2024.07.17
学生記者 大山凛子(法4) 近藤陽太(経済4) 島田莉帆(文4) 吉田未来(理工3)
グローバルな視点で挑戦し続けられるマインド、姿勢を学生のうちから培ってもらおうと、中央大学は2024年6月22日、「グローバル・アントレプレナーシップ」キックオフシンポジウムを多摩キャンパスで開催した。
「アントレプレナーシップは一般に起業家精神と捉えられているが、起業する人だけでなく、挑戦する人全てがアントレプレナーである」。聴講した学生がそんなふうに意識や姿勢を変革し、挑戦のヒントを得られた有意義なシンポジウムとなった。「HAKUMON Chuo」学生記者4人が聴講した思いをつづった。
グローバル・アントレプレナーシップ教育に関する示唆に富んだシンポジウム=2024年6月22日、多摩キャンパス「FOREST GATEWAY CHUO」3階ホール
今枝宗一郎文部科学副大臣(オンライン登壇)、宮坂学東京都副知事、伊藤羊一武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長の3人が登壇した第1部は、アントレプレナーシップ教育の意義や起業におけるスタートアップ支援などを議論。第2部は、中大卒業生を含む国内外の一線で活躍する起業家が、自身の経験を踏まえてアントレプレナーシップの重要性や、必要な意識・姿勢などを話した。「社会の変革に挑む中大生」と題した第3部では、学生起業家や個人で活動する現役中大生、中大附属高校の生徒らが活動発表を行った。
第1部で、武蔵野大の伊藤学部長は、アントレプレナーシップを「志と倫理観に基づき、失敗を恐れずに踏み出し、新たな価値を創造するマインド」と定義し、大切な姿勢として「夢を考えるだけではなく語る」「人の夢を笑わない。応援する」「行動する。失敗したら改善しよう」の3点を挙げた。
宮坂副知事は「アントレプレナーシップで一番大事なのは夢。事業計画は後からついてくる」と訴え、若い起業家を輩出する東京都のコンテスト「東京スタートアップゲートウェイ」を紹介。「BORN TO DREAM」をうたうコンテストは400 字のアイデアで応募できると呼びかけた。
スクリーンに映し出された言葉に勇気をもらったと感じた学生も少なくなかった
シンポジウムに参加し、非常に多くの学びと刺激を受けた。シンポジウムでは、世界的な視野を持った起業家精神の重要性をテーマに、多くの起業家や学生プレゼンターが参加し、多彩な視点からアントレプレナーシップについて議論が行われた。
特に印象深かったのは、日本のアントレプレナーシップ教育に関する指標が137カ国中26位であることを示す統計(2019年)だった。この数字から起業家精神の向上が求められていると感じた。東京が再び世界の中で輝きを取り戻すためには、挑戦者をたくさん生み出し、応援し、失敗した人をリスペクトし、そして世界中の人が日本で挑戦し、挑戦者が世界に羽ばたくのを全力で応援する必要がある。そんな環境を形成していくためにもアントレプレナー教育が大事なカギを握っている。
シンポジウムでは、アントレプレナーシップ教育を通じて得られる多くのスキルとマインドセット(思考の傾向)が強調された。具体的には、探求心、判断力、実行力、リーダーシップ、そしてコミュニケーション能力などが重要であると指摘され、単なるビジネススキルの習得だけでなく、人生全般において重要な姿勢を育むものであることを学んだ。
「常に学び続け、変化を恐れずに挑戦する姿勢」が、今後の自分のキャリアや就職活動に大いに役立つと感じている。
昨今、日本のさまざまな分野の未来についてネガティブな見通しが支配的である。その現状を変えていくために若者のエネルギーが重要であるのは言うまでもない。シンポジウムでは高校生も含めた学生プレゼンターのエネルギッシュな姿勢に強い感銘を受けた。彼らの柔軟な発想と積極性はこれからの社会をけん引する力となることを実感した。それと同時に、私自身もこれからの社会に貢献できる人材になりたいという気持ちが芽生えた。
自身の目標に向かって日々、トライアンドエラーを続けていくことの重要性を再認識できた。シンポジウムを通じて得た知識と経験をもとに、失敗を恐れずに積極的に前進したい。また、挑戦する人を全力で応援し、失敗に寛容な人になっていきたい。
アントレプレナーシップという言葉は起業家を連想させるが、必ずしもそうではない。ビジネスでなくても、高い志を持ち新たな価値を創造しようとするマインドは、生きとし生けるものが必要とするスキルである。
第1部で登壇した今枝宗一郎文科副大臣、宮坂学東京都副知事、伊藤羊一武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長の3人が口をそろえて語ったのは「即行動」である。やりたいことが明確でなくてもいい。まずは今この瞬間から行動しよう。私は、新たなアイデアが浮かんでも、いざ行動するとなると立ち止まってしまう。まるで自分自身に言われているような気がした。
一歩を踏み出し、人と違うことをするには勇気が必要だ。しかし、周りから浮くことを恐れてはいけない。自分自身がどうなりたいかに焦点を当ててみよう。周囲はその頑張りを応援することが大切である。
シンポジウムでは、現役中大生の起業家をはじめ、中大附属高校の生徒らが活動発表する機会が設けられていた。活躍している同世代の学生の皆さんはとてもまぶしく、志を形にしている姿に感銘を受けた。そして、吸収した知識やアイデアを“出力する”ことの重要性に気づかされた。
アイデアはあっても行動しないままでいる方が楽である。行動しなければ安全が保障されているからだ。しかし、行動して、失敗し、学ぶ。その結果、想像もしていなかった出会いやヒント、結果が生まれるかもしれない。
なぜ今、中央大学でアントレプレナーシップのシンポジウムが開催されたのか。
日本ではここ数年、若手起業家の熱が高まっている。起業に関する大学の学部創設や起業サークルの活動も増えている。しかし、中央大学の現役生、または出身の起業家の数はまだまだ多いとは言えないだろう。
今回登壇した、東南アジアを中心とした海外の人材派遣を手掛ける「ASEAN HOUSE」のCEO、佐々翔太郎さん(2019年法学部卒)に、中大出身の起業家仲間やコミュニティーの存在を尋ねたところ、佐々さんが知る限りでは人数は限られると聞いた。
ユニバーシティメッセージに「行動する知性。」を掲げる中央大学の学生だからこそ、アントレプレナーシップに真摯に向き合わなくてはならない。私はそう痛感した。
壇上の若手起業家に、学生から数多くの質問が投げかけられた
「アントレプレナーシップは自分には関係のない話だろう」というのが参加前の正直な気持ちだった。私は4年生で、これまで起業を考えたことはない。卒業後は民間企業に就職する予定だ。ゆえに学生記者の取材として、ある意味割り切った気持ちでシンポジウムに参加した。
ところが、シンポジウムを通して私のアントレプレナーシップに対する認識は大きく変わった。それはアントレプレナーシップが単に起業家精神だけではなく、新たなことへの挑戦や夢を語ることをも意味するからだ。
特に新鮮だったのは、第2部の「トップランナー達の挑戦」だ。大企業への所属を経て、あるいは所属しながらアントレプレナーシップを発揮している方々が登壇した。
その中でも、社内スタートアップ制度を利用して起業した山本将裕さん(NTTドコモ)、小西好美さん(JR東日本)の話に感銘を受けた。企業に入ってからもアントレプレナーシップを発揮するお二人の活動は非常に興味深いものだった。
最も印象深いのは「スタートアップだけではなく、大企業にも挑戦と成長が必要」という言葉だ。日本の大企業の数は企業全体の0.3%に過ぎない。しかし従業者数では31%、付加価値額(製造業)は47%を占める(国の2006年統計による)。1990年代以降の経済成長の停滞、いわゆる“失われた30年”が続く日本が国際的競争力を取り戻すには、これら大企業の果たすべき役割は大きい。
私をはじめとして、大学を卒業し、一つの企業に定年まで勤めることこそが理想と考える日本人はいまだ少なくはないだろう。ならば、置かれた場所で、たとえば大企業でアントレプレナーシップを発揮すればいいのではないだろうか。
社内スタートアップ制度を利用するもよし、新しいプロジェクトに挑戦するもよし、さらに同僚との飲み会の席で自分の夢を熱く語ることすらも、立派なアントレプレナーシップといえるだろう。小さな思いが、同僚に、組織に、そして社会に伝播すれば、未来は少しずつでも明るく変わっていくのではないだろうか。
私も企業の中で、たとえ小さくても挑戦を重ね、夢をかなえていきたい。
「アントレプレナーシップは特別な人のものじゃない。みんなのものだ」
私は、宮坂学東京都副知事のこの言葉に、ある決意をした。大学2年生の頃から、将来起業したいという夢を持つようになった。そのときから、今できることを考え、さまざまな挑戦をしてきたが、起業となるとハードルが高かった。
資金や経営はどうしていくか、そもそも自分のアイデアにどれほどの価値があるのか…。そうしたことを考えるたびに不安になり、気づくと4年生になっていた。だからこそ、副知事の言葉が「私でもいいんだ、私でもなれるんだ」と思わせてくれた。
また、起業する人だけでなく挑戦する人全員がアントレプレナーであることを知り、小さな挑戦でも、やりたいことには全力で生きていこうと決めた。武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の伊藤羊一学部長が、「挑戦しても死なない」と話されたのも印象的だった。確かに今の世の中、何かに挑戦してそれが失敗しても、それだけで死ぬことはない。そう思った
ら、何も怖いものはないと思う。
「人間は迷ったらマイルドな方にいってしまうもの。だからこそ100 回のうち1 回でいいからワイルドな方を選べ」という考えにも感銘を受けた。就活の際、自分のことを「飛びつきの挑戦心と勇敢さを持つ人懐っこいライオンだ」とたとえたことがあった。やりたいことはとにかくやり、自分で選択・決定したことには必死に立ち向かって完遂する。
それが自分の長所だと感じていたが、シンポジウムに参加して、自分はまだまだだと感じ、今後もっともっとワイルドにやりたいことへ飛びつこうと思った。
東京都には、起業を志す人にさまざまなサービスを提供する「TiB」や「SusHi Tech Tokyo」など、たくさんの取り組みやイベントがあることも知り、参加しようと決めた。夢は語ることが大切、1人で考えていてもしらけてしまう。だからこそ多くの人と共有し、応援し合い、ブラッシュアップすることで、私自身も、そしてその仲間たちもきっと、なりたい自分へ、叶えたい夢へ、変えたい未来へ、より良い社会へ、進んでいけるだろう。
だからこそ、ここで決意し宣言する。「私はアントレプレナーになる!」。今これを読んでくれた皆さんが証人になってくれることで、これから悩んだとき、苦しんだときに踏ん張って、頑張ることができる。そしていつか、皆さんのもとに私の挑戦が届くよう、今この瞬間から、一歩ずつ、夢をつかむ冒険を始める。
会場のスクリーンに映し出された言葉の一つ
日時:2024年6月22日(土)13 : 00~17: 00
場所:多摩キャンパス「FOREST GATEWAY CHUO」3階ホール
オンラインで同時配信
総合司会:国山ハセンさん(ビジネス映像メディア「PIVOT」番組プロデューサー、2013年商学部卒)
《第1部》「なぜ今、アントレなのか?」
今枝宗一郎・文部科学副大臣=オンライン登壇
宮坂学・東京都副知事
伊藤羊一・武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長
《第2部》「トップランナー達の挑戦」
佐藤孝徳さん(株式会社Shippio代表取締役CEO)
佐々翔太郎さん(株式会社ASEAN HOUSE CEO)
濱松誠さん(SUNDRED株式会社チーフコミュニティデザイナー)
山本将裕さん(株式会社 RePlayce 代表取締役CEO)
小西好美さん(JR東日本マーケティング本部くらしづくり・地方創生部門新規事業ユニット)
《第3部》「社会の変革に挑む中大生」
学生起業家、外部ビジネスコンテスト入賞者(団体)、個人で活動
する現役の中大生、中大附属高校の生徒らが活動発表
主催:中央大学グローバル・アントレプレナーシップ教育推進委員会