2024.12.03

前回は悔し涙…正月はうれし涙を見たい
第101回箱根駅伝予選会 学生記者6人が現地リポート
陸上競技部12選手が粘りの走り、6位で突破

学生記者 大山凛子(法4) 影原風音(文4) 倉塚凜々子(国際経営4) 木村結(法2) 松岡響紀(経済1) 九十歩胡春(文1)

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2025年新春の第101回箱根駅伝への出場を懸けた予選会が10月19日、東京都立川市で開かれ、選手12人が出走した中央大学陸上競技部長距離ブロック(駅伝)は6位で本戦出場権を獲得した。選手たちは季節外れの暑さに体力を消耗しながら、1秒でもタイムを上げようと必死の形相でゴールを駆け抜けた。中大では、白川陽大選手(文3)の17位(1時間03分58秒=日本選手では5位)が最高成績だった。

 

予選会は、午前9時35分に陸上自衛隊立川駐屯地をスタートし、市街地を経て国営昭和記念公園に至るハーフマラソン(21.0975キロ)で争われた。本戦出場の10枠を懸けて、43チームの500人を超す選手(各チーム12人以内)が出走し、上位10人の合計タイムで競った。

 


 

当日、選手たちを間近で取材した「HAKUMON Chuo」学生記者6人がリポートします。

炎天下を駆け抜ける圧倒的なスピード
学生記者 大山凛子(法4)

中央大学陸上競技部長距離ブロック(駅伝)チームにとって2020年以来となる箱根駅伝予選会。フィニッシュ地点のある国営昭和記念公園に近いJR西立川駅に「HAKUMON Chuo」取材チームとして集合した朝の時点から、気温がぐんぐん上昇した。その暑さが中央大学だけでなく各校の選手たちを苦しめたが、大学ごとにたくさんののぼり旗がはためく公園内も気温以上の熱気に満ちていた。

 

出走した選手たちの顔つきは、撮影の画面越しに見ても強さや自信がみなぎっているように感じた。途中経過で、中大の暫定順位が少しずつ下がってアナウンスされると、不安げな表情になる仲間の学生記者もいたが、私は大丈夫だと確信していた。

 

藤原正和監督が予選会前に「圧倒的な走りを見せたい」と語っていたのを思いだし、その言葉通り、選手たちも気力を振り絞るような走りを見せていたからだ。目の前を走る選手の姿を見て驚いたのは、長距離走とは思えないほどの速さで、炎天下を駆け抜けていく、そのスピードだった。彼らなら予選会を突破できると強く信じた。

 

取材中、大勢の卒業生の方々が「頑張って」と、学生記者の腕章をした私に声をかけてくれた。この記事を通して、選手の頑張り、予選会の熱気、卒業生をはじめとする声援の大きさを伝えたいと、大きな励みになった。

 

予選会を終えた藤原監督と川田涼主務(経済4)に話を聞くことができた。2人とも限られた時間の中で質問に丁寧に答えてくださり、誠実さと冷静さを感じ取れた。

 

川田主務は「暑さが苦手な選手もいるので、第一に全員が予定通りに走れればいいなと思っていました」と語り、常日頃から選手の状態や体調を把握し、気遣っている様子がうかがえた。相手が誰だろうと尊重する姿勢を忘れない川田主務の受け答えに感銘を受け、私にとって大きな学びともなった。

 

もちろん、予選会突破という結果は確かに大事だ。ただ、冷静に落ち着いて、この日の暑さのような困難に立ち向かう姿勢を見て、何事も結果以上に、その過程や態度が問われるということを実感した。

チームトップでゴールした白川陽大選手ⓒGetsuriku

岡田開成選手ⓒGetsuriku

「箱根」にかける選手の思いと意地
学生記者 倉塚凜々子(国際経営4)

秋到来を待つ私たちには肩透かしのような強い日差しの下、時折吹く風に少しだけ一息つける。そんな一日だったが、彩り豊かな各校ののぼり旗を目印に歩いていくと、多くのOB、OGが母校の予選突破を目の当たりにしようと、期待に胸を高鳴らせていた。

 

「給水が勝負の分かれ目」ともいわれ、出場校の多くの監督が、「必ず給水するように」と呼びかける予選会となった。有力視されながら力を発揮し切れないなど、想定外の走りを強いられた選手も少なくなかったようだ。

 

応援の人たちが多く集まっていたフィニッシュ地点手前で、バランスを崩しても、這(は)ってでも完走しようとする選手の姿を目の当たりにした。競技の厳しさとともに、選手の箱根にかける思いと意地を痛感する光景だった。

 

季節外れの暑さに藤原正和監督も戦術を変えて挑んだという。予選通過の順位にこだわらず、走りきって本戦へとつなぐことに重点を置き、1年生5人を含む12人全員が完走を果たした。注目すべきは、中大の選手層の厚さを証明するように、エース格の選手たちが不在という中でも6位通過できたという事実である。

 

フィニッシュ地点に近い芝生広場では、出場校の卒業生や関係者がそれぞれに結果発表を待っていた。ピンとした空気が張り詰め、1位から順に通過校の名前が呼ばれると、どよめきや歓声が上がり、また静けさが戻る。「中央大学」とアナウンスされると、安堵の声とともに、正月に再び選手たちの雄姿を目にすることができると喜び合うOB、OGの姿が見られた。

 

競技終了後の壮行会で、真っ先に応援の声を上げたのは、中央大学応援団だった。小林良輔団長にとって、次が団長として見届ける最後の箱根駅伝となる。「磨きをかけてきた中大節(中大学生歌)を届け、優勝にふさわしいこのチームを後押ししたい」と語った。

 

箱根本番での駅伝チームの快走を願い、わくわくする思いが止まらない。

声を張り上げる応援団の小林良輔団長

各校の喜びと悔しさが交錯 予選会の非情さを痛感
学生記者 影原風音(文4)

初めて箱根駅伝予選会の会場に足を運んだ。出場する陸上競技部の選手たちの表情から、この日のために準備を整え、大学の名を背負い、伝統を引き継ごうと、熱い闘志を燃やしている様子がひしひしと伝わってきた。

 

真夏のような日差しに、立っているだけで汗が噴き出してくる。選手の顔からも気温の高さに苦しむ様子が見て取れた。何が起きるか分からない競走の場で、普段通りの実力を出し切る難しさも感じた。

 

フィニッシュ地点の昭和記念公園芝生広場では、各校の選手や関係者がそれぞれに集まり、結果発表を待っていた。予選会通過校の名前が順に読み上げられたときの選手たちの姿はとても印象的だった。6番目に「中央大学」とアナウンスされると、硬かった表情が笑顔へと一変する。その場で一礼し、表情を緩める選手の姿に、うれしい気持ちで胸がいっぱいになった。

 

そして、喜びと悔しさが入り交じった独特の雰囲気を目の当たりにした私は、そのコントラストから予選会の非情さに改めて気付かされた。予選通過ならなかった大学も、次の目標に頭を切り替えて奮起してほしいと願う自分がいた。

 

正月の箱根本戦での目標について、藤原正和監督は「確実に3位以内」と語った。そう、暑い一日を戦い抜いても、ここはまだ通過点なのだ。

 

フィニッシュ後、阿部陽樹選手(文4)は「(中大の)集団でまとまってゴールしようと思っていたが、暑さの影響もあってばらけてしまい苦しかった。箱根本番はもっと苦しいと思う。より状態を上げて区間賞を目指して頑張りたい」と力強く語り、山平怜生選手(法4)も「本番に向け、全体的なレベルアップが必要。個人としても距離と質を兼ね備えた練習でもう一段強化し、体調管理を徹底して本番に臨みたい」と、最上級生らしい頼もしい言葉を残した。

 

中大の駅伝チームは選手層が厚く、全日本大学駅伝対校選手権(11月3日)、箱根駅伝にも総力戦で挑むことになる。当日出場するのは選ばれた選手だが、選手同士は大切なその日まで一緒に練習し、刺激し合い、互いを高め合っていくことだろう。

 

切磋琢磨して強くなる―。4年生の私も心から応援したい。

阿部陽樹選手ⓒGetsuriku

山平怜生選手ⓒGetsuriku

一瞬のうちに目の前を駆け抜けた「C」のユニフォーム
学生記者 木村結(法2)

多くの人々が出場校の応援に駆けつけ、気温の高さが応援の熱気をさらに加速させているように感じた。年配の方々から子供たちまで、至る所で中央大学の旗を振りながら応援する姿が見られた。

 

私はフィニッシュ地点から約100メートル手前の場所で取材しながら、必死に応援もしていた。テレビ画面越しでなく、現地で選手たちの走りを見て、その速さに圧倒された。想像していたよりもずっと速く、20キロ以上を走ってきたとは到底思えないほどの全力疾走に見えたからだ。

 

選手が次々と駆けてきて、胸に「C」マークのユニフォームも一瞬のうちに目の前を通り過ぎた。力強い走りに感動し、声をからしていると新たな気づきもあった。何より直接、選手たちに声を届けられている気がして、うれしかった。

 

日々、選手たちのサポートに奮闘しているマネジャー、阿部朱音さん(法4)に話を聞くことができた。彼女にとって、次が最後の箱根駅伝となる。予選会については「練習のときから4年生が引っ張り、集団でまとまってゴールすることを意識していた。終盤は皆がきつそうだったが、最後にペースを上げて頑張り、日々の積み重ねが生かされているような走りだった」と振り返った。

 

いつも近くで見ている存在だからこそ、選手たちの頑張りをうれしそうに称える姿が印象的で、予選会突破に安心している様子も感じ取れた。さらに、箱根駅伝に向けて「今年は実力を発揮できず、悔し涙を流した。来年こそはうれし涙を流せる結果となるよう、全力でサポートしていきたい」と言葉に力を込めた。選手とマネジャーの一体感が伝わってきて、胸を打たれた。

 

箱根本戦までの短い期間で、選手たちはさらに練習に励み、きっと予選会以上の走りを見せてくれるだろう。予選会での頑張りを目の当たりにしたことで、正月には一層、声を大きくして応援したいと強く思った。

駅伝チームを支える陸上競技部長距離ブロックのマネジャーたち

試練を乗り越えて 「箱根駅伝」の魅力を再認識
学生記者 松岡響紀(経済1)

前回の箱根駅伝は、すでに中央大学入学が決まり、テレビの前で応援していた私にとってもまさかの結果。選手たちにとって、今回は箱根での捲土重来を期して挑む予選会だった。出場校の卒業生や大勢の関係者が集う昭和記念公園の芝生広場は、スタート前から独特の雰囲気に包まれていた。

 

中大の予選会出場は2020年以来となる。競技中、陸上競技部ではない在校生の保護者の方に話を聞くと、「中大の予選会出場は珍しいので応援に来た。出場する選手全員を応援します。けがなく全力で頑張ってほしい」と話していた。

 

10月中旬と思えない気温に、私自身もこまめに水分補給をしながらの取材だったが、暑さが選手の体力を奪ったことも疑いようがない。フィニッシュ手前では多くの選手の表情が苦しそうに見えたが、中大は見事に6位で通過し、箱根への切符を手に入れた。「出場権は大丈夫だろう」と思っていたが、5位までにアナウンスがなかったときは正直、少しあせる気持ちも生じた。

 

そうした厳しい争いの中でも、応援団をはじめとする沿道の中大への声援は他校を圧倒するものであり、選手の背中を後押ししたはずだ。チアリーダー部員も「選手には全力を尽くして箱根に向かってほしい」とエールを送っていた。

 

中大の出場選手12人のうち、1年生が5人を占めていた。藤原正和監督は「1年生にとって初めての箱根予選会ということで、相当過酷だったと思う」とねぎらいの言葉をかけ、「(全員が)これだけ戦えたことはよかったし、トレーニングの成果は出てきている。(箱根では)3位以内を目指し、優勝争いをしたい」と手ごたえを語った。

 

箱根駅伝の魅力を再認識できた、初の予選会取材となった。

季節が逆戻りしたような暑さが選手たちを苦しめたⓒGetsuriku

「重圧に打ち勝つ走り」を期待
学生記者 九十歩胡春(文1)

気温が25度を超えてどんどん上昇する中で、本当にたくさんの観客が中央大学を応援しに来ていた。出走する12選手中、1年生が5人と知り、自分と同い年の選手への尊敬の念とともに、期待が高まった。

 

暑さがいつも通りの走りを妨げるのは誰もが想像できたことだが、苦悶の表情を浮かべながら走る姿に、「頑張れ」という気持ちに加えて、「どうか無理をしないで」という感情も膨らんでいった。埼玉県狭山市から駆け付けた学員会支部「狭山白門会」の田口丈夫副会長も「箱根の本戦に行ければ(予選会の順位は)何位でもいい。こんなにも暑い中で無理をせず頑張ってほしい」と、選手たちを気遣った。

 

10キロ地点、15キロ地点などと、テレビ中継と同様に現地でも随時、出場各校の上位10選手が通過した順位がアナウンスされ、出走していない選手や関係者がやきもきする思いで時を過ごしていた。

 

フィニッシュ地点前にはカーブがあり、どの大学の誰がゴールするか、直前までわからない。集まった人々からも「あの大学はまだか」「あの選手は来ないか」という声が飛び交い、胸の高鳴りを抑えきれない様子が伝わってきた。

 

結果発表で中央大学が6位で呼ばれたとき、大きな拍手、歓声とは裏腹に、選手たちの冷静でどこか満足していないような表情が心に残った。

 

並川颯太選手(法1)に走りの感想を尋ねると、「個人として良かったところは一つもない。力強い走りができず、チームに何も貢献できなかった」と謙そん気味に反省の弁が返ってきた。一方で、「(箱根に向けて)自分の力を発揮できれば結果はついてくると思うので、これまで通りしっかり、レベルの高い練習に自信を持って励む」と頼もしい言葉も聞けた。

 

その言葉や表情から、選手たちの目標が箱根駅伝の本戦出場だけでなく、さらに高みにあることを実感させられた。謙虚さと、自分を厳しく律する姿勢が強さにつながっているのだろうと思った。

 

正月の箱根路は予選会以上のプレッシャーがかかるはずだ。その重圧に打ち勝った走りが見られることを期待している。

藤原正和監督(右奥)の指示に耳を傾ける選手たち ⓒGetsuriku

〈第101回箱根駅伝出場校〉
★シード校(前年上位10校)

 青山学院大
 駒澤大
 城西大
 東洋大
 國學院大
 法政大
 早稲田大
 創価大
 帝京大
 大東文化大

★予選会(10月19日)通過校
  順位 大学名   記録(時・分・秒)
 ①  立教大   10・52・36
 ②  専修大   10・53・39
 ③  山梨学院大 10・54・06
 ④  日本体育大 10・55・58
 ⑤  中央学院大 10・56・01
 ⑥  中央大   10・56・03
 ⑦  日本大   10・56・53
 ⑧  東京国際大 10・58・53
 ⑨  神奈川大  10・59・12
 ⑩  順天堂大  11・01・25


 関東学生連合(オープン参加)

★予選会(10月19日)中央大学 選手成績
 

全体順位 選手名 学部学年  記録(時・分・秒)
  17   白川 陽大  文3   1・03・58
  24   岡田 開成  法1   1・04・28
  36   阿部 陽樹  文4   1・04・58
  40   原田 望睦  文1   1・05・01
  47   佐藤 大介  文1   1・05・09
 103     鈴木 耕太郎 法2   1・05・55
 126     並川 颯太  法1   1・06・12
 133     山平 怜生  法4   1・06・22
 139     吉中 祐太  文3   1・06・26
 218     伊東 夢翔  経済3  1・07・34
 259     佐野 拓実  経済4  1・08・24

 324     七枝  直  法1   1・09・50

(注)記録は関東学連の公式サイトより抜粋

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