2022.08.26

完全オンラインの英語劇『魔法にかけられて』創作
中大英語学会が法大、京大、阪大、神戸大のESSと合同で
コロナ禍 「挑戦の大切さ学ぶ」

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中央大学英語学会(ESS、別所七花会長=法3)が、法政大、京都大、大阪大、神戸大のそれぞれのESSと合同で、オンラインによる英語劇『魔法にかけられて』を創作した。対面での演劇のノウハウがない状況からオンラインでの作品づくりに取り組み、コロナ禍という逆境をはね返した。上半身による演技という独特の演出から、対面劇とは異なる表現形態としての可能性を感じさせている。                (英語劇の劇中写真はすべて中央大学英語学会提供)

㊤ナリッサがジゼルを倒すために人間の世界に来たシーン。ナリッサ役は伊藤桜子さん(中央大) ㊧魔法の国が舞台のアニメーションの場面

ESS先輩のミュージカルがヒント オンライン英語劇に独自の可能性

別所さんたち3年生の世代は、入学した途端、コロナ禍に見舞われた。対面のさまざまな活動が制限され、ESSの活動も困難を極めていた。そんな中で、ESSの1学年上の先輩がオンラインミュージカルを創作したことが、オンライン英語劇を生む下地、ヒントになった。

 

先輩たちと創ったミュージカルは「全く別の場所にいるのに画面内では同じ空間にいるという独特な感覚が新鮮で、とても楽しかった」(別所さん)という。ただ、オンラインでは対面以上に参加者集めに苦労が伴う。この“人数不足”を解消するため、外部の団体に参加を呼びかけ、一緒に創作してみようと思い立った。これまでなかった外部との交流に結び付くかもしれないという期待もあった。

 

別所さんからオンラインの活動を提案された制作当時のドラマセクション(部門)チーフ、伊藤桜子さん(法3)は「私は大学では対面での演劇を行ったことがなかった。それに中大のESSだけでも参加者が少ないのに、ほかの大学とのコラボレーションがうまくいくだろうかと心配もあった」と振り返る。新たな試みへの不安も大きかったのだ。

人間の国にやってきたエドワードとナリッサの手下のナサニエルが対面するシーン。左がエドワード役の渡邉銀士さん(中央大)、右はナサニエル役の伊藤桜子さん(中央大)

「活動できずに苦しい」 他大学の学生も同じ思い

英語劇に取り組む大学ESSをSNSを使って調べ、ダイレクトメッセージで企画を持ち掛けると、すぐに反響があった。

 

「活動できずに苦しい」。ほかの大学の学生も思いは同じだった。10校も送らないうちに、法政大、京大、阪大、神戸大のESSから参加したいとリプライがあった。

 

それでも、ZOOMを使った創作は試行錯誤の連続だった。演出や衣装、メイク、背景の画像をどうするか。出演するキャストやスタッフのスケジュール管理、キャストへの演技指導、演出の説明、背景に流れる楽曲の編曲…。これらをすべてLINEやZOOMのオンラインミーティングを介して行った。刀剣やグラスなどの小道具は写真に撮って確認し合い、どのシーンにもバーチャルな背景を写真で配置した。

ナリッサの悪だくみに気づいたエドワードが驚き、周りに助けを求めるシーン。左がエドワード役の渡邉銀士さん(中央大)、右がナリッサ役の伊藤桜子さん(中央大)

演技、演出に試行錯誤の繰り返し

練習(稽古)と撮影の準備を 2021年12月18日から始め、撮影は2022年1月11~16日に行った。上半身だけの演技でも、鑑賞する人が分かりやすいように演技や演出を工夫した。画面に登場する際、左右のどちら側から入るべきか、通話中の2人がスマホを持つ手はどちらにすべきなのか。対面劇では考えもしないことに頭を悩ますことにもなった。

 

同じESSで活動しているとはいえ、実際に面識のない学生同士がオンラインで英語劇を創るのは難しい。残念ながら普段からの人間関係があるわけではなく、オンラインの打ち合わせでは意思疎通も十分とはいえなかった。「対面の劇の方が目に見えて相手(役)の反応が分かる。オンラインは手ごたえを感じづらい」(伊藤さん)という制約もあった。

毒リンゴを食べて倒れたジゼルをロバートとエドワードが助けようとしている場面。左がロバート役の畠山涼太さん(法政大)、右がエドワード役の渡邉銀士さん(中央大)

「もうだめだと挫折しかかった瞬間はなかったですか」と尋ねると、別所さんは「いっぱいあった」と即座に言葉を返した。しかし、「離れた場所、距離が遠い大学ともつながることができ、熱意のある人同士が協力してひとつの作品を創りあげることができる。コラボレーションのツールとして今後も活用したい」と、オンラインのメリットも挙げた。他大学の演劇サークルにも所属する別所さんにとって、「中大で演劇をしたい」という熱意も創作の支えとなったのかもしれない。

 

伊藤さんも、対面劇とは異なる表現形態として、コロナ終息後もオンライン劇の創作を続けたいという。「最初は不安が大きかったのですが、無事にやり遂げられて今は安心しています。やりたいと思ったことは、できるものなんだなと…。挑戦することの大切さを学びました」と話している。

真実の愛のキスで目を覚ましたジゼルが、悪の女王ナリッサに立ち向かうシーン。左が後半のジゼル役の米田紅音さん(大阪大)、右がナリッサ役の伊藤桜子さん(中央大)

原作はディズニーのミュージカル映画 『魔法にかけられて』

 

分かりやすい英語で演じられ、親しみやすく、上映時間が長すぎないという理由でオンライン英語劇として選んだ。練習(稽古)と撮影の準備を2021年12月18日から始め、ZOOMの録画機能を使って撮影した。物語のあらすじに沿って、アンダレーシアという魔法の国が舞台のシーンはアニメーション、ニューヨークのシーンは実写を用いた。撮影期間は2022年1月11~16日。前後編39分38秒。

 

あらすじは次の通り。

 

主人公のジゼルは魔法の王国アンダレーシアで、王子エドワードと運命的な出会いをし、結婚の約束を交わした。しかし、その婚姻によって退位を迫られた悪の女王(王子の継母)ナリッサは、結婚式当日にジゼルを井戸に突き落として追放してしまう。その様子を見ていた友人でリスのピップはエドワードに助けを求め、ピップとエドワードは井戸へ飛び込む。

 

一方、ナリッサの家来のナサニエルも井戸へ飛び込み、ナリッサの命令で確実にジゼルをなきものにしようとしていた。ジゼルは現代のニューヨークにたどり着き、妻のいない弁護士ロバートとその娘モーガンに助けられ、打ち解けていく。ニューヨークでの生活を通して、さまざまな経験をし、彼らと楽しい時間を過ごす。ロバートとの仲も深まっていったが、物語の終盤ではエドワードと再会し、舞踏会の後に魔法の国に戻ることを決意する。

 

ところが、舞踏会にはナリッサが来ており、ジゼルは毒リンゴを食べさせられてしまう。ジゼルを救えるのは真実の愛だけであった。真実の愛のキスを通して無事に彼女は一命を取り留め、ナリッサに立ち向かっていく。

 

 

『魔法にかけられて』前後編は こちらからご覧になれます。

前編 https://www.youtube.com/watch?v=albvo8bLZb4&t=46s

後編 https://www.youtube.com/watch?v=FWm5P4t3jBI&t=82s

 

119年の伝統と歴史 中央大学英語学会(ESS)

中央大学ESS会長の別所七花さん(右)と、伊藤桜子さん

 

1903年創部。119年の伝統がある文化連盟所属の公認サークル。ESSは「English Speaking Society」の略。「使う英語」をさまざまな活動を通して学び、身につけることを目的として活動している。活動分野としてはドラマ、スピーチ、レッスン、ガイド、企画、留学生、ディスカッションの各セクション(部門)がある。

 

会室は4335室(多摩キャンパス4号館)で、現在は主に3~5限の時間帯に活動することが多い。2022年度の対面活動では英語の星座占い、英語の作品を通して演劇の基礎を学ぶレクチャー、洋楽レッスン、アニメの名言 や自分の座右の銘を英語で学んで発表するレッスンなどを行っている。

 

他の団体とコラボすることもあり、留学生に道案内をする交流会を開催した。オンラインでも活動しており、新歓期間には英語でのスタバの頼み方や英語勉強法共有会、現在は月に1回程度、英語勉強会を開催している。在籍する学生数は223人(6月10日現在)。

 

キャスト、スタッフとして創作に携わった学生の皆さん (名前の掲載許可をいただいた方のみ、敬称略)

 

【中央大学】木村真希 藤田寛之 渡邉銀士 小川瑠翔 小室安希 伊藤桜子 別所七花

【法政大学】藤田佳愛 リベラメグミ 黒田太志 谷生頼斗 鈴木芙奈 劉瀚洋 畠山涼太 横田麻衣 李きさ 下崎春香

【京都大学】藤井紀香

【大阪大学】米田紅音 赤松美咲

【神戸大学】髙嶋紗愛

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