2023.01.27

4人の心を一つに 「スタートから攻め続ける」
ボート部 インカレ女子クォドルプルで初優勝

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クルー(選手)の多くが座った向きと反対方向に艇が進むボート競技は、顔に当たる向かい風が順風となる。リードを広げて先頭に立てば、ライバルの艇すべてが視界に入ってくる。「勝っている。引き離した!」。その瞬間、視覚的な達成感を得られるという。

インカレ女子クォドルプルの優勝メンバー。(左から)上野美歩選手、橋村心選手、溝口心華選手、神杏奈選手

ボート部が2022年9月の第49回全日本大学選手権大会(インカレ)の女子クォドルプルで初優勝した。終盤も艇の推進力が落ちないという持ち味に加え、「スタートから攻めていくレース展開にしよう」とクルー4人が心を一つにして挑んだことが栄冠を引き寄せた。優勝メンバーのうち、溝口心華(しすか)選手(文4)、橋村心(しん)選手(文3)の2人に、埼玉県戸田市のボート部合宿所で話を聞いた。

優勝したのは、溝口選手、橋村選手に、神(じん)杏奈選手(商3)、上野美歩選手(法2)を加えた4人。クォドルプルは漕ぎ手が4人の種目で、インカレで2020年からは舵手(コックス)のいない「舵手なしクォドルプル」として実施されている。チームの主力の女子選手でメンバーが構成され、男子にたとえれば花形のエイトに相当するという。

オールを漕ぐ回数を上げる!

レース中、最も船首近くに座る舳手(じくしゅ、バウ)の溝口選手、船尾に乗るストロークの上野選手の足元には、1分間にオールを漕ぐ回数が表示されるGPS機能付きの機材が積まれていた。

 

「ほかの大学も負けられないとスタートから攻めてくる」と決勝のレース展開を読み、終盤もペースが落ちない強みに加えて「回数をいつもより上げて、最初から攻め続ける」と4人の気持ちが一つになった。

(左から)溝口心華選手、神杏奈選手、橋村心選手、上野美歩選手

いつもより約4回多くした42回でスタートし、徐々に37、38回程度に落としていく。それでも通常よりは多い回数だ。中大は終盤に巻き返して勝利する展開が多いが、インカレという大一番で強気の戦法に出た格好となった。当たり前だが、回転数を上げれば上げるほど、負担は増し、身体は悲鳴を上げる。しかし―。

 

「身体はスピードを感じなかった。それでも艇は速かった。練習の成果だと思います」と、橋村選手は胸を張った。漕ぐ回数を上げる練習の積み重ねが、好結果を生んだ。終始リードを保ち、ラスト250メートルでライバル艇(仙台大)がペースを上げてきたが、差は縮まらず、最後は突き放した。

仲間の喜ぶ姿、歓喜の声に勝利を実感

前年のインカレ女子クォドルプルは、ほぼ変わらないメンバーで挑んで4位だった。橋村選手は「前年は悔しさ、不甲斐なさを感じた。やっと勝てた」と達成感を口にした。前に座る上野選手の喜ぶ姿、後ろの神選手の歓喜の声で勝利を実感したという。

 

最終学年で優勝を飾った溝口選手は高校時代、インターハイのシングルスカルに出場し、決勝で自身のミスが原因で涙をのんだ。その思いを晴らそうと大学でも競技を続けたことが最後に実を結んだ。「時間を置いて実感がわいてきた。4年間の努力が実って本当によかった」と振り返る。

 

「皆の姿が見えるバウは艇のスピードをさほど感じないポジション」と、溝口選手はたとえる。しかし、決勝では「進んでいる」という感覚を身をもって味わった。大学4年間の競技生活でも2、3回しか感じなかった推進力だったという。「やり切った。悔いはありません」とも語り、卒業して社会人となった後はボート競技の第一線から退くつもりだ。

インカレ連覇へ「努力惜しまない」

4年生が引退して新たに女子主将となった橋村選手は、「2023年のインカレ連覇に向けてチームを引っ張っていきたい。努力は惜しみません」と決意を語り、「メンバーの選考も白紙の状態からです」と実力主義を掲げる。

 

実は橋村選手と溝口選手は、埼玉県の別の高校でボート競技に励み、国体ではダブルスカルのチームメートにもなった。橋村選手は「艇を安定して進ませるテクニックなど、(溝口)心華さんから盗めるものはないかといつも見ていた。中大に進んだのも心華さんがいたからです」と先輩に感謝する。

 

ボート中心の生活を送ってきた2人は「練習はつらい」と口をそろえたが、それでもボートを続けてきた。「なぜだろう?」と互いの顔を見つめて笑い合ったが、橋村選手は取材の最後にこう語った。

 

「あんなにつらいと思っていた練習。なのに、けがをして練習できないと練習をしたくてしたくてたまらなくなるんです」

溝口心華選手

みぞぐち・しすか。埼玉・浦和商高卒、文学部4年。身長166センチ。手足が長いほうが有利なボート選手としては小柄だという。けがに悩まされた大学1、3年の時期は懸垂運動などで体幹を鍛えた。ボート部の溝口健太監督は父。1歳上の姉も中大ボート部というボート一家。

 

神杏奈選手

じん・あんな。福島・田村高卒、商学部3年。身長170センチ。集中力と修正能力に自信がある。1年生の頃から、課題だったフィジカル強化に注力した。中央大学の学生主体の雰囲気にひかれ、入部を決めた。

 

橋村心選手

はしむら・しん。埼玉・南稜高卒、文学部3年。身長173センチ。練習で培った持久力に自信がある。最後までバテないのが強み。日常の感覚にない、水の上をすいすいと進む心地よさにボートの魅力を感じている。

 

上野美歩選手

うえの・みほ。東京・成立学園高卒、法学部2年。身長170センチ。中学1年生からボート競技を始めた。高校生時代はJOCエリートアカデミーに所属。世界ジュニア選手権大会出場。アジアジュニア選手権大会女子シングルスカル2位。

(左から)上野美歩選手、橋村心選手、神杏奈選手、溝口心華選手

☆中央大学学友会体育連盟ボート部

 

1951年創部。溝口健太監督、白石悠主将。1954年の全日本選手権舵手付きフォアで初優勝。1983年にエイト種目で全日本大学選手権と全日本選手権に初優勝。これまでに全日本選手権エイト優勝が5回、全日本大学選手権エイト優勝は14回を数える。オリンピックには9大会で延べ26選手を輩出する学生ボート界の名門。女子部は2016年に創設された。

 

現在の部員は選手22人(男子14人、女子8人)、マネジャー10人。埼玉県戸田市の戸田ボートコース沿いに艇庫、合宿所があり、選手たちは授業日には各キャンパスにここから通学する。

 

 

☆ボート競技

 

1人が1本のオールで艇の左右どちらかを漕ぐ「スウィープ」、1人が2本のオールを左右対称に漕ぐ「スカル」に分けられ、1人漕ぎ(シングル)、2人漕ぎ(ダブル・ペア)、4人漕ぎ(クォドルプル・フォア)、8人漕ぎ(エイト)の種目がある。

 

艇上で舵取り役となる舵手(コックス)がいる種目と、いない種目の違いもある。クォドルプルの艇のサイズは長さ11.5メートル程度、幅42センチ程度。重さは52キロ以上という規定がある。

 

インカレ女子クォドルプル制覇の瞬間、艇上で喜ぶ4選手(写真奥のボート)

◇第49回全日本大学選手権大会 女子クォドルプル決勝

(2022年9月11日、埼玉県戸田市・戸田ボートコース)

 

       500m    1000m   1500m     2000m(Finish)

①中央大   1:46.64   3:35.54     5:24.08    7:08.47

②仙台大   1:47.86   3:36.86   5:25.29    7:10.31

③明治大   1:46.47   3:36.63   5:26.22    7:10.42

④早稲田大  1:49.13   3:38.26   5:28.00    7:17.97

⑤立命館大  1:49.45   3:42.59   5:35.11    7:23.02

⑥大阪大   1:57.10   3:59.08   5:59.84    7:59.04

(日本ボート協会ホームページから)

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