2024.12.18
水泳部伝統のセレモニー「感謝の集い」が2024年6月29日、3年前の東京五輪・パラリンピック会場となった東京アクアティクスセンター(東京都江東区)で開催された。水泳部員が日頃の感謝の思いを言葉にして直接、保護者に伝えた。選手たちの言葉の後、父母らがメッセージを送り返した。
保護者と部員、監督、コーチらが参加した「感謝の集い」=2024年6月29日、東京アクアティクスセンター
この日、アクアティクスセンターで開かれた「第69回日本大学・中央大学対抗水泳競技大会」の終了後、感謝の集いは同センター内の一室で開かれた。大会では、選手の出身地である全国各地から訪れた保護者約60人が観客席で声援を送り、対抗戦は日本大学178点、中央大学112点で、今年は日本大学の優勝で幕を閉じた。
感謝の集いがいつ頃に始まったセレモニーかは定かではないものの、水泳部の髙橋雄介監督(理工学部教授)によると、日本学生選手権で初優勝した1994(平成6)年にはすでに開催されていたというから、30年以上の歴史を重ねてきた大切なセレモニーである。
水泳部員と保護者、髙橋監督やコーチ、スタッフらが参加し、司会進行は森谷暢コーチ(商学部准教授)が務めた。セレモニーの冒頭、髙橋監督から、日大との対抗戦が以前は5月に開催されていたため、「母の日」「父の日」を兼ねて、感謝の言葉とカーネーションを贈っていたことが説明された。部員が保護者に感謝の気持ちを伝える場を設けるとともに、社会人として必要な「スピーチ力を鍛える」ことが主眼だという。
花束を手に両親に感謝の言葉を述べる松川晟士主将(右)
両親と向き合ってマイクの前に立った主将の松川晟士(せいじ)選手(バタフライ、広島城北高卒、法4)は、「(部活動で)水泳をするのはあと2カ月。今までは自分やチームのためだけに水泳をしてきたが、残りのレースは21年間の思いを込めて、お父さんとお母さんのために泳ぎます。いつもありがとう」と涙ながらに語りかけ、母親に手紙と花束を手渡した。
松川選手の父親は、「今年に入って最後のこと(息子の引退レース)を想像すると、夫婦でいつも泣きそうになっています」と胸の内を語り、「インカレでは父母会の会長として、皆さんのお力添えをいただきながら、選手たちの後押しをしたい」と続け、感激した面持ちだった。
バタフライの長森流楓選手(熊本・九州学院高卒、文2)は、「口数は多くはないけど大事な言葉をくれるお父さんと、おせっかいがすぎるお母さんの存在はとても大きいよ」と感謝し、「良い結果は出ていないけれど、こっちでちゃんと頑張っているから、もう少し待っていてね。いつもありがとう」と、笑顔で両親に手紙と花束を手渡した。
会場も和やかな雰囲気に包まれ、長森選手の父親は、「娘が精いっぱいチームのために応援する姿を見て、水泳部で競技力はもちろん、人間力も高めていただいているのだなと感じました。感謝しております」と話した。両親の目には光るものがあった。
両親に感謝の言葉を伝える長森流楓選手(右)
パラ水泳・背泳ぎの上園温太選手(兵庫・須磨学園高卒、商1)は、「僕の人生は1人では何もできないくらい体が弱くて、親の手伝いがないと何もできなかった。今まで支えてくれて、こうやって元気に過ごせているだけで幸せです」と胸に響く言葉で気持ちを伝え、「これからもできることはしっかりと頑張って、幸せな気持ちにさせてあげられるように頑張ります」と、目を真っ赤にしながら感謝の思いを伝えた。
「息子がこうやってまじめに私たちに話をしたのは、初めてのような気がします」と切りだした上園選手の父は、「高校を卒業するまでの18年間、一緒に生活していましたが、いきなり東京に行くと言い出し、1人で生活していけるのかと心配していました。この場に立ち、水泳部はファミリーな環境だと思いました。人間性にあふれた皆さんのお話を聞いていて、先輩や同期の皆さんがいてくれたら大丈夫だと安心しました」と話した。
参加した部員38人が保護者に感謝の言葉を伝えた後、阿部太輔コーチ(理工学部助教)らコーチの挨拶、学生スタッフの紹介があり、水泳部員と保護者が円陣を組んで声出しを行い、セレモニーはフィナーレを迎えた。
両親を前に涙ぐむ上園温太選手(右)
中央大学学友会体育連盟水泳部
1919(大正8)年創部。髙橋雄介監督、松川晟士主将。部員数48人(選手39人、学生スタッフ9人)。1956年メルボルン五輪・男子800メートルリレー4位入賞の野々下耕嗣をはじめ多数のオリンピアンを輩出し、1960年ローマ五輪・男子800メートルリレー銀メダルの藤本達夫ら6人のメダリストを生んでいる。
パラ・アスリートの育成にも力を入れ、日向楓選手(理工1)は、2024年パリ・パラリンピックの男子50メートル背泳ぎ(S5)で7位入賞するなど活躍した。日本学生選手権では1994~2004年に史上初の競泳男子団体総合11連覇を達成、その後も4回優勝している。通算の優勝回数15回は、日本大39回、早稲田大31回に次ぐ記録。
日大との対抗戦の観客席で応援する保護者ら