2023.04.04

胸を打つ走り エースの自覚
箱根駅伝「花の2区」区間賞
陸上競技部長距離ブロック 吉居大和選手(法4)

  • 中大ニュース
  • アスリート

「C」が躍動した。 2023年1月2、3日の第99回箱根駅伝で、中央大学は10区間のランナーの総力で 総合2位(往路、復路とも2位)を勝ち取った。 中でも胸を打つ走りを見せ、チームを上昇気流に乗せたのが、各大学のエースが集う最長区間の2区(鶴見-戸塚、23.1キロ)で区間賞を獲得した吉居大和選手 (法4、当時3年)の勇姿だった。

箱根駅伝後、3月まで米国遠征中だった吉居選手に、「花の2区」の走りを振り返ってもらうとともに、今後の抱負などを尋ねた。

(遠征中の吉居選手からの書面での回答などをもとに記事を構成しました)

(代表撮影)

ⒸGetsuriku

「お前は世界に出ていく選手なんだ」

ⒸGetsuriku

 

あと数百メートルで戸塚中継所。最後の最後、どこにそんな力が潜んでいたのか。ラストスパートに誰もが息をのむ。ライバルを抜き去り、3区の中野翔太選手(法4、当時3年)に先頭で襷(たすき)をつないだ。

 

《権太坂からは苦しかったですが、最も苦しかったのは残り1キロです。 21キロ地点あたりで(運営管理車の藤原正和監督から)『お前は世界に出ていくんだから、ここで負けるわけにはいかない』と言われて、すごく気持ちが入ったのを覚えています》

 

中継所手前の3人による熾烈なしのぎ合いを制した。同じ愛知出身、同じクラブチームで兄弟のように共に走ることに打ち込んだ近藤幸太郎選手(青山学院大4年=当時)と、前回の2区区間賞の田澤廉選手(駒澤大4年=当時)の2人に競り勝った。 きっとラストスパートに自信があったのだろうと思って尋ねると、返ってきたのは意外な言葉だった。

 

《正直、スパートはもっと強化しなければならないと思っています。 競技を始めてからはずっと弱点でした。 高校3年生あたりから少しずつ強みが出てきたと思っています》

 

前年の98回大会では1区の区間記録を15年ぶりに更新し、たぐいまれなスピード能力を印象付けた。今回走った2区は13キロ付近からの約1.5キロで約20メートルを上る権太坂と、ラスト約3キロの通称・戸塚の壁という2カ所が難所だ。スピードだけでは太刀打ちできないコースを、見事なラストスパートを見せて攻略した。上りにはどのような対策で挑んだのだろうか。

 

《自転車で上り坂を登るときはギアを小さくするように、走りでもそれを意識しました。耐乳酸トレーニングを(2022年)12月後半から行い、直接結びついたかはわかりませんが、自信を持ってスタートできました》

 

上り坂対策で、尻とハムストリングス(太もも裏の筋肉)の強化を図るための耐乳酸トレーニングには特殊なトレッドミル(ランニング器具)を使ったという。

並走する吉居大和選手(左)と青山学院大の近藤幸太郎選手 ⒸGetsuriku

“強さ”を証明し、もう一つ上へ

ⒸGetsuriku

 

2区への出走は藤原監督から約3週間前に告げられ、そのときの気持ちを次のように振り返った。

 

《びっくりしましたが、すぐにエースとして走ってチームに貢献したいという気持ちになれました。 走るからには、区間新記録を狙っていこうと思っていました》

 

序盤からハイペースで飛ばしているように見えた。日本テレビの中継では、解説者から「吉居君はこの先に権太坂があることを知っているんでしょうか」とペース配分を懸念された。もちろん吉居選手が中盤以降の難所の存在を知らなかったわけはない。実は、入りの10キロの通過タイムは「想定よりほんの少しだけ遅かった」という。

 

《区間賞を狙っていたので(結果には)満足しています。ただ、正直運に恵まれて取れた区間賞だったなと感じています。来年は強さを証明できるような走りをしないといけないなと感じました》

 

区間賞の走りで十分に“強さ”も発揮したように思える。ただ、吉居選手はアスリートとして常に貪欲な姿勢で高みを目指している。東京五輪3000メートル障害7位入賞の実績があり、今回2区を走った三浦龍司選手(順天堂大)を「同世代で一番強さのある選手」とたとえ、切磋琢磨していく存在に挙げる。

 

今回、駅伝チームが目標に掲げていたのは総合3位と往路優勝。往路優勝はかなわなかったものの、総合2位は、藤原監督が大学2年で出走した第77回大会(2001年)の総合3位以来の表彰台となった。復路では、4年生(当時)4人と、湯浅仁・新主将(経済4、当時3年)が襷をつないだ。

 

《(チームとして)うまくいったなという気持ちと、もうひとつ上に上がるためには今のままではダメだなと認識できました》《4年生にはありがとうございました、と伝えたいです》

1区の溜池一太選手(左)から襷を受け取る吉居大和選手 ⒸGetsuriku

3区の中野翔太選手(右)に先頭で襷をつないだ=戸塚中継所 ⒸGetsuriku

大学駅伝「三冠」が目標
「学生ナンバーワンの選手に」

戸塚中継所に先頭で襷を運んだ吉居大和選手(右から3人目の選手)ⒸGetsuriku

 

チームのエースであるため、「こうありたい」と胸に秘めていること、そして、チームとして、個人としての今季の目標を尋ねた。

 

《チームに一番の勢いを与えることと、負けないということ。(箱根駅伝では)2024年も2区を走りたいと、今は思っています。チームは(出雲駅伝、全日本大学対校選手権、箱根駅伝の)三冠達成を目標にしています。個人としては、学生ナンバーワンだと言われる選手になることが目標です》

 

三冠は2022年度の駒澤大を含む過去5校しか成し遂げていない偉業だ。湯浅主将や吉居選手、中野選手らの最上級生をチームの柱として、今以上に選手層を厚くしていくことも求められるだろう。今回の箱根はとくに期待感をもってテレビの前で手に汗を握った学生や、OB、OGら全国の中大関係者も多かった。最後にこうした声援への思いを聞いた。

 

《前の方で走る中央大学を見てもらえてうれしいです。これからさらに中央大学が活躍できるように取り組んでいきたい》

 

大好きな陸上競技を頑張るという気持ちを支えに、将来は世界の舞台で活躍すると誓っている。

弟の吉居駿恭選手(左)とともに大会前の記者会見でも注目を集めた
=2022年12月19日、多摩キャンパス

吉居大和選手

よしい・やまと。愛知県田原市出身。宮城・仙台育英高卒、法学部4年。168センチ、50キロ。2023年1~ 3月は世界トップクラスの選手とともに米バウワーマントラッククラブのアリゾナ州での合宿に参加した。

高校3年時に全国高校駅伝競走大会に出場し、チームは優勝。箱根駅伝は99回大会2区1位(1時間06分22秒)、98回大会1区1位(1時間00分40秒=区間新)、97回大会3区15位(1時間05分02秒)。自己ベストは5000メートル13分25秒87、1万メートル28分03秒90。

第99回箱根駅伝 2区・鶴見-戸塚(23.1キロ)

順位 選手名(大学名) 記録(時・分・秒)

① 吉居 大和   (中央大)      1・06・22

② 近藤幸太郎 (青山学院大) 1・06・24

③ 田澤 廉  (駒澤大)   1・06・34

④ 石原翔太郎 (東海大)   1・07・09

⑤ ムルア   (山梨学院大) 1・07・22

⑥ ムルワ   (創価大)   1・07・29

⑦ 平林 清澄 (國學院大)  1・07・32

⑧ 内田 隼太 (法政大)   1・07・53

⑨ カマウ   (国士舘大)  1・07・54

⑩ 石塚 陽士 (早稲田大)  1・08・05

(上位10人)

 

第99回箱根駅伝 中央大学 区間記録

区間 選手名(学部・学年) 記録(時・分・秒)

1区  溜池 一太 (文1) 1・03・02 ④

2区  吉居 大和 (法3) 1・06・22 ①

3区  中野 翔太 (法3) 1・01・51 ①

4区  吉居 駿恭 (法1) 1・01・49 ⑤

5区  阿部 陽樹 (文2) 1・10・36 ③

       往路2位=5時間23分40秒

6区  若林 陽大 (法4)    58・39 ②

7区  千守 倫央 (商4)  1・03・15 ④

8区  中澤 雄大 (経済4) 1・04・58 ⑦

9区  湯浅 仁(経済3) 1・08・54 ⑥

10区    助川 拓海(経済4)1・09・27 ③

       復路2位=5時間25分13秒

       総合2位=10時間48分53秒

 ※丸数字は区間順位、学年は出走時

フィニッシュ後、応援団とともに記念撮影

GO GLOBAL!
スポーツ・文化活動
中大スポーツ
Connect Web
Careers