注目を集めている辞書サイトは、中央大学受験生ナビ「Connect Web」内にある。トップページに「中央大学の辞書ヲタクが制作中の、大学用語をまとめた辞典」と記されていた。これから中大を目指そうという受験生、入学が決まった新入生、そして現役生らを主な対象に編集された。語句をいくつか引用すると―。

えっけん【謁見】（ 名・自スル）チュー王子に会うこと。「今日、ペデ下で―できるらしいよ」

きむらくん【キムラくん】（名）ヒルトップ４階にある、さぬきうどん店「和おん」の看板メニュー。うどんの上にキムチ、豚肉、玉ねぎ、たまご、食べるラー油などが乗っている。
▶コロナによる和おん営業停止時には、「キムラくん」を熱望する声に応え、同１階のレストランコープが「キムラさん」という名称で豚キムチ温玉うどんを販売したことも。

きんぎょばち【金魚鉢】（名）文学部棟にある、ガラスで覆われたスペース。１階の入口付近と、３階の文学部事務室横にあり、学生がいう場合には後者を指すことが多い。「―で勉強してくる～」
▶コロナ以前によく使われていたことば。

さくらひろば【さくら広場・桜広場】（名）多摩キャンパスの白門前にある花見スポット。約300本のソメイヨシノが植えられている。春になると花見を楽しむ学生の姿が見られる。
▶「さくら広場」「桜広場」両方の表記がある。管轄の違いか。

でんでん（名）理工学部電気電子情報通信工学科の略称。Twitterなどのプロフィールではカタツムリの絵文字で表記されることもある。

中央辞というタイトルを公募で決め、同年７月14日に受験生・新入生向け特設ホームページとして開設。昨夏のオープンキャンパスでは小判の印刷物「ミニ中央辞」1000部を配布した。「中央辞が面白いので中大を目指す」と言ってくれた高校生や、SNS上で「それは中央辞に書いてあるよ」と教えているコメントを見たといい、反響は素直にうれしかったそうだ。

ところで、辞書は一般的に言葉などを調べるツールであり、辞書そのものが好きという心理はなかなか理解されにくいのではないか。なぜ、そこまで好きなのかと聞くと、「私は純粋に言葉に興味があるんです。小説を読んでも、物語の面白さよりも言葉の使い方、表現の仕方に興味がわきました。それに気づいたんです」と理由を説明した。
 

アイドルに夢中になるように辞書が好き、“辞書推し”なのだという。だからこそ、中央辞にある「桜広場」「さくら広場」のような表記の揺らぎは「たまらない」と興奮しながら教えてくれた。

卒業後は出版業界に進み、仕事として辞書と向き合うことになる。良い辞書とは何かと尋ねると、「特に説明がなくても使える、導線がはっきりした辞書」ときっぱり。「ジャンルにこだわらず、ユーザーが満足する辞書、使いやすい、よく手になじむ辞書を作りたい」と話している。