2023.12.15

西舘勇陽投手(法4)は読売巨人軍1位
石田裕太郎投手(経済4)が横浜DeNA5位
ダブル指名に歓喜の輪 プロ野球ドラフト会議

学生記者 近藤陽太(経済3) 影原風音(文3) 合志瑠夏(経済2) 吉田未来(理工2) 高橋来佳(文1)

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10月26日夜、東京都内で開かれたプロ野球の新人選手選択会議(ドラフト会議)で、中央大学硬式野球部の西舘勇陽(ゆうひ)投手(法4)が読売巨人軍1位、石田裕太郎投手(経済4)が横浜DeNA5位でそれぞれ指名された。多摩キャンパスCスクエアの記者会見場で吉報を待った西舘投手は「4年間やってきたことを高く評価されてうれしい。チームの力になりたい」と新たなステージへの意気込みを語り、石田投手は「頑張ってきたことが報われ、感動しました。チームを代表する選手になりたい」と感激に声を震わせた。硬式野球部を引っ張ってきた2人がプロへの道を歩みだした。

巨人1位指名の西舘勇陽投手(左)と横浜DeNA5位の石田裕太郎投手

西舘勇陽投手「まずは1年間、一軍に帯同したい」
競合の末…巨人との“縁”

記者会見場のCスクエア中ホールでは、プロ志望届を提出した西舘投手、石田投手らと、硬式野球部の樫山和男部長、清水達也監督、部員らが待機。西舘投手の上位指名が有望視されていたため、カメラマンや記者ら約90人という大勢の報道陣、そして私たち「HAKUMON Chuo」の学生記者5人が指名の瞬間を待っていた。

 

注目の1巡目で、日本ハムと巨人が西舘投手を指名し、2球団競合の末、中大OBで巨人の阿部慎之助新監督が交渉権獲得のくじを引き当てた。その瞬間、会場は一斉に拍手に包まれ、緊張した表情でテレビ中継のスクリーンを見つめていた西舘投手も笑みを浮かべて、隣の樫山部長、清水監督や仲間の部員と握手を交わしていた。

 

西舘投手は直後の記者会見で、「この4年間、ずっとドラフト1位を目標に練習してきた。率直にうれしいという気持ちが一番です」と落ち着いた表情で語り、「(巨人は)伝統、歴史のある素晴らしいチーム。レベルの高い選手たちの中で、まずは1年間、どんな形でもいいので一軍に帯同することが目標」と抱負を述べた。

 

同席した清水監督は「OBの阿部新監督の巨人に指名されたことに縁を感じる。阿部監督のもとでチームを優勝に導いてほしい」と活躍を期待し、樫山部長も「(西舘投手は)まじめな好青年で、学生野球の模範(の存在)そのもの。初志貫徹という高い志できょうの日に至った」と称えた。

石田裕太郎投手「ベイスターズを代表する選手に」
あこがれの球団の指名…安堵の涙

西舘投手の会見が終わると、こんどは石田裕太郎投手に横浜DeNAの5位指名という吉報が舞い込んだ。その瞬間、別室で待機していた石田投手をはじめとする部員から大歓声がわいた。

 

目を潤ませながら会見場に現れた石田投手は、「指名を受けてホッとしています。野球を始めたときからベイスターズのファンで、入団できてうれしい。(横浜DeNAの主力選手で中大OBの)牧秀悟さんのようなチームを代表する選手になりたい」と前を向き、表情には笑みも浮かんだ。

 

神奈川県出身の石田投手は以前から何度も本拠地の横浜スタジアムに足を運んでいたという。「応援する側として、すごく楽しく見ていた。今度は自分がその(応援される)立場になれるように頑張りたい」と声を弾ませ、中大の4年間を振り返って「西舘を含め、同期4人の投手陣はすごく仲が良く、刺激のある毎日だった。自分も負けないように頑張っていきたい」と抱負を口にした。

 

ステージで中大応援団からの力強いエールを受け取った西舘投手と石田投手。プライベートでも仲の良かった2人がプロの舞台へと道を切り開いた。今後も互いの活躍を励みに球界を代表する投手に育ってほしい。(吉田 未来)

「プロで通用する体づくり」「OB が切磋琢磨して活躍を」

 清水達也監督

 

硬式野球部の清水達也監督は記者会見の中で、西舘勇陽投手、石田裕太郎投手の4年間の成長や優れた点などに触れ、2人のプロでの活躍を期待して言葉を送った。

 

西舘投手が巨人に指名されたことについて、「OBの阿部慎之助新監督のジャイアンツに入れたことに縁を感じる。阿部監督のもとでチームを優勝に導いてほしいし、その力もある」と期待し、「しっかりと自分を持っている選手で、マイペースなところもある。まだまだ伸びるし、いいエンジンを持っている。プロでも通用する体づくりをすれば、間違いなく活躍できる」と太鼓判を押した。

 

石田投手については「西舘以上にプロ(になること)を強く意識していた選手。最後の(秋の東都)リーグ戦での登板は、大学で一番よかったピッチングを見せてくれた」と振り返り、「横浜DeNAには中大OBの牧(秀悟選手)も、神里(和毅選手)もいる。切磋琢磨して皆で活躍してほしい」と願っていた。

特別な背番号「17」 西舘投手「うれしく思う」

 

巨人にドラフト1位で指名された西舘勇陽投手はドラフト翌日の10月27日、多摩キャンパスで、阿部慎之助監督らの指名あいさつを受け、入団後の背番号「17」を提示された。

 

出身の花巻東高の先輩で、あこがれの存在でもある大谷翔平選手(現ドジャース)、菊池雄星選手(現ブルージェイズ)と縁のある番号で、「特別な番号とわかっている。すごくうれしい」と笑顔を見せた。

 

阿部監督は「投手としてのポテンシャルが高い。ジャイアンツの中でと言わず、日本を背負って立つ大投手になってほしいし、頑張ればなれると思う」と、西舘投手を励ました。

応援団からエールを送られる西舘投手と石田投手(中央)

西舘勇陽投手、石田裕太郎投手は指名後、報道陣の質問に答えた。主な質疑応答は次の通り。

「大谷選手、菊池選手に近づけるよう成長したい」

質問(以下Q) 指名された率直な感想を教えてほしい

西舘勇陽投手 この4年間ずっと、ドラフト1位を目標に練習してきた。選んでいただき、率直にうれしいという気持ちが一番です。(今後も)周囲に感謝しながら野球に取り組み、阿部監督のもとでレベルアップしていきたい。

 

Q 球団にはどのような印象があるか

西舘投手 伝統と歴史のある素晴らしいチームだと思っているので、その中でやれることは本当にうれしい。レベルの高い選手の中に入り、頑張っていきたい。

 

Q 目標とする選手はいるか

西舘投手 高校を選んだ理由でもある大谷翔平さん(現ドジャース)と菊池雄星さん(現ブルージェイズ)へのあこがれは変わらないですし、2人に近づけるようにこれからも成長していければと思います。

 

Q 中大時代の4年間を振り返ってほしい

西舘投手 監督やコーチには大切に育てていただき、3年生から活躍できた。本当に周りの方々の配慮のおかげです。大きいけがもなく、順調に成長でき、そこが一番よかったと思います。

 

Q プロでの目標を教えてほしい

西舘投手 先発、リリーフはどちらでもいいので、1年目は一軍に帯同することが今の目標です。

 

Q アピールポイントはどのようなところか

西舘投手 強みはクイックで投げ続けられるところと、走者を出してからも落ち着いて投げられるところ。これからも続けていきたい。

 

Q 東都リーグで得られたことは何か

西舘投手 3年生の春に入れ替え戦を経験して、絶対に負けられないというところが難しかった。そこが(東都リーグの)魅力だとも思う。

 

Q キャンパスで好きだった学食はありますか

西舘投手 (硬式野球部の)合宿所のオムライスが一番好きでした(笑い)。

 

Q プロで対戦したい打者はいるか

西舘投手 同じセ・リーグの森下さん(翔太選手=中大OB、阪神)です。牧さん(秀悟選手=中大OB、横浜DeNA)と対戦したい思いもあります。

西舘勇陽投手

 

にしだて・ゆうひ。岩手・花巻東高卒、法学部4年。185センチ、79キロ。クイックモーションからの最速155キロの速球、制球力が持ち味。小学3年で野球を始め、高校時代は2年の春夏、3年夏に甲子園出場。2年春はベスト8進出に貢献した。中央大学では1年秋のリーグ戦から出場し、3年春のリーグ戦まではリリーフとして活躍、3年春の入れ替え戦から先発に転向した。3年秋のリーグ戦でベストナイン。通算防御率1.95、通算勝利数は12勝。

「中大で精神面が成長」「西舘に感謝」

Q 指名を受けた率直な感想を教えてほしい

石田裕太郎投手 とてもホッとしています。野球を始めたときから今の今までベイスターズのファンで、入団することができてうれしい。プロで活躍するという目標のスタートに立ったと思うので、一生懸命練習して、牧(秀悟)さんのようなチームを代表する選手になりたい。

 

Q 横浜DeNAにどのような印象を持っているか

石田投手 すごい明るいチーム。実際に何度も横浜スタジアムで応援して、だんだんチームも強くなり、応援する側としても楽しく見ていました。今度は自分がその(応援される)立場になれるように頑張りたい。

 

Q 目標とする選手はいるか

石田投手 大学に入ったときから、ベイスターズの山﨑康晃(やすあき)投手が目標。同じ球団に入れてうれしいし、いろいろなことを学んで生かしていきたい。

 

Q 中央大学硬式野球部にいたからこそ成長できたところはあるか

石田投手 入れ替え戦の登板も経験したし、技術もそうですけど、精神的な部分でとても成長したなと感じている。西舘と一緒に練習してきて、「やっぱりすごいな」と思っていたし、西舘のおかげで成長できた部分もたくさんある。精神的な部分と、西舘のおかげで自分もここまで来られたというのはすごく感謝しています。

 

Q 自身の持ち味を教えてほしい

石田投手 試合を作る安定感とコントロールを大事にしています。そういうところで一番になりたいと思います。

 

Q 後輩へのメッセージはあるか

石田投手 いろいろな部員に声をかける性格なので、後輩との思い出はたくさんあります。リーグ戦の最後に完封したとき、慕われていたかはわからないけれど、後輩の皆が声をかけてくれた。プロとしても(チームメイトに認められるよう)野球はもちろん生活面も自覚を持ってやっていきたい。(吉田 未来)

石田裕太郎投手

 

いしだ・ゆうたろう。静岡・静清高卒、経済学部4年。180センチ、80キロ。制球力とゲームをつくる安定感が持ち味。小学3年で野球を始め、中学生までは内野手、投手を兼任。出身地の神奈川県を離れて静清高に進学後、投手に専念した。中大進学後は1年秋からリーグ戦出場。2年春から先発を任されるようになり、2年秋のリーグ戦で最優秀防御率賞を獲得。3年、4年でも安定した投球を見せてチームを支えた。通算防御率2.63、通算勝利数は7勝。

「覚悟」「幸せな笑顔」 “運命”の会議でさまざまな表情
学生記者 近藤陽太(経済3)

120。この数字はプロ野球ドラフト会議で指名できる人数の上限だ。今年、プロ志望届を出した高校生・大学生は計316人。志望届を必要としない社会人や独立リーグの選手の中にも有望視される選手は多く存在する。この中の120人はやはり狭き門だ。指名を待つ選手本人や、野球を含めた苦楽をともにしたチームメイト、監督らの表情は緊張感を帯びる。

 

今年のドラフト会議が始まり、西舘勇陽投手への指名が日本ハム、巨人と続き、そのたびに記者会見場がどよめいた。くじを引いた中大OBで巨人の阿部慎之助新監督が右手を高く上げた瞬間、一般の学生も詰めかけた会場は大歓声にわいた。しかし、思いのほか西舘投手の表情は硬いままだった。うれしさよりも、これからのプロ野球人生への覚悟を決めた表情に見えた。

 

石田裕太郎投手が横浜DeNAに指名されると、再び会見場は歓喜に包まれた。長年のファンだったという球団に指名された石田投手は、報道陣が用意した球団のタオルを手に、チームメイトと「I love Yokohama !」と叫んだ。石田投手はもちろん、長年のベイスターズ・ファンというご家族も万感の思いだろう。私もプロ野球ファンだが、好きなチームに入団できる喜びは想像もつかない。

学生記者としてドラフト取材は去年に続いて2度目だった。今年はいろいろな表情を見られたように思う。西舘投手の覚悟を決めた表情、ひいきの球団に指名され幸せそうな石田投手の笑顔。教え子が指名され安堵したような監督の表情―。

 

それだけではない。指名に声を上げて喜ぶ大学関係者や、交渉権を得られなかった日本ハムのファンなのか、くじ引きの際に少し悔しそうに天を仰いだ学生。選手の“運命”が決まるドラフトに、こんなにも多くの人の心が動かされている。その瞬間に今年も立ち会えたことに感謝したい。

 

西舘投手、石田投手には、大勢の野球ファンの心を動かすような活躍を中大生として願っている。

未来のプロ選手に質問、光栄な経験
学生記者 合志瑠夏(経済2)

ドラフト会議がちょうど始まったころ、私は5限の授業に出席中で、「西舘勇陽投手の交渉権を読売巨人軍が獲得」というネット速報が目に留まり、胸が高鳴りました。

 

「早く西舘選手を一目見たい」。その一心で、授業終了の鐘を合図に教室を飛び出し、会見場に到着したときは、報道陣の注文に応じて西舘投手の写真撮影が行われていました。西舘投手は、巨人の阿部慎之助新監督のお面をかぶった部員らと一緒に、フラッシュを浴びていて、これまでテレビで見たドラフトの記者会見で感じた印象と異なり、終始和やかな雰囲気を感じました。

 

横浜DeNAに指名され、会見場に姿を現した石田裕太郎投手は温かい拍手で迎えられ、長年の夢だったベイスターズへの入団を心から喜んでいる様子で、にこやかな表情がとても印象的でした。私が「中大硬式野球部だからこそ成長できたこと」を尋ねたところ、東都リーグの1部残留をかけて戦った入れ替え戦で、プレッシャーに打ち勝つ体験ができたことを挙げてくださいました。伝統ある硬式野球部出身の未来のプロ選手に質問する機会を得られたことを本当に光栄に思います。

 

私は「HAKUMON Chuo」の学生記者であるとともに、大学スポーツ振興にかかわる活動にも携わっています。皆さんは、中大の部活・サークルの練習や試合を見にいったことはありますか。現地観戦はもちろんお勧めですが、大学スポーツ協会(UNIVAS)などが試合の模様を配信しているほか、それぞれの部・サークルの皆さんも独自にSNSで活動の様子を配信しており、隙間時間で手軽に大学スポーツの観戦を楽しむことができます。同じ大学で部活動に励む仲間をもっと応援したい。そうすると、ふだん隣にいる友達のいつもと少し違う格好いい姿を見られるかもしれません。

「努力」「仲間の存在」その大切さを学ぶ
学生記者 高橋来佳(文1)

ドラフト会議の記者会見場では、緊張と期待が入り交じった空気感を覚えた。何台ものカメラが待ち構え、大勢の記者は運命の瞬間を1つの映像やフレーム、記事に収めようと、真剣なまなざしを送っている。ドラフトの様子を伝えるスクリーンで、西舘勇陽投手の名前がアナウンスされると、会場は待機していた硬式野球部員らの歓声と拍手に包まれ、同時に、すさまじいシャッター音が鳴り響いた。

 

学生記者として初めて取材に参加した私は、記者席に座っているだけで緊張で汗ばんだのを覚えている。プロの記者の方々の様子を間近で見られたことは、日常の学生生活では味わえない貴重な体験だった。会見の合間にも、手元のパソコンで記事を書き進め、写真撮影の際には球団の応援グッズを用意して、選手にさまざまなポーズを求める姿から、この場にいない読者や視聴者に情報を伝える役割を担うことへの熱意を感じた。

 

取材を通して、「環境の変化に負けず努力すること」と「仲間の存在の大切さ」を学んだ。硬式野球部を引っ張っている4年生は、大学生活の半分以上がコロナ禍による制限の多い日々だったはずだ。しかし、選手たちはどんな状況であっても夢を見失わず、努力してきたことが会見での言葉を通して伝わってきた。日頃から練習に励み、勉学も怠らずに取り組んできた彼らの4年間はきっと中身の濃いものだったと思う。

 

 石田裕太郎投手の会見では、交友関係を大切に思う気持ちと「仲間からの刺激」というフレーズが印象的だった。部員同士が互いに教え合い、尊重し合うことで個々の技術を磨きあげる。これは部活動に所属しているからこそ味わえたものだという。このかけがえのない経験を笑顔で教えてくれた。

 

西舘投手の会見で、私は思い切って手を挙げ、好きな食べ物について質問をした。すると西舘投手は真剣な表情から、ふっと自然な笑顔を見せ、部員との思い出とともに「オムライスです」と答えてくださった。会見でなかなか見えなかった普段の表情が垣間見え、貴重な質問の機会を得たことをうれしく思った。

 

私たちにたくさんの希望を見せてくれたことに感謝し、2人のさらなる活躍を心から応援したい。

(左から)学生記者の影原風音さん、近藤陽太さん、西舘投手と石田投手を挟んで吉田未来さん、高橋来佳さん、合志瑠夏さん

「3つの熱い思いが引き寄せた運命」
学生記者 影原風音(文3)

「ベイスターズを代表する選手になりたい」

 

記者会見で力強く語ったその姿に、とても引き込まれた。私は、横浜DeNAに指名された石田裕太郎投手の記者会見で感じ取った3つの思いを紹介したい。

 

まず何よりも「プロ選手になりたい」という強い思いだ。中大硬式野球部に入部した当初からその強い意志があったと、清水達也監督も話されていた。石田投手は「大学4年間は良いときばかりではなかった」とも話した。しかし、4年生の東都リーグ秋季最終週で完封勝利を収めることができたのは、どんなときもあきらめずに練習に励んできたからに違いない。きっと野球への情熱が練習する原動力になったのだろう。

 

2つ目は地元への思いだ。出身地の横浜は言うまでもなくDeNAの本拠地。小さい頃からテレビでDeNAの試合を見て育ってきたという石田投手にとって、地元球団からの指名はとびきりのサプライズだったに違いない。指名後、涙を浮かべた理由に、毎日テレビで一緒にゲームを見ていた家族との思い出が重なったというエピソードを挙げ、私もとても心動かされた。

 

そして、3つ目に感じたのは、監督やチームメイト、高校の恩師への感謝の思いである。中大硬式野球部の同期や後輩との仲の良さ、朗らかな性格と謙虚さが周囲に愛される理由なのだろうと気づいた。石田投手は、静清高時代の練習が「時間は長く、きつかった」と振り返ったものの、現在の体とピッチングに結びついていると前向きに分析した。そして、当時の監督に感謝の気持ちを伝え、プロ入りを報告できることがうれしいとほほ笑んだ。

 

3つの熱い思いから、わき立つようなパワーをもらった。これからはプロで活躍する姿を見守りたい。そしてまた新たな「思い」を感じ取りたい。

西舘投手、石田投手のプロでの飛躍に期待
元硬式野球部員として応援
学生記者 吉田未来(理工2)

いま、熱くなれるものはあるか。私は昨年9月、学業との両立が難しくなり、中央大学硬式野球部を退部してから空虚な日々を過ごしていた。しかし、勉強の隙間時間にスマホを横画面にして東都大学野球のリーグ戦を見ている時間だけは心が躍った。同期のデビュー戦や、かわいがってくれた先輩の活躍を見ることは私にとって最高の喜びの瞬間である。

 

部員たちは日々練習を積み、時間や細かい決まりごとなど幾つもの制限の中で生活し、大会などで授業に出席できないこともある。しかし、数少ないチャンスのため、その「一球」のため、多くの犠牲を払っている。だからこそ、活躍する姿を見ることは心からうれしい。

 

数多の選択肢がある学生生活で部活動に励むことを選んだ彼らの決断は価値あるものだ。試合の勝ち負けや、出場するかしないかといった表面的な事実だけでは計り知れない価値なのだ。そして私は、頑張りという言葉だけでは表現できない彼らの勇姿を、多くの人に知ってほしく、こうして学生記者という立場でもう一度熱くなることを決めた。

 

私は後楽園キャンパスに通学する唯一の理系の部員だった。多摩キャンパスのグラウンドでの練習に参加できないことも多く、学業と野球の両立に不安と焦りを感じていた。そんなとき、横浜DeNAに指名された石田裕太郎投手は会うたびに声をかけてくれた。石田投手は明るく優しい人柄で場を明るくする存在だった。カジュアルな会話を度々交わした思い出は宝物だ。

 

石田投手が指名された瞬間は、会場に大きな歓声と拍手が響き渡った。その光景は石田投手が皆に慕われ、応援される存在であることを物語っていた。「夢だったベイスターズの選手として地元の横浜で活躍したい」と力強く語る表情は、すでにプロ選手そのものに見えた。ドラフト会議の翌日、「お前はずっと後輩で友達!」と連絡をくれた石田投手の大ファンとして、今後も応援していきたい。

 

地元が岩手県の私は、読売巨人軍に指名された西舘勇陽投手と同郷である。中学時代から脚光を浴びる選手だった西舘投手は、花巻東高校で春夏の甲子園に3度も出場した。高校1年のとき、私の学校は夏の県大会で花巻東に敗れた。西舘投手のフォークボールに苦しめられ、攻略できずに涙をのんだ。中大に入学後、西舘投手にそのことを話すと、「あれはフォークではなくナックルだった」と聞かされた。その瞬間の衝撃を今も忘れられない。一級品のナックルでぜひプロの打者も翻弄してほしい。

 

そして、西舘投手の同学年には、同じ岩手出身の佐々木朗希投手(千葉ロッテ)がいる。高校時代の県大会決勝で実現しなかった2人の対決が最高峰の舞台で実現する日を、同郷の一人として心待ちにしている。

 

硬式野球部員だった頃に感じていたのは、大学スポーツはなかなか注目されないということだった。プロ志望届を提出するほど力量のある選手でも、どのような野球人生を歩んできたかという過程はあまり知られていない。今後は選手一人ひとりの過程や思いをインタビューを通して伝えられたらと思っている。

硬式野球部員、応援団と笑顔で「C」ポーズ=2023年10月26日、多摩キャンパスCスクエア

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