2021.03.31

新井ゼミ2020年度シンポジウム 高齢社会と成年後見・信託 ―多摩モデル構築に向けて― を終えて

法学部新井誠ゼミ 菊池香名 松田能

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2020年12月12日、私たち法学部新井誠ゼミは、外部講師や大学院生らと合同で、成年後見制度に関するシンポジウムを、オンラインを併用して開催しました。このシンポジウムは、ゼミにおいて現在の成年後見制度に関する問題点を探り、それに関する問題を考察し、ならびにその解決案を提案するというものでした。シンポジウムを無事に成功させることができ、2020年度で定年を迎えられる新井先生や、当日お越しいただいた外部の方々からも好評だったのは非常に喜ばしい限りです。簡単ではありますが、新井ゼミ2020年度の活動の記録として報告します。

成年後見制度について発表するゼミ生

シンポジウム当日までは苦難の連続でした。まず、新型コロナウイルスの影響で、ゼミ生全員が教室に集まることは不可能でした。発表者と補助役の学生だけが登校し、残りの学生はウェブ上で発表を聞き、質疑応答を行うという、例年と大きく異なった授業にならざるを得なかったのです。例年夏に実施される台湾への海外研修も実施できず、ゼミにおける調査にも大きな影響が出ました。シンポジウムでは、3年生と4年生が別々のグループに分かれ、それぞれ異なったテーマについて発表しました。

高齢社会における成年後見制度
重要度を増していく

シンポジウムで熱心に聴講するゼミ生たち

3年生は成年後見制度の概略とその課題について発表しました。成年後見制度というと、どのような印象を抱くでしょうか。民法を学んだ学生としては、債権法分野と比べるとマイナーな分野だと思う人もいるかもしれません。一方で、重要な制度であると認識してはいますが、手続きが大変だと思う人もいるでしょう。

 

しかし、成年後見制度は、今後の日本社会において大きく役割を果たしうることが期待されている制度です。近年、わが国においては高齢化、ならびに認知症患者の数が増加傾向にあり、そうした高齢者の財産管理や身上保護を目的とした成年後見制度は重要度を増していくでしょう。

 

3年生は、成年後見制度の概略についてまとめ、その利用促進を図るための成年後見制度利用促進法、成年後見制度における生活・療養看護事務である身上保護の重要性について調査しました。

 

この制度において、財産管理よりも身上保護の方がより重要であることと、利用促進法が制定されてもなお自治体によって取り組みにばらつきがあること、思った以上に利用が伸び悩んでいる、という事実は、興味深い調査結果で、利用をさらに促進するにはどのような制度が必要なのか、という疑問が生じました。私たち3年生の検討はここまでで、その考察は4年生の発表に譲ることになりました。

市民後見人制度の普及へ
「若い人の力が必要」と強調

4年生は、成年後見制度の利用促進を図るための制度として、市民後見人制度について発表しました。市民後見人制度とは、簡潔に言うと市民の中から後見人を選出して、その選ばれた市民後見人に被後見人に対する身上保護等をしてもらおう、という制度です。

 

具体例として、埼玉県志木市における市民後見人制度、ならびに品川区の例などを調査して、市民後見人制度の現状やその課題、対策案について発表しました。

 

発表の中で強調したのは、市民後見人制度の実施には、若い力、特に大学生の力が必要となってくる、というものです。実際、大学と協力して市民後見人制度の普及に努めたいという自治体も多いのです。そこで、大学生に市民後見人制度を知ってもらうべく、大学内でフィールドワークも含めた講義を実施すべきではないか、という提案をしました。

 

以上を踏まえて、私たち新井ゼミとして、成年後見制度の利用促進を図るために、市民後見人制度の普及をなすべきである、という提案を発表しました。

コロナ禍での開催に感謝

シンポジウムの基調講演では、司法書士の方や実際に市民後見人制度を業務に取り入れている自治体の担当者を招いて、市民後見人制度の実務の具体的な内容と、その現状について発表していただきました。実際に制度に携わる当事者の生の声や現状について学ぶとともに、ゼミ内で調査した段階ではわからなかった課題を知ることができ、大変有意義な内容となりました。

 

結びのディスカッションでは、成年後見制度の現状、疑問点について、外部講師の方や新井先生と意見を交わす時間が設けられ、大変貴重な機会となりました。

 

私たちゼミ生としては、コロナ禍の影響で、もう少し大規模な会場で、一般の方も招待してシンポジウムを開催できなかったことが残念でなりません。しかし、コロナ禍で多くの学生が研究内容を発表する機会を失っている中で、シンポジウムという形で発表することができたことを大変ありがたく思っています。ご多忙の中参加していただいた外部講師の方々に厚く感謝申し上げます。

 

結びとなりますが、今年度限りでご定年を迎える新井誠先生、1年間ゼミでご指導いただきありがとうございました。コロナ禍により、実際にお目にかかる機会が減ってしまったのは残念ですが、ご指導を受けたことを本当にうれしく思います。先生から教わったことを忘れることなく、残りの大学生活を過ごしていきます。改めて厚く御礼申し上げます。

菊池香名さん

松田能さん

新井ゼミ2020年度シンポジウム

「高齢社会と成年後見・信託―多摩モデル構築に向けて―」

 

日時:2020年12月12日午後1時~5時半

協賛:公益財団法人トラスト未来フォーラム

 

【第1部】 中央大学法学部ゼミ生発表

 

【第2部】 中央大学大学院法学研究科ゼミ生発表

 

【第3部】 基調講演

 小佐波幹雄氏(品川成年後見センター所長)

 高橋弘氏(司法書士、日本成年後見法学会常任理事)

 時丸和好氏(トラスト未来フォーラム副理事長)

 

【第4部】 パネルディスカッション

 

新井誠ゼミ・シンポジウム参加者

 

李 俊烔(法学部4年)

岡本 紗喜子(法学部4年)

奥田 良介(法学部4年)

坂上 真樹(法学部4年)

佐竹 大虎(法学部4年)

西崎 淳也(法学部4年)

薄 文(法学部4年)

益子 優輝(法学部4年)

伊藤 達也(法学部3年)

岩崎 蘭(法学部3年)

大久保 遼平(法学部3年)

菊池 香名(法学部3年)

君島 朋華(法学部3年)

竹内 夏樹(法学部3年)

長谷川 彩夏(法学部3年)

星 遼河(法学部3年)

松田 能(法学部3年)

松本 侑樹(法学部3年)

水谷 友祐(法学部3年)

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