2023.03.20

【学生記者卒業記念コラム】
津波、戦火で亡くなった人たちへの思い
学生生活の最後、遺骨収集に携わる

学生記者 鈴木人生(文4)

  • 中大ニュース
  • きょう・あした

福島で遺骨収集作業に携わった鈴木人生さん

学生最後の冬、私は人間の骨を探して、地面を掘った。

 

年末年始の12月30日から1月2日までの4日間、福島県双葉郡の大熊町で過ごした。帰宅困難区域に入り、被災者の方が娘さんの遺骨を捜索するのをボランティアで手伝った。娘さんは当時小学生で、津波に流されたという。

 

捜索の現場に着くと、よく霜が降っていた。昼が近づくと、土はぬかるむ。大きめのスコップを使ったり、猫車を押したりするときに踏ん張りが利かなくなり、頭を悩ませた。ハンドスコップなどで地面を少しずつ掘り進めると、粘土のように土が固まっていることもあった。そこに遺骨が紛れているかもしれない。手作業で細かく砕いて確認した。

 

長い間、人間の手が入っていない場所のため、草木が太い根を張り巡らせている。スコップがうまく入らないときは、大抵その根っこが原因だ。そうでないときは、流木、あるいは石がじゃまをしていた。

 

作業をしていると、津波に流され、地中に埋もれたものが次々に出てくる。靴下やクマの縫いぐるみ、瓦、スレートといった建材までさまざまなものを掘り出した。だが、娘さんの遺骨は見つけることができなかった。

弔いとともに
社会の行く末を思う

遺骨収集の作業の様子

1月28日、沖縄県糸満市で再び遺骨を探す機会があった。沖縄戦で死んでいった人たちの骨である。戦時、爆弾で吹っ飛ばされた人間は岩にぶつかったという。また、米兵から身を隠すために、洞窟の中に人々は逃げ込んだそうだ。だから、岩陰や洞窟から遺骨が見つかりやすい。

 

洞窟に入ると、内部は狭くて暗かった。腰を低く、頭が天井にぶつからないよう気をつけた。日差しが入らないため、片手にスマートフォンを持ち、ライトで照らして探した。しかし、またも私は遺骨を見つけることができなかった。

 

福島でも沖縄でも、細い木枝や小石のかけらを見つけると、「もしかして」と思った。木か、石か、骨か。たとえ骨であっても、人骨ではなく、獣骨の可能性もある。素人目にはかなり判別が難しいと身をもって知った。

福島では津波の恐ろしさと原発の罪過、沖縄では戦争による悲惨な犠牲。そして、遺族の方々の心中。作業の間、多くのことを思って土を掘った。現地に足を運ばなければ、知ることも考えることもなかったことばかりだ。卒業後、社会に出てからの自身の行動に、この経験が大きく影響することと思う。私にとって遺骨の捜索は弔いにとどまらない、自身が生きていかなければならない社会の行く末をも考える体験だった。

GO GLOBAL!
スポーツ・文化活動
中大スポーツ
Connect Web
Careers