2022.04.06

フィニッシュテープを持ちながら泣きそうに…
「駅伝チームの皆さん、ありがとう」
関東学連学生役員の八尾あす香さん(2022年3月商卒)

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2022年1月の箱根駅伝最終10区、中大の井上大輝主将が総合6位で大手町のゴールに飛び込んだとき、フィニッシュテープを手にしていた一人は同じ中大生だった。関東学生陸上競技連盟の学生役員、八尾あす香さん(2022年3月商学部卒)がその人。大学時代の4年間、箱根駅伝をはじめとする、さまざまな陸上競技大会の運営、準備に携わり、学生アスリートが活躍するひのき舞台を陰で支え続けた。

「何かあれば私のミス」
小田原中継所で重責担う

大学3年時に小田原中継所で(八尾あす香さん提供)

「シード権を取ってくれて、フィニッシュテープを持ちながら泣きそうになりました。駅伝チームの皆さんにありがとうと伝えたい」

 

一番近くで目にしたシード獲得の瞬間をそう振り返った八尾さん。駅伝チームに直接かかわることはなかったものの、中大のユニフォームを着て、走る姿を見るだけで元気をもらえた。「学生役員として皆のためにも良い大会にしようと頑張れました」と感謝する。

 

箱根駅伝の開催当日は4年間とも、4区から5区、6区から7区へとランナーが襷(たすき)をつなぐ小田原中継所(神奈川県小田原市)の業務に就いた。とくに3、4年時は中継所の総括(主任)を務め、「何かあれば私のミス」という重責を担った。

 

ナンバーカード(ゼッケン)を忘れた選手への対応や、出走直前なのに姿が見えない選手を拡声器で声を張り上げて探し回ったり、襷をつないで倒れ込んだ選手を搬送する救急車を手配したりと、「胃が痛くなるような経験」も少なくなかった。

 

このほか、コースを管轄する警察署、中継所や待機スペースを提供してくれる企業、芦ノ湖畔の関係者、鉄道会社、バス会社との打ち合わせも大切な業務。開催当日は交通規制や走路員への指示なども任された。

 

選手全員が7区に襷をつなぐと、小田原中継所の学生役員は例年、新幹線を使ってゴールの大手町に向かい、業務を手伝う。フィニッシュテープを持つ“大役”は八尾さんが務めることになった。

「1秒でも速く」襷つなぐ選手に心打たれる

強豪校の硬式テニス部で活動していた中学3年のとき、大事な試合で負けて全国大会への連続出場が途切れ、心に大きな穴が開いた。部活を辞めようかと悩んでいたが、もう一度頑張ろうと思わせてくれたのが、テレビで見た箱根駅伝のランナーの姿だった。

 

チームのために1秒でも速く襷をつなごうとする姿に心打たれた。それまで陸上競技とは無縁だったが、将来は箱根を走る選手のために何かをしたいと思うようになった。

 

中大には、「スポーツ・健康科学」の分野で、駅伝チームにモチベーションビデオを提供するプログラムに取り組む村井剛・法学部准教授のFLPゼミの存在を知って進学し、2~4年時に村井ゼミに所属した。

 

モチベーションビデオは、レース映像やプライベート映像などを編集して、選手たちがレースに向けて気持ちや意識を高められるようにと鼓舞する内容。実際に練習風景の撮影も行ったという。

 

「箱根駅伝にかかわりたい」と学生役員になったが、1年生で最初に業務に携わったのは関東インカレだった。大きな規模の大会を学生主体で運営していることに圧倒された。トラック・フィールド種目を間近で見て、「駅伝以外も面白い」と感じた。

フィニッシュテープを持ってリハーサル(八尾あす香さん提供)

 

箱根開催を発表した後、「コロナ禍なのに開催するのか」というクレームの電話を受け取ることが多かったが、こんな経験もした。たまたま八尾さんが受けた電話で、病気を患っているという高齢の男性から、「次の大会が見られるかは分からない。開催してくれてありがとう」と言葉をかけられた。温かい言葉に勇気づけられた。

 

常に心掛けていたのは、感謝の気持ちを忘れないということ。さまざまな大会は、支えてくれる大勢の人たちがいてこそ開催できる。活動の支えになったのは、役員同期の7人の存在だ。全員の大学が異なり、役員にならなければ知り合えなかった仲間が、互いを励まし合ってきた。

 

「学生役員を務めて、普通の学生生活ではなかなか得られない経験ができました。4年間のすべてが私の財産です」。八尾さんは静かにそう話している。

八尾あす香さん

 

兵庫・雲雀丘学園高校卒、2022年3月商学部卒。中学、高校と6年間、硬式テニス部に所属。関東学連の学生役員になったのは、読売新聞社と関東学連が運営するサイトで紹介されている、箱根駅伝を支える学生の思いを記したコラム「駅伝ひろば」を読んだことがきっかけだった。中大卒業後は福祉関係の仕事に就く。陸上競技の審判員の資格を取得しており、将来にわたって箱根駅伝をはじめとする大会運営に携わりたいと考えているという。

 

 

 

関東学生陸上競技連盟の学生役員

 

さまざまな陸上競技の大会運営を支える学生役員は、幹事長、副幹事長、会計、常任幹事、幹事の計35人(2021年度)。業務はエントリー受け付けや出場資格の審査、大会で使用する備品の確保、会計業務、各地の陸上競技協会に依頼して審判員を募ったり、プログラムを作成したりと多岐にわたる。八尾さんは3、4年時に会計責任者の重責を担った。

 

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