2022.04.12

サッカー部OBで元日本代表 中村憲剛さんのメッセージ
「皆には可能性しかない」
「ひとりの人間としてどれだけ成長できるか。全力でやった結果が進路になる」

学生記者 西沢美咲(総合政策3)

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卒業生で、元サッカー日本代表の中村憲剛さんが2021年12月14日、母校の多摩キャンパスを訪れ、現役のサッカー部員を前に講演した。大学時代の経験から学んだこと、Jリーグ・川崎フロンターレでの18年のプロ生活における行動や意識、チームの中心として取り組んだ地域貢献を通して感じた「スポーツの力」などをテーマに、後輩たちに語りかけた。

 

講演は、日本財団の次世代応援企画「HEROs LAB」(ヒーローズ・ラボ)として、「FOREST GATEWAY CHUO」のホールで行われた。部員の質問に答えるコーナーもあり、講演後にはサッカー場で技術指導も行った。

 

講演で聴いた後輩へのメッセージを紹介したい。

「やるしかない。あとは 自分がやるだけだ」

 

入学したときは、サッカーの経歴、能力ともすべてが部内で一番下の存在で、悔しい思いも経験したと振り返った中村さん。しかし、「やるしかない。あとは自分がやるだけだ」と奮起、2年時にはレギュラーに近い存在となり、4年生ではキャプテンを務める。

 

チームは前年の3年時に関東大学リーグで2部に降格し、立て直しを迫られていた。「ずっと1部の名門が初の2部。10番の僕が活躍すれば(1部に)残れたと責任を感じました」。チーム内で話し合い、改善すべきところを変え、学年に関係なく全員に役割を与えた。部員を結束させ、部への帰属意識を持たせる。全ては2部で優勝し、すぐに1部に戻るためだった。

 

昇格がかかった2部最終戦。勝利が必要だった。当時の中大スポーツによれば、中大は開始8分で退場者を出し、苦しみながらも中村さんがゴールを決め、日大に勝利した。

 

中村さんにとって忘れ得ぬ試合。「プロに入って、(試合に)出たり出なかったりで苦しかったころは、日大戦(の映像)を見て自分を奮い立たせていた。この試合がなければ今の自分はいない

 

結果を伴わないと、取り組みや過程に対しても懐疑的になってしまう。そういう意味でプロ入り前に過ごした1年間は中村さんの大きな財産になった。

「この4年間が大事だ。皆には可能性しかない」

 

後輩たちに「この4年間が大事だ。高校時代に有名(な選手)でも将来が約束されたわけではない。むしろ、入ってからが勝負と伝えたい」と語った。「この4年間で間違いなく自分は成長した。プロにも行けるようにしてもらった。皆には可能性しかない」とも。

 

部員の「プロになる前に学ぶべきことは」との質問には、「4年間やり切ること、続けること。自分を律しながら、なりたい、望む自分にどうしたらなれるか。4年間やり続ければおのずと見えてくる」と応じた。

 

18年間、川崎フロンターレひとすじのプロ生活だった。「すごく良いクラブに入れた。でも、活躍できなければそこにいられない。望んだところに入ったけれど、厳しさを感じた。背筋が凍りました」。地域密着、地域貢献を合言葉とするクラブで、ピッチ外を含めて多くの人と接し、多くのことを学んだという。

 

結果を出すため、成功のための素養は、自分を知り、どう磨くかということ。続けることですね

 

再び部員から「どうやって自分を磨きましたか」という質問があった。中村さんは「大学4年間でやったことはほぼ自分の中に残っている。4年でどれだけ努力できたか。皆がプロを目指すわけではないが、この4年間はどこの会社に入っても間違いなく役に立つ」と笑顔で答え、さらにこう続けた。

 

勝った負けたも大事ですが、それよりも過程が大事。君たちがひとりの人間としてどれだけ成長できるかの方が大事です。全力でやった結果が進路になる。これが中大で4年間を過ごしたOBとしてのメッセージです」

中村憲剛さん

 

なかむら・けんご。東京都小平市出身。1980年10月生まれ。都立久留米高校(現・東久留米総合高校)、中央大学文学部卒。2003-2020年度、Jリーグの川崎フロンターレに所属。2020年シーズン限りで現役を引退した。2017、2018、2020年にJ1優勝、2016年にJリーグ最優秀選手。J1出場は471試合(74得点)。今春より中大サッカー部の「テクニカルアドバイザー」 に就任している。

HEROs LAB(ヒーローズ・ラボ)

 

アスリートが競技生活で培った経験や価値観をもとに、スポーツやアスリートが持つ力、社会的価値を、将来を担う母校の後輩たちに伝え、社会で活躍できる人材を育てていくという 次世代応援企画。アスリートの社会貢献活動を推進する日本財団の「HEROs~ Sportsmanship for the future~」プロジェクトの一環で、2021年度は中村憲剛さん、ラグビーの五郎丸歩さんら約10人が母校を訪問した。

 

プロジェクトには、スポーツの価値を理解し、アスリート個人の特性を向上させる「アカデミー」、ロールモデルとなる活動を表彰する「アワード」、アスリートの社会貢献活動を実践し、支援する「アクション」の3事業がある。HEROs LABはアクションの一つ。

「頑張り続ければ道は開ける」 憲剛さんの言葉を胸に走り続ける
サッカー部 山下陽希(経済3)

講演を聴き終えて、私は「継続力」と「自己と向き合う」という言葉が印象に残りました。

 

中村憲剛さんは大学入学時は無名の選手でしたが、日々の練習に全力で取り組み、自主練をする余裕もないほどハードな練習を積み重ねたことにより、4年生ではキャプテンとしてチームを引っ張るまでに上り詰めたと話されていました。

 

この話を聞き、今まで私は「エリート選手が多く集まるこのチームで、そうした選手の才能に追いつくことは困難だから」と、下のチームにいる現在の自分を正当化してしまっていたことを認識しました。しかし、サッカー界のレジェンドといわれる憲剛さんも4年間、練習に向き合う姿勢を保ち、他者ではなく自分にベクトルを向け続けたことにより、プロサッカー選手になりました。ここで、私自身の考えの甘さとベクトルを自分に向けることができていなかったことに気付かされました。

 

「自分にベクトルを向ける」とは、まず自分を客観視して、現在地を見つめ直すことから始め、自己と向き合い続け、今できることを全力で頑張り続けることだと考えます。

 

周りではなく常に自分にベクトルを向け続けること、これが憲剛さんの成功の秘訣だと私は感じました。このことはサッカーの上手、下手、勉強ができる、できないという能力の差は全く関係なく、全て本人の意識を変えれば容易にできることです。

 

自分にベクトルを向けることによって、サッカー面でも人間面でも成長していきたいと思いました。そして、「苦しいときは頑張り続ければ道は開ける」という憲剛さんの言葉を胸に、悔いなく走り続けたいです。

「やればできる」 気持ちが奮い立つ
憲剛さんの言葉に説得力と重み
サッカー部 塩田達馬(理工2)

今回の講演は、これからの私に必要なことを再確認させられる良いきっかけになりました。常に自己分析を欠かすことなく、努力し続けた憲剛さんの話を聞いて、自分の未熟さを感じましたが、最初はどん底からのスタートだったという話は、「私でもやればできる」と気持ちを奮い立たせてくれました。

 

一流のサッカー選手になるために特別なことをやったのだろうと思っていましたが、練習の内容は、私が普段している練習とそれほど変わらないと感じました。ただ、一つひとつの練習の質の違いから、成長の差が生まれていることも明らかでした。

 

「自主練をあまりやっていなかった」という言葉に非常に驚き、自主練をできないくらい、練習で全力でプレーするという当たり前のことは、なかなかできないことなんだと気付かされました。

 

走り込みなど、きつい練習に対して全力で取り組むのではなく、どこかに余力を残して練習をこなしてしまっている自分がいるのではないか。早朝練習で体が動かない日に、このくらいでいいかと、力を抜いてしまっているときがあるのではないか。当たり前に過ぎている練習時間の一分一秒がとても貴重で大切なものであると強く思いました。

 

ほかにもプロサッカー選手を目指している私にとって、プロになってからの、想像もできないような貴重な話をたくさん聞かせていただきました。常に結果を求められる厳しい世界だということ。チームからいつ必要とされなくなるか分からない緊張感の中で結果を出し続ける勝負強さ。地域を愛し、地域から愛されるチームづくりをすることなど、まだまだ知らないことばかりだと感じました。

 

憲剛さんの言葉の中で「組織のことを一番に考えていたのは大学時代だった」という一言が印象に残りました。同時に、中央大学という一つの組織を良いものにしようとする先輩方の姿が頭に浮かびました。私は1年生(注・執筆時)で組織への影響力はまだ弱いと思いますが、全力で先輩方についていきたいと思いました。

 

憲剛さんからの言葉一つ一つに説得力と重みがあり、私の成長につながる話ばかりでした。本当にあっという間でした。貴重な時間を提供していただいたことに本当に感謝したいです。どうもありがとうございました。

「目の前のことを全力でやる」経験に裏打ちされた憲剛さんの言葉
チームのプラスに
サッカー部 田村進馬(文3)

中村憲剛さんの言葉の中で「目の前のことを全力でやる」という表現が数多く出てきたことが印象的でした。この言葉から、大学入学時に部活で「一番下」からスタートすることになった憲剛さんが、どのように一流のサッカー選手になることができたのか、少しわかった気がしました。

 

関東大学リーグ2部に降格したサッカー部をその翌年に1部復帰させることを目指したチームのキャプテンが憲剛さんでした。こうした難しい状況の中で、学年で日夜ミーティングを行い、サッカー部への帰属意識を持たせるために部員全員に役割を与えたそうです。「ピッチ内外で説得力を持たせるような言動を心がけていた」とも話されました。

 

憲剛さんは中大時代のこれらのエピソードを踏まえて、4年間、頑張り続けることが大事であり、それができれば自然とプロ、社会人になるための準備ができると述べられました。私は、練習などをただ何となくこなすのではなく、自分やチームを良くするためにどうすべきかを考えながら行動に移していくことが大事なのだと感じました。

 

サッカー部は2020年に関東大学リーグ2部に降格してしまい、1年以内の1部復帰はかないませんでした。しかし、1部復帰を果たしたチームのキャプテンだった憲剛さんの講演を聴いたことはチームにとって必ずプラスになります。私自身も目の前のことを全力でやり、チームの力になれるよう励みたいと強く思いました。貴重なお話をありがとうございました。

「目の前のことに全力で」「自分を客観視」 講演から数多くの学び
学生記者 西沢美咲(総合政策3)

中村憲剛さんと学生記者の西沢美咲さん

同級生から「あいつは大丈夫だろうか?」と心配されるほど、経歴も能力も部員の中で下のレベルから始まったという中村憲剛さんの中大でのサッカー生活。「あとは上がるのみだ」とサッカーに打ち込み、2年生でレギュラー入りを果たす。3年生で関東大学リーグ2部への降格という苦い経験をしたが、キャプテンを務めた翌年にはチームをまとめて1部復帰を果たし、卒業後にプロの世界へと進んでいった。

 

講演を聴いて、中大で過ごした4年間のサッカーに取り組む姿勢から、私自身も多くのことを学んだ。講義を通じて印象に残ったことは2つある。1つ目は、目の前のことに全力で取り組むことの大切さである。中村さんは「大学生活の4年間、目の前のことに全力で向き合うことが大切」と語り、そして“全力”で やることに意味があって、“全力でやること”が大切だと話された。私は、サッカーに限らず、大学生活という貴重な4年間における活動、経験のすべてに当てはまる言葉ではないかと思った。

 

もちろん、将来のビジョンを考えることや目標を立てて行動することも大切である。しかし、そのような将来の目標をかなえるためにも、まずは目の前のことに全力で向き合って取り組むことが、結果につながってくると思う。中村さんは、1年生の頃から目の前のことに全力で取り組み、4年間を“全力”で駆け抜けたことで、プロや社会で輝ける要素を身につけた。それがプロの世界での活躍へとつながっているように感じた。

「自分の望む自分になるためにどう頑張るか」

2つ目は、自分を客観視することの重要性である。中村さんは、目の前のことにとにかく全力で取り組み、キャプテンとして全体を見ながらも、“自分を客観視する姿勢”を忘れていなかった。

 

学生時代、自主練習をするよりも自分の試合の映像を見て、自分がチームで輝ける方法を考え、自分自身の研究に時間を使っていた。そして、「周りに関係なく、自分が自分の望む自分になるためにどう頑張るかが大切だ」と語った。自分を客観視して、自分で自分を設計し、突き進むこと。これが活躍するには重要だと私は思った。

 

加えて、「自分をちゃんと見ること、自分を分析できることが大切で、現在地がどこにあるのか、何ができて何が足りないのか、何をして進んでいくかを考えて歩くことが大切」とも述べられた。外からの自分を見る目線を自分で作ることが大切ということである。この話がとても印象的だった。

 

講演の内容は、サッカーだけでなく私たち学生の大学生活への取り組みにも通ずる部分があった。私は2022年度から3年生になり、本格的に就職活動が始まる。就職活動や将来に対する不安もあるが、目の前のことに全力で取り組む姿勢を忘れずに頑張りたいと思う。

 

周りの様子が気になって焦ったり、悩んだりすることも増えるかもしれない。そんなときは、自分が自分の望む自分になるために、自分を分析して前へと進んでいきたい。目の前のことに全力で取り組むことと、 自分を客観視する姿勢を忘れずに、残された大学生活を充実させたいと思う。

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