2021.08.05
「脱炭素社会の実現に向けたあなたのまちの施策」をテーマに、外務省が2021年1月に主催した「YOUTH気候変動政策コンペティション」で、外交研究会の山本悠雅さん(法2)、遠藤瑞季さん(法2)の2人が最優秀賞の外務大臣賞を受賞した。
北海道帯広市を例にカーボンニュートラルな電力自給を目指すことを掲げた「農業と再生可能エネルギー発電を両立させる『ふるさと農電』」について、オンラインでプレゼンテーションを行い、高く評価された。
「YOUTH気候変動政策コンペティション」で、最優秀の外務大臣賞を受賞した外交研究会の山本悠雅さん(右)と遠藤瑞季さん
「十分に準備をしたので自信はありました。プレゼンテーションのコンセプトを(審査員に)しっかりと伝えられた」(山本さん)
「気候変動は、私が関心のある人権にもかかわる問題。関連する分野で評価されたのがうれしい」(遠藤さん)
2人は、家庭による温室効果ガス排出量の増加と、市民に環境改善行動を啓発する具体的政策の欠乏という帯広市の脱炭素政策の課題を指摘しながら、課題設定や分析、目標となる数値の提案などについて入念に準備してプレゼンテーションに臨んだ。外交研究会の先輩に勧められての出場だったという。
遠藤さんは、脱炭素社会の実現という大きな課題に対して、自治体の解決策を立案し、示すことができた「提案力」を将来に向けて生かしていきたいという。山本さんも、「紛争や内戦において悲惨さをなくすというのが私の願い。(受賞は)そうしたキャリアに進むための自信になった」と手応えを話した。プレゼンテーションで提案した、ふるさと農電を軌道に乗せるカギは、システムの利用を促進する「トムトムポイント」にあるという。
自治体の環境政策のあり方について、2人は「地方の発展に資する政策かどうかが大切で、気候変動対策を考えるだけでは十分ではない。まちの産業構造や特色を検討し、それを阻害するような政策であってはならない」と話している。
帯広市の政策改善方針として「市民の主体的な省エネ行動や消費選択を基盤とした、市内でのカーボンニュートラルな電力自給を目指すこと」を掲げ、「ふるさと農電」という環境志向型の経済システム導入と、「トムトムポイント」というポイント付与サービスを行うことの2つを提言した。
ふるさと農電は、行政、農家、電力会社、市民の4者が一体となって、市民の再生利用可能エネルギーへの需要を創出し、市民主体の環境改善活動の促進、電力および農作物の地産地消を実現する経済システム。
行政と電力会社の共同出資で、豊富な再生可能エネルギー利用した大規模発電プラントを設置。農業と発電の両立を図りながら、太陽光発電とバイオマス発電から生み出された電力を買い取った電力会社が、再生可能エネルギーだけから成る電力供給を行う。
市民は、こうした電力会社との契約や、システムに関わっている農家の農作物・畜産物の購入、さらに一定程度の節電をするなどした場合,トムトムポイントが付与される。貯まったポイントは、スーパーや農協の直売所などで野菜や肉と交換できる。
このポイント制度がシステムの普及と利用促進に重要な役割を担う。ポイントの利用範囲は段階的に広げていく。「とむぽ」と呼ばれるアプリ開発で、各自の環境改善行動が数値として「見える化」され、温室効果ガス排出量を大幅に削減し、脱炭素社会を実現することができる。
YOUTH気候変動政策コンペティション
プレゼンテーションの共通テーマは「脱炭素社会の実現に向けたあなたのまちの施策」。気候変動に関連したデータを活用して対策をシミュレーションし、自治体への政策提言を行う。課題設定能力、分析力、提案力、独創性、具体性、実現性、データ活用力、プレゼンテーション能力などを基準に審査された。持ち時間は1組10分以内でパワーポイントを使用する。
応募があった18組(82人)の中から事前審査(論文審査)を通過した6組(16人)が、今年1月17日にオンラインで開催されたコンペティションに出場した。中央大学からは山本悠雅さん(法2)と遠藤瑞季さん(法2)、轟野乃子さん(法2)と甲斐詢也さん(法2)のペア2組が事前審査を通過した。轟野さんと甲斐さんは、さいたま市を例に「図書館に昼間人口を集約することによる家庭内電力消費の抑制」と題したプレゼンテーションを行った。
中央大学外交研究会
多摩キャンパスの学生研究棟「炎の塔」に会室を置く外交官試験受験団体。会長は尾﨑久仁子法学部特任教授、顧問は宮野洋一法学部教授。1951年に外交官を志す学生によって設立され、これまでに50人以上の外交官試験合格者を輩出している。選抜試験の合格が研究会に入る条件で、全学部の学生に門戸が開かれている。