2021.07.05
聞き手 学生記者 西沢美咲(総合政策2)
学生記者の西沢美咲さんと河合久・新学長
中央大学の河合久・新学長に、「HAKUMON Chuo」学生記者の西沢美咲さん(総合政策2)がインタビューしました。
「勇気をもって何かに参加し、行動することが大切」「さまざまなことを知り、刺激し合うのが学生の良さであり特権だ」「生涯の友を見つけてほしい」―。河合学長は現役学生に熱いメッセージを送り、自らの学生時代などについても大いに語ってくれました。
(インタビューは学長就任日の5月27日に、感染症対策に配慮しながら、多摩キャンパス学長室で行いました)
―――よろしくお願いします。まず、私たち現役の中大生に求めたいものは何でしょうか
河合久学長 何といっても志を持ち続けて、気概を表に出していってほしい。中央大学を表す『質実剛健』という言葉は、決して“男社会”という意味ではなく、「健康そのものであり真面目で頼りがいがある」という意味。中央大学の歴史を顧みても、昔の学生も今の学生も同じようなイメージがあります。各学部のゼミや研究室、部活やサークルなどで先輩から後輩へ伝授され、受け継がれている学生気質であると思います。ただ、気概や志を持っているだけでは十分ではなく、心配や不安はあっても勇気をもって行動に移してほしい。他人の目や結果を意識したりせず、まずは何かに参加をし、行動できるような中大生になってほしいと思います。
―――新型コロナウイルスの影響で授業やさまざまな活動に制約のある学生が多いと思います。コロナ禍では「行動したい。何かしたい」と思ってもできないことがあると思いますが、どのようにして行動していけばよいと思いますか
河合学長 コロナの影響で、学生も教員も大きな制約下にあり、本来は大学で得られるようなものが得にくくなっていることは非常に残念に思います。しかし、学生同士でオンラインのコミュニティーを作ったり、先輩がWebexを使って後輩に呼びかけを行ったりとコミュニケーションを図り、いろいろな形で気概や志を維持できるはずです。
大学からの情報をキャッチすることも必要でしょう。たとえばコロナ終息後に留学したいとなれば、選考はすでに始まっているかもしれない。来年度から受講したいゼミがあるなら、今の段階から、先輩のアドバイスや国際センターからの情報を含めて調べる必要があります。それでも心配な面があり、もし前に進めない場合は、悩まずに学部の事務室や誰でもいいので打ち明けてみることも必要だと思います。
私自身、大学生になったとき、いろいろな地域から集まった人たちの話を聞いて、「今までの自分の世界はなんと小さかったのか」と感じました。さまざまなことを知り、互いに刺激し合う。これが大学生の良さであり、特権であると思います。対面できるに越したことはないですが、制約の中でも頑張ってみることが大切でしょう。新たな発見や将来の進路に影響するようなことも見つかるかもしれません。
―――コロナ禍の現状からみて、対面授業や登校してのキャンパスライフの楽しさ、その意義についてはどのように捉えていますか
河合学長 対面授業やイベントも制限を受ける。それでも何かを企画することは楽しいと思います。みんなで声を出し合って、いろいろな制約の中でも努力をして、難しいと思うが楽しみを見つけてほしい。コロナで悩んでいるのは学校だけではなく、企業や役所なども苦労している。皆さんが社会に出たときに制約に向かってチャレンジするという点では、社会の先輩たちと共通することをやってきたということになる。学生時代の意義として捉えるのはふさわしくないと思いますが、結果として結びつくでしょう。まずはやってみる、そして楽しみを見つけられるように前向きに頑張っていってほしい。
―――「中央大学卒」と卒業生が誇りに思えるところは何でしょうか
河合学長 卒業生は、伝統的には法曹界や会計などの専門職に就くことが多いですが、それだけではなく経済活動を支えているあらゆる分野の民間企業、行政を支える公務員、またスポーツや芸術、文化の担い手として目を見張る活躍をしている人も多い。自分のゼミの卒業生の活躍や、名刺交換をした際に卒業生と出会ったときに社会でのつながりを感じ、頼もしく、そしてうれしく感じます。私にとっては、(卒業生が)著名であることや目立った活躍をしていること、世に知られているということはあまり意味がありません。もちろん著名な方は人知れず努力をなさっているからこそ注目される人になっている。けれども、そうでない方もいろいろな分野で社会に貢献している。社会での貢献度が高い人の中に、中大生が多いと感じます。私自身が中央大学の卒業生であり、教員であることに誇りを持っています。卒業生に接すると、この方々が中大生でよかったと思える人が多い。今の在学生の皆さんにもそうなってほしいと期待しています。
―――中央大学をどのような大学にしていきたいでしょうか
河合学長 中央大学は実績と伝統があり、今でも十分にプレゼンス、存在感があり、社会における評価も高い。これは136年の歴史の中で、先人たちが築き上げてきた努力の成果があるからです。将来の中央大学の価値を作るのは、実は今いる学生です。大学は学生が作る世界であり、いろいろな人によって作られるユニバーシティーであると思ってほしい。それを支えていくのが私たち(教職員)の仕事であり、学生の皆さんが中央大学で学び、価値を高めていく手伝いをする。そのためには、中央大学がもっと開かれるべきだと思う。社会に対応するように改革や変化をさせていく努力をする。学生のニーズにしっかり応えられるようにしていかなければならないと考えています。学生の皆さんは、学校を作る担い手であり、私にとっては頼りがいのある後輩でもあります。
―――2023年の法学部の都心移転について。法学部は知名度があり、移転によって多摩キャンパスの“価値”が下がるという懸念があります。移転後の多摩キャンパスの魅力をどう形作っていきますか
河合学長 今のままでは魅力や求心力が減る可能性があり、そうならないように求心力のあるキャンパスにしていかなければなりません。学内外のさまざまな人の意見を聞き、これから中身を検討していきますが、多摩キャンパスに新たな学部や連携組織を作っていく必要もあると思います。中央大学を高めていくための検討をすぐに始めていきたい。また、新たに開設された国際経営学部と、経済学部や総合政策学部、商学部との違いが明確にできていない。それを自覚し、学部の関係性がどうあるべきかも再考していく必要があります。
―――学生たちに4年間の学生生活で得てもらいたいことは何ですか。また、どんな学生生活を送ってほしいでしょうか
河合学長 人との関係を重視するような学生生活を送ってほしい。自分と他者との関係を自覚することから人生観を磨いてほしい。大学生はそれを考えていい世代です。精神論になってしまうけれど、そういった気持ちを持ち続けてほしい。中大生はよく勉強をしますが、ただ学力が高いというだけでなく、いろいろな活動を通じて自分自身からどうやって情報を発信するか、情報発信能力やコミュニケーション能力など、自分が人として優れている点を磨いてほしい。また、学ぶ姿勢は大学生のうちだけでなく、卒業してからも維持してほしい。「たゆまず学び続ける姿勢」です。可能であれば良い人間関係を築き、生涯の友を大学で見つけてほしいと思います。
-――中央大学の“ウリ”は何でしょうか。中央大学に入学すると、どんな良いことがありますか
河合学長 しっかり学ぶことができ、関心事を追求できる。教員の面倒見がよく、しっかりきちんと教えてくれる。何かやりたいと思ったら、どこかに必ずその専門家がいる。学部、学科を超えて構わないので、そういった方々と触れ合う機会があるのは良いところです。しかし、受け身では得られないと思います。与えられたことだけをやるという姿勢だと良さに気づけない可能性がある。気概を持って高い志を持った人は、中央大学の本来の良いところを享受できると思います。大規模な大学だが面倒見がいいというのは、教職員を含めて中央大学に長く受け継がれてきた「家族的情味」の表れでもありますね。
―――ここが中央大学の弱点ではないかと感じているところはありますか。それをどのように工夫して改善しようとお考えでしょうか
河合学長 立地が都心なら違うのかなとも思います。そういう意味で郊外型というのは一つの弱点です。法学部が移転した後の多摩キャンパスを考えるのと同じで、弱点を払拭するように「新生・多摩キャンパス」、新たな組織や学部を視野に入れた改革をする必要があります。また、学部の“囲い込み”があるように思います。今は閉鎖的で学部間の壁が厚い。FLPなどの制度はありますが、なかなかぬぐえない。仕組みの問題ですから、教職員の努力で変えていきたい。壁を薄くすることで恩恵を受けるのは学生たちですから。学部間が開放されれば、いろいろな勉強ができたり、学部を超えていろいろな先生方と接したりしていけると思います。
―――河合学長はどのような学生生活を送りましたか。もっとも印象に残っていることや、当時の悩みなどがあれば教えてください
河合学長 私は(都心の)お茶の水校舎の時代に入学し、2年時から多摩キャンパスで過ごしました。当時は多摩への移転反対運動もあり、大学構内がロックアウトされたり、試験はレポートに変わったりと、現在と原因は異なりますが、少し似ている状況でした。どうなるのかと不安に思っていたところ、救ってくださったのがゼミの根本光明教授(当時)でした。まだパソコンも普及していない時代でしたが、情報化教育が盛んになりかけた頃で、ゼミでは簿記もコンピューターのことも学びました。根本先生は伝票会計を普及させた第一人者です。会計学はこんなにも扱う領域が広いんだと、素晴らしい先生に教えられ、魅せられました。根本先生がいたから、この道に引き込まれたんです。お酒にもよく連れていってもらいました(笑い)。
勉強は本気でやろうとすると辛い。当たり前です。経験を積んでいかないと勉強は面白くならない。でも、研究することがやがて教えることに結びついたときの喜びは何にも代えがたいと思います。
河合久学長
かわい・ひさし。1958年生まれ、東京都出身。中央大学商学部会計学科卒業、同大学院商学研究科博士前期課程修了。中央大学商学部教授、商学部長、副学長、国際経営学部長などを歴任。5月27日に学長就任。中央大学附属高校時代はスキー部に所属。大学時代は家庭教師のアルバイトの評判が口コミで広まり、中学生に頻繁に教えていたという。
河合久学長へのインタビューは、私にとって多くの学びがあり、貴重な経験になりました。学生記者としての活動はオンラインが多く、対面取材は今回が初めてで緊張しました。カメラマンを含む広報室の方々が何人もいて、学長室での本格的な取材でした。
インタビューをしていくうちに、河合学長の話しやすく優しい人柄、気さくな受け応えで場が和み、私自身も打ち解けて話ができました。学生の気持ちに寄り添い、在学生である私の話に耳を傾けてくださり、ありがとうございました。
インタビューを通して印象に残っているのは、コロナ禍でさまざまな制約がある中でも、「やってみることが大切である」ということです。例年とは異なる状況で学生生活を送る在学生、そして私の心に響く言葉でした。
行動することには勇気がいります。しかし自分から積極的に飛び込んでみることで、新たな発見や出会い、経験ができると思いました。私もコロナ禍の中でも学生記者に応募して、こうして取材をさせていただいていることや、オンライン新歓に参加したことでサークル活動を行うことができています。「自分から動く」という姿勢が大切だと実感し、まずは与えられた環境の中でできることをやるべきだと強く感じました。受動的にならずに、大学や先輩からの情報をキャッチし日々の行動をしていくことが大切だと思いました。
もう一つ、インタビューの中で印象に残っている言葉があります。それは「たゆまず学び続ける姿勢」です。河合学長は、中大生はよく勉強するとおっしゃっていました。学生生活では、授業やサークル活動などで多くの学びがあります。そして、中央大学には学びに最適な環境が整っています。その環境を利用して今後の人生で役に立つような学びを吸収していきたいです。
河合学長の話にもありましたが、中央大学の価値を作るのは学生である私たちなのだと自覚し、胸を張って前向きに学生生活を送ることが私たち中大生の使命でもあると感じました。
(学生記者 西沢美咲)