2022.04.05
レスリング部の安齊勇馬選手(2022年3月文学部卒)が憧れだったプロレスの世界に飛び込む。レスリング部で培ったすべてを糧に、プロレスラーとして飛躍を目指す。当初は練習生として体力づくりなどに励み、四角いリングでのデビュー戦は2022年中にもと期待されている。将来の目標は全日本プロレスの至宝「三冠ヘビー級」のチャンピオンベルト奪取だ。
「気持ちが高ぶりました」。初めてリングに上がり、観衆に挨拶した安齊勇馬選手(中央のスーツ姿)=2022年1月2日、東京・後楽園ホール
「大きい体の『ザ・プロレスラー』になりたいです」
多摩キャンパス第一体育館のレスリング道場で2022年2月に取材した安齊選手は、この春から荒々しいプロの格闘技の世界に足を踏み込むとは思えない柔和な表情、落ち着いた口調でそう話した。
「プロレスは見るからに痛いだろうなと思える技の応酬で、普通の人には到底できない世界。見ていて熱くなれるのがプロレスです」。こんどは自身がリングに上がり、会場の観衆を熱くする戦いの当事者となる。「飛んだり跳ねたり」という空中殺法よりも、水平チョップなどの力技で勝負する「男くさいレスラー」を目指したいという。
188センチ、105キロのがっしりとした体格と、端正なマスクは、もちろんプロレスラーとしての実力があってこそではあるが、リング上で注目されそうだ。
父親の義宏さんが空手家だったこともあり、小中学校時代は空手や野球に取り組んだ。中学2年の夏のある日に、たまたまテレビのプロレス中継を見て、「こんなにかっこいい世界があるのか。おれもこの世界へ行きたい」と衝撃を受けた。
写真提供:「中大スポーツ」新聞部
プロレスラーになるため、「もっと体をたくましく、大きくしたい」と考えていたとき、図らずもコロナ禍が転機となった。大学3年時は半年間、スパーリングなどレスリングの練習が減り、当然公式戦も減った。このため筋力トレーニングを主体に取り組んだところ、90キロ前後だった体重が約15キロも増えた。
ピンチをチャンスに変えたといっていいだろう。「コロナ禍前は、体がまだ細かったんです。どんなところに(自分が)変われるきっかけがあるか分からないと思いました。後輩たちにもこれは知っておいてほしい」とメッセージを送る。
中大レスリング部では、「耐える力」「踏ん張る力」「苦しいところから、あと一歩頑張る力」を培った。山本美仁監督や、3年時までトップレベルの技術指導を受けた韓国人コーチ、切磋琢磨したチームメートに感謝している。
ふだんは物静かな印象だが、マット上では負けず嫌いな一面を見せる。階級(体重)が上の主将、武藤翔吾選手(2022年3月法学部卒)とはスパーリングを繰り返した仲。安齊選手は「負けても『もう一丁』と、納得いくまで挑んでいきました。(4年生になって)少しは追いついたかな」と語り、自身の成長に手応えを感じているようだ。
2022年1月2日には、全日本プロレスのリングにスーツ姿で初めて登場し、「中央大学の安齊勇馬と申します。4月から入門します。よろしくお願いします」と観衆を前に挨拶した。
「これまでは見る立場でしたが、プロレスラーになるという実感がわきました。気持ちが高ぶりました」
遠くない将来、全日本プロレスの看板を背負って立つレスラーになることを期待したい。
安齊勇馬選手
あんざい・ゆうま。群馬・前橋西高卒、2022年3月文学部卒。188センチ、105キロ。レスリング歴7年。高校時代はレスリング部のある学校が近くになく、毎朝始発に乗って朝練習に臨んだ。2019年全日本大学グレコローマン選手権5位、2021年東日本学生レスリング選手権春季大会フリースタイル97キロ級優勝。全日本プロレスには中大OBの諏訪魔選手が所属、OBで故人のジャンボ鶴田(鶴田友美)さんも在籍していた。