2021.08.05

水質測定アプリ「WATER IN」を開発、特許出願へ
野島記念ビジネスコンテストで優勝
理工院生、学部生3人のチーム

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中央大学主催のビジネスコンテスト「2020年野島記念ビジネスコンテスト」で、水質測定アプリ「WATER IN」を開発した大学院理工学研究科・理工学部人間総合理工学科の水代謝システム研究室(山村寛教授)に在籍する院生、学部生の3人のチームが優勝した。

 

このアプリの開発で、スマホと市販の試験紙があれば、蛇口から出る水の質を簡単に素早く確かめられる。技術をより大勢の人に広めたいと、2021年4月に合同会社を設立、特許出願を計画している。

水質を“見える化” 「水の安心を確かなものへ」

野島記念ビジネスコンテストで優勝した前田寛明さん、石井崇晃さん、山本迅平さん(左から)

2020年野島記念コンテストで優勝したのは、大学院理工学研究科博士課程1年の石井崇晃さんと、ともに理工学部4年の前田寛明さん、山本迅平さんのチーム。コンテストには41チームがエントリーし、このうち書類審査を経て2020年12月の決勝大会に進んだ8チームの中から見事、栄冠に輝いた。

 

チームリーダーの石井さんは「アイデアだけでなく、それを(アプリという)形で示せていることが評価されたのではないでしょうか」と振り返る。理工学部生・理工院生のチームのコンテスト優勝は2013年以来となった。

 

開発したスマホアプリ「WATER IN」は、調べたい水溶液を浸した水質試験紙(市販品)をアプリで撮影するだけで、pH、残留塩素や水の硬度、水質の良さの指標である「COD」などを、高額な装置がなくても、だれでも素早く簡単に判定できるという仕組みだ。

誰でも素早く簡単に測定可能

たとえば、殺菌のため含まれている残留塩素の濃度が万が一にも高すぎれば有害ということに気づけるし、水の硬度が分かれば「ミネラル成分が少ない軟水が乳児にはお勧め」などと役立てられる。

 

古くから日本人には水の“安全神話”がある。水質を心配する必要がほとんどないという現状はもちろん悪いことではないが、石井さんは「それぞれ家庭の蛇口から出る水の質までは浄水場などで働く方々も正確には把握できない」と指摘した上で、「水道や下水道の水質の研究をAI(人工知能)を使ってできないか。アプリによって水質を“見える化”し、水の安全を皆で確かなものにしていきたいとアイデアが生まれました」と、開発の経緯を説明する。

 

2021年4月に「RePublic Water合同会社」を設立し、7月末にも特許を出願する準備を進めている。

 

会社名の「republic」は共和国の意味があるが、浄水場や水を管理する立場の技術者の減少や、技術のノウハウがしっかりと伝承されていくのかという懸念も指摘される中で、「未来に向けて、一般の方々も巻き込んで皆で安全を確かなものに」(石井さん)という思いを込めて名付けられた。

 

アプリに測定データとして残るため、データ管理もしやすく、きわめて精密な分析以外には十分に対応できるという。

石井崇晃さん「研究を頑張るモチベーションに」
前田寛明さん「自分の研究に生かしていく」
山本迅平さん「学びの視野が広がった」

優勝した3人に、野島記念ビジネスコンテストでの優勝の感想や、研究の糧として今後にどう生かしていくかなどを尋ねた。

 

石井崇晃さんは「文系の学部生の出場が多かったのですが、当時は修士課程2年での参加で負けられないという思いもありました。もし決勝にすら進出できなければ、研究に本腰を入れられなかったかもしれない」と振り返り、「今後も頑張って研究していくモチベーションになりました」と語った。

 

水代謝システム研究室で「海水の淡水化」について研究しているという前田寛明さんは、「準備に相当な時間をかけてきたので優勝しかないと確信していました。将来は大学院修士課程への進学を考えていますが、波に乗ってきたこのプロジェクトの一員としても活躍したい」と期待を込めた。

 

山本迅平さんの研究室での“本業”の研究は、「下水処理場の自律制御に向けた運転管理モニタリングセンサーの開発」。今回の優勝を受けて、「アプリの開発を学んだことで、自分が(アルゴリズムやソフトウェア開発を学ぶ)コンピューターサイエンスに興味があることが分かりました。水とコンピューターサイエンスの双方の知見を持った技術者になりたい、もっと学びたいという気持ちが生まれました」と前向きに話している。

野島記念ビジネスコンテスト

 

中央大学が主催するビジネスコンテスト。中央大学商学部OBで株式会社ノジマ代表執行役社長の野島廣司氏の「中央大学からビジネス界で活躍する人が増えてほしい」との思いと篤志を受け、2007年から開催している。

 

野島氏は、コンテスト実行委員会のホームページで「コンテストを通して、ビジネスの楽しさを感じてもらい、起業への興味を持つきっかけの1つとなってもらえると、とても嬉しい。自らアイデアを出し、協力者を募り、1つの企画を創り出すといった経験は社会に出たあとも必ず成長の糧となる」とメッセージを寄せている。

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