2026.04.27
ライフセービング部の飯田充紀選手(文4)が2025年秋、全日本学生選手権(インカレ)女子サーフ3位、全日本選手権オーシャンウーマン6位と、続けて好成績を収めた。同部の女子選手でも過去最高の成績という。ライフセービングは単に勝利を目指すスポーツではなく、根底に「ゴールの先に救う命がある」という理念がある。飯田選手も「常にその意識を忘れずに練習に励み、2026年も大会でさらに上位を目指したい」と一層の飛躍を誓っている。(記事中の写真は飯田選手提供)
表彰台を目標としていた9月のインカレ女子サーフ3位に「驚きが大きかった」と振り返り、「前年(28 位)の悔しさを晴らせた。うれしさがじわじわと湧いてきた」と笑顔を見せた。その勢いも駆って10月の全日本選手権に挑み、総合的な実力を試される花形種目の「オーシャンウーマン」で6位入賞を果たし、入学時からの目標だった「3年生までに入賞(8位以内)」を達成した。
サーフはスイム(泳ぎ)のレース。以前はアイアンウーマンと呼ばれていたオーシャンウーマンは、スイム、ラン、マリブボード(ひざ立ちや腹ばいの状態で手を使って漕ぎ進む)、サーフスキー(パドルを使って漕ぎ進む、カヤックに似た乗り物)の4種目に次々と挑み、いずれも速さを競う。波の高さや風の強さ、風向きといった自然条件が大きく影響するスポーツだ。
オーシャンウーマンでは各種目について平均して実力を上げていかないと上位には入れない。インカレは開催地の千葉県御宿町の海への対処法を学ぶのも大事になるという。
3位に入ったインカレ女子サーフレース
「私は負けず嫌い。やるからには上を目指す」と自己分析する飯田選手だが、ライフセーバーとして順風満帆に歩んできたわけではない。
波が高かった2024年の中日本大会(全日本選手権の予選大会)のレース中、ほかの選手が手放したボードが自身ののどを直撃、波にもまれて呼吸困難になり救急搬送された。波への恐怖心が生まれ、練習でも思うように力を伸ばせず、この年の全日本選手権は予選で敗退。「このままでは(大会で)目標を達成できないし、恐怖心が残ったままでは海辺をパトロールしていても人を救えないのではないか」と不安を覚えた。
しかし、くじけそうになった心を立て直した。大学1年のときに、所属する南伊豆ライフセービングクラブが監視にあたる岩浜で救命・救急の初期対応に当たる「ファーストレスポンダー」として、おぼれた人に心肺蘇生を行い、救助した経験を思い返した。改めて「自分の大好きな浜で二度と悲しむ人を出したくない。人を救うために弱気ではいられない」と意を強くし、波への対処技術を高めていった。
苦手な種目を克服しようと、「自信がなかった分、納得できるまで練習量を増やし、積み重ねた」と振り返り、力がついている手応えを得ていたという。今回の全日本選手権も波が高い条件だったが、そうした練習量の裏付けや、ライフセービングに打ち込む仲間の励ましの声が後押ししてくれた。
指導役のコーチはおらず、練習時間も内容も自分で決める。自分を律し、考えて、自身を強く成長させた。恐怖心を克服して勝ち取った好成績だった。
サーフスキーを漕ぐ飯田選手(写真奥)
水泳はスイミングクラブで、0歳のベビースイミングの頃から経験がある。幼い頃からの練習で身につけた持久力が強みだ。ライフセービングのことは、高校2年の頃、スイミングクラブの先輩が取り組んでいることと、高校のOB、OGが活動していることから知った。
「好きな水泳をずっと続けたい」。人を助けることに泳ぎを生かせる活動に魅力を感じ、大学でも部活動としてしっかり取り組みたいと中大に進学し、入学後は日本ライフセービング協会の前理事長で、ライフセービング部の部長を務める小峯力(つとむ)教授(救急救命学)の指導を受ける機会にも恵まれた。
日頃の練習について尋ねると、11月から翌年6月の週末は、静岡県南伊豆町の弓ヶ浜海水浴場で救助訓練を行い、安全、確実、迅速にできるようになるまで取り組むという。レスキューボードなども使って、おぼれた人、熱中症になった人の救助を実際に近い状況で行うほか、傷の手当ての仕方やAEDを使った救命も学ぶ。夏場は海辺の監視活動に当たる期間となる。
4月からは最終学年の4年生。個人ではインカレでオーシャンウーマン、女子サーフともに3位以上、全日本は2025年以上の成績を目指す。インカレ女子団体は1~3年生と協力して2025年の6位以上を目標に掲げている。前向きでバイタリティーあふれる、まさしく“オーシャンウーマン”の今後の活躍に注目が高まる。
☆ 飯田充紀選手
いいだ・みつき。東京都立東大和南高校卒、文学部4年。身長160センチ。ライフセービング部では2025年10月まで1年間、副主将を務めた。
☆ライフセービング
水辺などの事故における安全、確実、迅速な救命活動を指す。応急手当ては水辺だけでなく、日常のあらゆる場面で必要とされ、ライフセーバーの活動も水辺に限られるわけではない。スポーツとしては勝利を目指すものの、ライフセービングの技能、体力、知識を高め、実際の活動に役立てて普及・発展させる役割がある。勝利が一番の主眼ではないことは「ゴールの先に救う命がある」という理念に表れている。
全日本選手権オーシャンウーマンで6位に入賞した飯田充紀選手
飯田充紀選手に大学でライフセービングの活動をする魅力、意義を尋ねたところ、人命に関わる責任の大きい活動に携わることができる▽海水浴場の運営に携わるさまざまな人々と協力できる▽これまで未経験の生活を送れる――などを挙げた。
中大のライフセービング部の部員は、茨城(波崎)、神奈川(逗子、片瀬西浜など)、静岡(南伊豆、下田、西伊豆など)といった各地の海水浴場の関係者と連携しながら、海辺の安全の徹底を図る活動に力をそそいでいる。学生が地域のコミュニティーと密接に関わることのできる部活動といえる。飯田選手が所属する南伊豆ライフセービングクラブは2020 年設立のNPO法人。
飯田選手が「地元と感じるくらいなじんでいる」とたとえる南伊豆町の弓ヶ浜
弓ヶ浜の監視活動の最終日…やり切った!
☆ 第51回全日本ライフセービング選手権大会
(2025 年10 月11〜13 日、神奈川県藤沢市・片瀬西浜)
〈オーシャンウーマン決勝〉
① 三井結里花(館山サーフライフセービングクラブ)
② 榎本由里(勝浦ライフセービングクラブ)
③ 浜地沙羅(西浜サーフライフセービングクラブ)
④ 青木邦(湯河原ライフセービングクラブ)
⑤ 富田和佳子(西浜サーフライフセービングクラブ)
⑥ 飯田充紀(中央大・南伊豆ライフセービングクラブ)
☆ 第40回全日本学生ライフセービング選手権大会
(2025年9月20~ 21日、千葉県御宿町・中央海水浴場)
〈女子サーフ決勝〉
① 甚内優那(東海大)
② 池田爽花(日本女子体育大)
③ 飯田充紀(中央大)
④ 山田純葉(日本体育大)
⑤ 中武美優(早稲田大)
(注)成績はともに日本ライフセービング協会サイトより抜粋
☆ ライフセービング部
1988年創部。小峯力(つとむ)部長、遠藤航副部長、中谷正紀監督、前田拓海主将。部員数45人(2~4年生)。夏は主に海辺の監視活動、オフシーズンは体力、競技力の向上を図るトレーニングを行っている。
2026年3月には、1次救命の普及活動に尽力したとして、一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)のUNIVAS AWARDS 2025-26「安全安心環境構築優秀取組賞」を受賞した。大学の各部会や高校などに1次救命措置の講習を実践形式で行っていることが評価された。