2022.01.13

世界から飢餓と貧困を撲滅 フェアトレードの公開講演会
ゼンショーHD社員を講師に招いて学修
経済学部・林教授のゼミが「国際協力論」の授業で開催

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フェアトレード公開授業の企画・運営を担当した林教授のゼミの3年生

途上国開発や国際協力について学修している経済学部の林光洋教授のゼミが2021年6月29日、フェアトレードに関する公開授業(公開講演会)を開催した。

フェアトレードとは、「弱い立場にある生産者や労働者か ら、農産物、衣類、雑貨などを正当な価格で、継続的に購入し、貧困や格差を是正していくための貿易上のパートナーシップ、経済システム」のこと。林教授の「国際協力論」の授業では毎年度、フェアトレードに ついて学ぶ回を設けている。

公開授業は、FLP国際協力プログラムのFACT(中央大学フェアトレード委員会)が企画・準備を担当し、すき家、ココスなどの飲食チェーンを全国展開するゼンショーホールディングス(HD)の協力で実現し た。フェアトレードの業務に従事する社員2人を講師に招いてオンラインで開催し、履修者以外にも学生や大学教職員ら約130人が参加した。

長期のパートナーシップへ 「取引の持続性」「生産者の自立意志」が重要
水道整備、学校・病院建設も推進
ゼンショーHD 田中さん、加藤さん講演要旨

「世界から飢餓と貧困を撲滅する」を企業理念とするゼンショーHDの社員、田中慶さん、加藤文菜(あやな)さんは、コーヒー豆などの取引で同社と結びつきの深い東南ア ジアの東ティモール、南米のペルー、アフリカのルワンダ、 ウガンダなどの生産地を例に、実際に取引の現場で見聞きした内容について講演した。東ティモールで生産された コーヒー豆のドリップバッグコーヒーをすき家で2007年に販売したのが同社のフェアトレードの始まりという。 講演要旨は次の通り。

フェアトレードについて学んだオンラインの公開授業

過去の戦争や搾取がもたらした結果が、現在の飢餓や 貧困の背景にあるといわれている。経済的な競争の中でも生産者の人間らしい暮らしを奪ってはいけない、搾取してはいけないという理念が、ゼンショーHDのフェアトレードの取り組みの根本にある。

生産者の生活を無視するような不当な低価格ではなく、本来支払うべき価格を支払うことが良い循環をもたらす。人と人とは対等なパートナーであるべきで、貿易によってともに成長する中で、生産者も自立できる。

ゼンショーHDでは、フェアトレード価格で買い上げるとともに、社会開発資金(ソーシャル・デベロップメント・コスト)を供与し、生産者の居住する地域の水道施設の整備、学校・病院建設などに役立てている。

フェアトレードはチャリティーではない。生産者が苦しい立場から自立して発展していくための手段であり、貧困格差を広げないための取り組みである。このため、永遠に続くものではなく、生産者が自立し、いずれは“卒業”することを目指している。

取引の開始前に、「一度限りでなく取引を持続できるか」 「生産者に自立の意志があるか」を確認することが最も 重要。互いに長期的なパートナーシップを築けるかということである。

国際的なフェアトレード機関の「世界フェアトレード連盟」(WFTO、本部・オランダ)によれば、フェアトレードは「国際的な貿易をより平等にするために行うパートナーシップ」であり、「弱い立場の生産者や労働者の権利を保障してより良い条件で取引することが持続可能な開発を支える」としている。ゼンショーHDのフェアトレードについて、WFTOは「われわれとはやり方は違うが、良い取り組みだ」と評価した。

「対等な目線で生産者と直接つながる」~FACT前代表の工藤妙香さん(文3)
「主体的に動くことの大切さ」も学ぶ~前副代表の関川知沙代さん(総合政策3)

ゼンショーHDと取引のあるペルーの生産者が育てたコーヒー豆
(オンラインの公開授業から)

ゼンショーHD社員が講師を務めた公開授業を聴講し、学生たちは何を学び、何を得たのか。FLP国際協力プログラムの林光洋ゼミのゼミ生で、中央大学フェアトレード委員会(FACT)代表(授業当時)の工藤妙香(よしか)さん(文3)、副代表(授業当時)の関川知沙代さん(総合政策3)に聞いた。

工藤さんは、まず飢餓が途上国を含む世界で問題になっていることと、「何をすれば生産者の利益になるのか」というゼンショーHD社員の言葉が印象的だったという。「フェアトレードにはさまざまな形がある。あくまで生産者の目線で、生産者と直接つながるゼンショーHD の国際産直型というアプローチは、有効な形だと思った」と振り返る。

「助けてあげる、支援する」という姿勢ではなく、フラットで対等な目線で生産者との関係を見ていることが印象に残ったという関川さんも、「どうすれば現地のニーズに合ったことが可能か、長期の取引が可能かを考えさせられた」と授業の意義を語った。

2人はさらに、「身近な企業でも、私たちの興味のある分野で活躍できる場所があり、途上国の問題に注目しながら働くことができるという一つのあり方を学べた」(工藤さん)、「将来の仕事としてさまざまな国とつながりたい、フェアトレードに関する仕事をしたいと考えて企業をみるとき、その企業がどのような取り組みをして、どのような問題意識を持っているかという一つの基準を得られた」(関川さん)と話した。将来の仕事や働き方を深く考えていく意味でも有意義な機会となったようだ。

今回の公開授業は、林教授の「オンラインでも講演会をやってみたらどうか」という提案をもとに、ゼミ生が実際にフェアトレードに取り組んでいる企業を調べて企業側の担当者に連絡し、講演の内容についても話し合いながら、一つの授業という形に結実させたという。

工藤さんは「FACTや林ゼミの活動では、自分たちで企画して主体的に動くことで、その経験が身についていく」、関川さんも「主体的に動かないと、分かるはずのことも分からない。私自身も『自分から動く』ということができ始めている」 と、ゼミ学修やFACTの活動で得られた成果を話している。 

☆FACT(中央大学フェアトレード委員会)

「Fairtrade Chuo University Team」の略。2007年、林光洋教授のFLP国際協力プログラムのゼミが母体となり、フェアトレードの普及、啓発などを目的に発足した学生団体。現在、2~4年の70人近くが在籍している。

フェアトレードをテーマにしたさまざまな活動を行い、ピープルツリーや第三世界ショップ、森永製菓、スターバックスコーヒージャパンなどの企業・団体の協力で、フェアトレードに関する講演会を開催している。 また、主にテキストを使った輪読やDVDを用いて、フェアトレードについて話し合いながら知識を深める形で勉強会も行っている。

白門祭でフェアトレード製品を販売する店を出したり、中央大学生協と協力して、チョコレートやクッキー、手芸品、雑貨などを販売する生協でのフェアトレード・フェアを開催したりしている。 新メンバーも募集中。中大生ならだれでも参加できる。

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