図書館が資料を収集し、整理、所蔵する目的は、言うまでもなく資料を利用に供することにある。従って、図書館が利用サービスに重点を置くのは基本的に正しい。しかし、従来、図書館員が利用という言葉に含ませてきた内容が、とかく視野の狭いものであったことは否めない。当面利用者の便宜をはかることのみを念頭に置いて、その背後に同一資料を利用する人々が、遠い将来にわたって無限に存在することに深く思い及ばないで来たのが実状であろう。
この点で、資料の利用は自然資源の利用と共通の視点を必要とする。有限の自然資源を子孫に伝えるためには、現代の人間が無制限にそれを開発することは許されず、常に抑制が求められる。資料についても、個人の利用に制限を加え、同一資料を少しでも長く少しでも多くの人の利用に供する道を開くのが、文化の継承者・普及者としての図書館の任務である。
しかし、逆に保存が自己目的と化すのは、明らかに大きな誤りである。資料を保存するのはそれを利用するためであって、いたずらに死蔵するためではない。個々の図書館で個々の資料に即して利用と保存の均衡を配慮することが求められている。
さて、資料保存対策の特徴として、次の諸点が挙げられよう。
このような特徴に留意しつつ、上述の観点から、本学図書館における資料保存総合対策要綱を制定する。
なお、本要綱は1994年4月1日から施行する。