ち寄りました。掛川で車椅子の方が駄菓子屋を始めたという記事を合宿前にたまたま読んで興味を抱いたそうです。

 

店主の横山博則さん(61)は幼少期から車椅子の生活を送り、子供の頃に駄菓子屋に行った経験が一度もなかったという思いが、開店の一つのきっかけにもなったといいます。車椅子の人も楽に手が届くように高さを低く抑えた棚に陳列されたお菓子や点字メニューなど、バリアフリーが行き届き、誰でも来られる、そして最高にオシャレな駄菓子屋さんには、毎日たくさんの子供の笑い声が響いています。

 

TikTokをファンへの入り口に

「サッカーとお菓子はともに子供たちに笑顔を届けられる宝」。そう考えた持田が今回の青空たいそうへの協力を横山さんにお願いすると、笑顔で快諾してくれました。活動の終わりに参加した児童たちに渡す、横山さんのお菓子を詰め合わせた袋には、サッカー部と横山さんの縁、つながりを紹介するカードと、サッカー部が運営する動画アプリ「TikTok」(ティックトック)を紹介するカードも同封します。

 

目的の一つ「サッカーを通して運動の楽しさを感じてもらう」ことは達成に近づきつつありますが、もう一つの目的「応援してくれる人を増やす」ために設定したゴール「サッカー部のSNSをフォロー」へのアプローチはまだ十分ではありません。サッカー部のTikTokはすでに2万人以上のフォロワーがいて、ファンになってもらう入り口には最適だと思ったからです。

 

東京から遠隔地にある駄菓子屋横さんちですが、横山さんが障がいのある子供が一人でも気軽に行ける場所として店を構えたこと、障がいの有無に関係なく交流できる場を設けたことに、持田は感銘を受けました。横山さんは朗らかで気さくな方で、掛川の街では行く先々の道端で大勢の人から「横さん!」と声をかけられるほど慕われています。今回参加した子供たちにも駄菓子屋横さんちの存在を知ってほしいと思っています。

 

サッカー部を地域の方々に知ってもらい応援していただくための活動は、これで終わりではありません。青空たいそうをきっかけとして、さらに多くの人に活動を広げていくつもりです。こうした活動が巡り巡って大学サッカーの強みになるのではないかと考えています。

運動後はクールダウンも入念に行っている

☆ちょっとお散歩&青空たいそう~with コロナも元気に過ごす♪~

コロナ禍における適度な外出機会の創出と健康づくりを目的として、日野市が、市内の事業者や大学と連携して行っている事業。中央大学サッカー部は、サッカーボールを使った運動を「青空サッカー教室」として、10~12月の土曜日に計10回、市立平山中学校前の河川敷で行う。対象は小学3~6年生で、毎回10~15人が参加。サッカー部員は毎回、4~5人が指導に当たる。

                    (次回の連載「生まれ変わるサッカー部」は、2022年2月中旬ごろに掲載予定です)

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