2023.12.12

棋道会将棋部の歴史上で初の女流棋士 2人が在籍
「女流タイトルを取りたい」 宮澤紗希さん(法4)
「一つひとつ前へ進みたい」 内山あやさん(理工1)

  • 中大ニュース
  • キャリア

棋道会将棋部の宮澤紗希さん(法4)が今年7月、プロである女流棋士(2級)となった。将棋部では、内山あやさん(理工1)が女流棋士(初段)としてすでに活躍している。女流棋士の在籍は部の歴史の中でも初という。プロの2人はアマチュアである学生の大会参加はできないが、将棋部の団体戦を応援したり、部員同士でオンラインで対局したりと、部活動にも参加している。2人に棋士としての将来像や目標、将棋の魅力などを尋ねた。

「先の先の手を読む その深さを追求する」
女流2級 宮澤紗希さん

「将棋が好き。将棋に関わることを仕事にしたい」。今年 7 月1日付 で「プロ」と呼ばれる女流棋士になった。「私はあまり器用ではなく、将棋と学業の両立は難しい。このため(学生の多くが進路を決める)大学4年生というこの時期にプロ入りを決意しました」と明かす。

7月以降は自身の力量を上げることとともに、ファンとの指導対局や、棋譜の解説など将棋の普及に関係する仕事も増え始め、「少しずつ慣れてきました」と笑みをたたえて話す。普及の仕事にもやりがいを覚えるという。

幼稚園年長の頃、父親に教わって将棋盤に向かうようになった。小中学生の頃は、日本将棋連盟の子供スクールや、師匠の戸辺誠七段の教室に通うなどして力を蓄えた。強くなっていく過程で「攻める将棋」を身に着け、現在は得意戦法の居飛車から、積極果敢に攻めていく将棋が持ち味だ。「受けが強いのも大事ですが、攻めずに勝つのも難しい」と語り、自らの課題として、先の先の手までを見通す「読み」の量と、深さの追求を挙げている。

 

「楽しいと思う気持ちを忘れない」

読み進んだ先の局面を正しく判断する力も求められ、そのための経験の積み重ねも必要だ。いろいろな局面を想定し、読みのバリエーションを増やしたいと意欲をみせる。

将棋と向き合う上で常に大切にしていることがある。「将棋は楽しいと思う気持ちをいつも持つようにしています。将棋が強い人は皆、そうだと思う」と説明し、「負けるとアマチュアのときよりもつらい。でも楽しくないと思うと、研究にも実が入らない」と打ち明ける。先を読む力を鍛え、勝つことが増えればさらに将棋が楽しくなると考えている。

将棋は複雑で、考えて勝つ喜びがある半面、一手を間違えて敗れる怖さもある。「負けず嫌いだから負ければ悔しい。それでも、指した手の責任はすべて自分自身にあるから、結果には納得できる。すべて自分の責任という要素も将棋の魅力だと思う」と語り、厳しい勝負師の一面をのぞかせた。

形勢が相手に傾いても粘り強く戦うことを常に心がけている。ライバルのように意識している女流棋士はいないが、将棋部の後輩の内山あやさんを含めた同世代の活躍は刺激になり、負けたくないという気持ちがわくという。

「一歩一歩強くなり、いずれは女流のタイトルを取りたい」と未来を見据えている。

宮澤紗希・女流2級

みやざわ・さき。東京・広尾学園高卒、法学部4年。師匠は戸辺誠七段。8月30日のデビュー戦で勝利するなど、女流棋士としての戦績は2勝3敗(11月2日現在)。2016年度全国中学生選抜 選手権女子の部で優勝し、2018年度と2019年度の全国高校選手権女子個人を連覇。2022 年度は学生女流名人戦で優勝した。

自身が小学生の頃、「女王」のタイトルを保持していた上田初美・女流四段があこがれであり、目標の存在。当時、サインしてもらった駒入れを大切にしまっているという。

「本格派の棋士を目指す」
女流初段 内山あやさん

 

理工学部数学科で学ぶ1年生の女流棋士。「答えが明確に出るのでわかりやすい」と、小さい頃から算数が好きで得意だったという。「数学の問題を解くときの『論理的に考えること』が、先の手を読む将棋に通じるものがある」と話す。

将棋の魅力を尋ねたところ、少し意外な答えが返ってきた。もちろんプロの勝負師として将棋の世界と向き合っているのだが、「勝ち負けにこだわるより、(将棋の手を)考えることが好き。考えることが楽しい」という。

取材中に、「勝ち負けよりも、考えることが好き」という言葉を何度か繰り返し聞いた。「何年も研究を重ねた努力が花開くときが来る。その可能性はある」と語る一方で、「将棋が好きという思いの延長線上で、プロ棋士になった。私はそんなに “ 壁 ” に当たってきたタイプではないんです」と自らを分析する。ライバルと感じている棋士もいないという。

新人の登竜門とされる「白瀧あゆみ杯」に優勝し、累積の勝ち数も増えて、プロとなったのは中央大学高校1年生のときだった。個性的な天才肌の勝負師と感じさせる独特の雰囲気をまとった女流棋士だ。

今年度、想定以上の勝利数

今年度の戦績は18勝10敗(11月2日現在)。「トーナメント戦で想定以上に勝てて、対局数が増えている。勝って初めて力量の向上も実感できる」と手ごたえを感じている。経験を積むために必要な対局数は高校時代の倍くらいに増えたという。

将棋の面白さについて、「最善の手が何なのかは、このAⅠ(人工知能)の時代でも解明されていない。将棋は戦法がいろいろあるのがいいと思っていて、好きな戦法を見つけるのも将棋にのめり込むきっかけになるかもしれない」と教えてくれた。対局のたびに同じ戦法を繰り返していくことが力量を上げる近道だとも。

同じ将棋部の先輩、宮澤紗希さんが女流棋士の道に進んだことには、「昔から知っている間柄ですし、これからも長いお付き合いになります。素直にうれしい」と喜ぶ。

自身は「受けの棋風」が特長だ。昔からある居飛車党で、相手の攻めをしのぐ手を間違えない将棋を得意としている。さらに飛躍するために序盤戦の知識を身に着けることを挙げ、そのためには棋譜の勉強や、実戦経験の積み重ねが大事になるという。

奇をてらった指し方をしない本格派といわれる棋士像を理想として目指している。

内山あや・女流初段

うちやま・あや。東京・中央大学高校卒、理工学部1年。師匠は北島忠雄七段。2020年9月に 第14回白瀧あゆみ杯争奪新人登竜門戦で優勝、同年12月に女流棋士となった。「大きな目標 を掲げるのは私には向いていないから、こつこつと対局数を増やし、クラス(段位)を一つひとつ上げていきたい」と謙虚に語る。将棋も数学も好きだから続けられるという。

「将棋が話題になることが増えた」「とにかくすごい」
藤井聡太八冠の存在

将棋界を超えて大きな注目を集めている藤井聡太八冠の存在について、内山あやさんは「将棋が話題になることが増え、藤井八冠のもたらした良い影響は大きい」と受け止めている。さらに「藤井八冠の存在をきっかけに、一人でも多くの人が将棋に興味を持ち、それぞれの棋士のファンとなってくれたらうれしい」と話した。

法学部の友人から時折、藤井八冠のことを尋ねられるという宮澤紗希さんは、「とにかくすごい」としか答えようがないという。「圧倒的な強さを上手に説明できない」と驚いている。

GO GLOBAL!
スポーツ・文化活動
中大スポーツ
Connect Web
Careers