2022.04.15

猫と暮らす前に読む絵本『ぼく わからないよ』
「命の大切さ」届けたい
クラウドファンディングで作成した300冊寄贈
国際経営学部4年の鈴木日向子さん

  • 中大ニュース
  • きょう・あした

「猫の置かれている残酷な現実を分かりやすく子供たちに伝えたい」

 

不妊手術をしていない愛猫の多頭繁殖に伴う飼育崩壊や殺処分の増加という現実を知ってもらおうと、国際経営学部4年の鈴木日向子さんが、電通が企画したインターンシップを活用して、猫を飼う前に読む絵本を作成しました。計300冊を学校や動物病院などに寄贈するプロジェクトを進めている鈴木さんは、「命の大切さを考え、猫を飼う責任を前もって知ってほしい」と訴えています。

ほうっておけないこと= 「残酷な現状を知らないこと」

 

『ぼく わからないよ』と題した絵本作成の経緯はこう です。

鈴木さんは2021年9月から、「自分のほうっておけないことをクラウドファンディングで解決する」という電通の「アイデア実現インターンシップ」に参加し、以前から携わっていた保護猫活動に役立つことをしようと、絵本の作成を発案したそうです。

 

中学時代からの友人の佐々木和奏さん(相模女子大4年)と一緒に、「猫を飼う前の子供たちに向けて」という意味の「ねこまえプロジェクト」として寄贈の準備を進め、2人の地元である神奈川県西部(小田原市、秦野市、湯河原町、真鶴町)を中心とした幼稚園、保育園、小学校、動物病院などのほか、岩手、埼玉、静岡、大阪、岡山の各府県の団体にも、すでに届けています。

 

アイデア実現インターンシップでは、「本当の課題は何か?」「課題を深掘りすること」を突き詰め、解決したい課題を「猫が置かれている残酷な現状を多くの人が知らないこと」と設定しました。電通の社員から「猫の虐待や殺処分自体が課題なのだろうか」というサジェスチョンを受け、「責任をもって飼わないことが課題だと気づいた」といいます。

 

飼い始めてから育てることの大変さに気づき、最後まで世話をできない根本の原因は、猫のことを知る機会がないからであり、それを知る絵本を届けようと思ったのです。

飯田ゼミでの学び、サイト作成に生きる

 

実際に猫の繁殖力は高く、「ペットとして飼い始めた猫を捨ててしまう」→「捨て猫の増加」→「においなどの苦情」→「殺処分の増加」という悪循環の原因を断ち切るため、この現実を知らないでいることを「ほうっておけないこと」として掲げ、プロジェクトを進めました。

 

自治体の首長や教育長、議員、教育委員会、各学校の校長らとの寄贈に関する交渉、スケジュール調整のほか、予算管理、クラウドファンディングを呼びかけるSNSの運用などに、佐々木さんとともに同時進行で取り組みました。鈴木さんは「周囲を巻き込んで協力してもらうための戦略立案力や実行力が身についた。学生として、なかなか得られない体験ができた」と感じています。

 

ねこまえプロジェクトのサイトのテーマカラーの選定や、コピーの書き方、言葉の力など、国際経営学部の飯田朝子教授のゼミでの広告研究に関する学びがサイトを作成する際に生かされました。

 

子供に伝わるような分かりやすさ、心を動かす力、長すぎないという点が、「ゼミで学んでいることと絵本に共通していると感じた」と、鈴木さんは話しています。

猫と暮らす前に読む絵本『ぼく わからないよ』

絵本の中で鈴木さんが好きなシーン。「絵がかわいいから」と理由を教えてくれた

 

ペットショップで買われ、飼い主に捨てられてしまった猫と、野良猫が出会い、2匹の猫がどう生きていくかを描いたストーリー。24ページ。「猫にも感情があることを知ることができる」「不妊手術をした猫の存在を知ることができる」「命の大切さを考えるきっかけになる」という絵本を目指して作成した。鈴木日向子さん・佐々木和奏さん作、絵はプロイラストレーターの藤本雅子さんが描いた。

鈴木日向子さん

 

すずき・ひなこ。神奈川・横浜国際高校卒、国際経営学部4年。保護猫活動を行う父親に協力する中で、猫の現状に危機感を覚えるようになった。今回のプロジェクトの経験は「職業選択や仕事をする際に必ず生きてくる」と感じている。将来は社会貢献や人助けに結びつくような職業に就きたいという。

 

 

 

ねこまえプロジェクト

 

プロジェクトへの資金調達を目指したクラウドファンディングは、2021年10月15日に募集を開始。95人から目標額12万円の5倍を超える68万円の支援を受け、11月30日に終了した。調達した資金は、絵本の材料費や送料、試作品づくり、宣伝、作家への謝礼などに使われた。

 

プロジェクトのサイトでは、TNR活動と呼ばれる保護猫活動についても詳しく紹介している。TNRは、トラップ(Trap=捕獲)、ニューター(Neuter=不妊手術)、リターン(Return=元の場所に返す)の頭文字。プロジェクトリーダーの鈴木さんは、捕獲から不妊手術までの猫の世話や、譲渡会の宣伝や開催当日の手伝いなどを約3年前から行っている。

 

ねこまえプロジェクトのサイトはこちらからご覧になれます。

http://camp-fire.jp/projects/view/496249

 

クラウドファンディング

 

クラウド(群衆)とファンディング(資金調達)を組み合わせた造語。個人や団体がインターネット上で、不特定多数の人に対しプロジェクトや事業などへの資金提供を呼びかけ、賛同した人から資金を調達することを指す。購入型、寄付型、投資型などの種類がある。

GO GLOBAL!
スポーツ・文化活動
中大スポーツ
Connect Web
Careers