2023.12.06

物理学がつむいだ貴重な経験、交流と出会い
デンマーク・ コペンハーゲン大学に交換留学
理工学部物理学科3年 井關聖音さん

  • 中大ニュース
  • きょう・あした

理工学部物理学科3年の井關聖音(いせき しおん)さんが、2023年2月までの約半年間、デンマークのコペンハーゲン大学に交換留学しました。学業でもプライベートでも、有意義でかけがえのない経験をした半年間を振り返ってもらいました。

「日本語カフェ」で知り合った友人と井關聖音さん(左)。リラックスできるひとときだ

コペンハーゲン大学の入学式の一コマ

“量子力学の育ての親”に学ぶ

私は2022年8月から2023年の2月末までの約半年間、学部2年生の後期にコペンハーゲン大学に交換留学しました。小さい頃から異文化や海外で暮らすことに興味があったことと、好きな教科である英語を使って、専攻している物理を学んでみたいという思いから、留学に行くことを決めました。

留学といえば、アメリカやイギリスなどの英語圏の国への割合が比較的多いですが、留学先の大学を選ぼうと調べていくうちに、協定校にもさまざまな大学があり、コペンハーゲン大学では、量子力学の育ての親であるニールス・ボーアの研究所で授業を受けられることを知りました。

留学に応募した1年生のときは、物理についてまだ基礎的な内容しか学んでいない状態でしたが、量子力学という、光子や電子といったとても小さな「量子」について勉強できる学問に最も興味をもっていたので、とても惹(ひ)かれ、応募を決めました。

また幸福度が高いといわれるデンマークでの生活や、EU内で旅行がしやすいという点にも魅力を感じました。理系の学生で留学に行く人は少数派ですが、前例の少ない中でも大学でたくさんの方が相談に乗ってくださり、無事留学に向かうことができました。

☆コペンハーゲン大学

1479年設立。デンマークの首都、コペンハーゲン市にある同国で最も歴史のある大学。学生数は約3万7000人。文学部、法学部、理学部、社会科学部、医学・歯学・薬学部、神学部の6学部がある。ニールス・ボーア(物理学賞)をはじめ多数のノーベル賞受賞者を輩出している。

最先端の氷河研究を知る

留学中には、解析力学、氷河物理学、アカデミックライティングの3つの授業を受けました。その中で特に印象的だったのは、氷河の物理学の授業です。この授業は、物理学を通して仲良くなった友人から、「デンマークは氷河の研究で有名だよ」と教えてもらったことがきっかけで、履修を決めました。

日本の物理学科ではあまりなじみがない分野でしたが、デンマークはグリーンランドにおける氷河研究で最先端の国であり、貴重な環境の中で学ぶことができました。授業では、実際にグリーンランドの氷河から採取した氷のデータを分析して、過去の気象を推測する方法を学びました。

先生が実際に氷河を採取する様子がわかる写真を見せてくれたり、デンマークの地形と氷河の関連性を教えてくれたりしたこともあり、有意義な授業でした。留学に行ったばかりの頃は、正直なところ、英語、授業内容ともにレベルが高く、絶望感を覚えましたが、物理を学ぶ中でできたつながりや一つの授業にじっくりと向き合える時間割のおかげで、だんだんと授業が楽しくなっていきました。

さまざまな人から多くの学び

コペンハーゲンで有名なニューハウン(Nyhavn)の港

もともと私は物理を勉強したいという理由で留学しましたが、日常生活での出来事や、人との出会いからもたくさんの学びがありました。日本での準備期間は、ビザ、履修計画の策定などで本当に忙しかったですが、留学中は違いました。

デンマークでは「hygge」(ヒュゲ=注)というリラックスした時間をみんなが楽しんでいて、私も自分のやりたいことに多くの時間を費やすことができました。

休みの日には、いろいろな国から来た留学生や「日本語カフェ」と呼ばれる言語交換の場で知り合った友達などと町探検、お菓子作り、パーティーを楽しんだり、優しいオーナーの下で、寿司店でのアルバイトにも挑戦しました。

また、金曜日の夕方には学校内の「フライデーバー」というバーによく参加していました。デンマークの大学では珍しくないのですが、学校内での飲酒体験はとても新鮮でした。さまざまな人と話せるチャンスでもあり、よく参加しました。デンマークはリラックスした「hygge」な瞬間がありながらも、フライデーバーや新年の大量の花火の打ち上げなど、イベントの際には思い切り楽しむという一面もあり、とても面白い国だと思います。

 

(注)「hygge」(ヒュゲ)= 心地よく安心感のある楽しい雰囲気のことを表すデンマーク語。他人とでも1人でも、ゆったりと人生を味わっている感覚を示す概念という。

 

CERNを見学中の井關聖音さん(左)

世界最大の陽子衝突型加速器にワクワク感

まとまった休みには旅行に行き、冬には留学前からの念願だった、スイスのCERN(欧州原子核研究機構)を見学に行きました。CERNでは、LHCという地下100メートルにあり、全周27キロにもなる世界最大の陽子衝突型加速器を目の前で見学し、働いている方の話を聞くことができ、物理の楽しさや「ワクワク」を感じた瞬間でした。

その他にも、友人とパリに行ってエッフェル塔を見たり、イタリアへ一人でバックパック旅行をして世界遺産を見たり、行く先々の国々で物理の聖地巡りをしたりと、さまざまな場所を訪れました。

留学を振り返ると、言語や授業、生活等での悩みはありながらも、デンマークという国でたくさんの人と出会い、また物理学を通して貴重な体験ができたことからとてもハッピーな毎日でした。将来また海外で物理学に携わる経験をしてみたいという新しい目標もできました。

最後に、理系で留学に行く方は少ないし、英語での授業やカリキュラムなどへの不安があるかと思いますが、私は物理を勉強していたからこそできた友達、行くことができた場所など、自分の専門分野のおかげで、留学がもっと楽しくなった瞬間がたくさんあったと思っています。少しでも興味がある方は、行けたらとても楽しいので、大学や周りの人に相談してみるなど、ぜひ一歩を踏み出してみてください。

謝辞 留学記投稿にあたり、英語をご担当されている松谷泰樹先生(中央大学米国交換留学第 1 回生)にご指導ならびにご尽力を賜りました。ここに記して謝意を表します。

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