2021.02.15

「オンライン授業」 環境はどう整備されたのか

文/FLP松田ゼミ 水谷遥香(法4)

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ジャーナリズムについて学ぶFLP松田美佐ゼミに在籍する水谷遥香さん(法4)は、2020年春以降の中央大学のオンライン授業導入への環境整備などについて取材しました。新型コロナウイルスの感染拡大がなかなか収束しない状況にあり、松田文学部教授は「十分な取材が難しかった面がありますが、ゼミ生それぞれが関心を持つテーマで取材対象を選びました」と話しています。水谷さんの報告です。

大学の実務担当者に“土台”づくりを取材

水谷遥香さん

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中央大学は2020年3月から、多様なメディアを利用して行う授業(以下「オンライン授業」)の実施に向けて準備を始めた。オンライン授業の開始から間もなく1年が経とうとしているが、学生の私たちが受講までの過程を知る機会は少ない。中央大学の実務担当者らを取材し、オンライン授業をめぐる環境がどのように整備され、実施されているかを探った。

 

中央大学学事部は、大学全体の授業や行事のスケジュールの決定・変更について、学生への周知を図った。オンライン授業の準備は前期(春学期)の最初の2週間の特別休講期間に始まり、4月後半から5月後半の特別措置期間には各学部でも授業の進め方が検討されるなど、「土台」の整備が着々と進められた。

 

ITセンターはオンライン授業を行うツールを選定し、授業マニュアルを記したサイト「中央大学 オンライン授業・WEB会議ポータルサイト」を作成した。このサイトで、オンライン授業に関する情報が一元的に見ることができる。ITセンターの担当者によると、「オンライン授業で困ったことがあったら、まずはこのサイトで情報を探してみてださい」というコンセプトで作られたものだ。

 

初めての事態に、学生や教員から問い合わせが数多く寄せられた。ITセンターの職員だけでは対応し切れず、大学の新入職員を含めた学事部、人事部の合同チームで対応した。問い合わせの件数は減る傾向にあるが、現在は「教育的効果をより高めるためのオンラインツールの利用方法に関する問い合わせが増えてきている」(ITセンター)という。

 

初歩的な内容が多かった前期に比べ、グループディスカッションや動画共有の方法など、後期はより高度な内容の問い合わせが増えている。

 

資料のリアルタイム共有が可能
授業空間の共有は不可

スケジュールや授業環境といった「土台」の整備を受け、実際に授業を担当する各学部の教員が、双方向型、動画配信型、資料配信型、自主学修指示型の4類型から、自身の授業形式を選択する。

 

法学部の高橋徹教授は、ゼミと外部講師を招いて行う授業は双方向型、それ以外はイントロダクション動画とテキストをmanabaにアップし、資料配信型で行っている。回線トラブルで受講できなかった学生が後で視聴できるようになるほか、学修時間を学生自身の都合に合わせられるメリットがある。

 

高橋教授はほかにも、「参考資料などをリアルタイムで共有できること」をオンライン授業の長所に挙げる。一方で、「空間を共有できないことが短所」と指摘し、「教室という空間を共有し、授業を経験することで感じ取るものもある。他の学生がどんなリアクションで聞いていたかという情報も大事」と説明する。

 

オンライン授業の長所と短所について、学事部による教員対象のアンケートでは、メリットとして「時間的負担が少ないこと」、デメリットとして「学生の理解度が分からない」などの声が多く寄せられたという。

オンライン授業開始後の備え

授業開始後も、新しく行われたことや整備が進んでいることがある。

 

ITセンターは後期や2021年度の授業のために整備を続けてきた。前期に教室の無線アクセスポイントを強化したほか、現在はハイブリッド型授業専用の教室を整備している。ハイブリッド型授業は、教室で対面授業を行いながら、一部の学生はオンラインで参加する授業である。各学部の特性に合わせ、今後実施することになったときに備えるという。

 

オンライン授業は、コロナ禍において不可欠な措置だ。対面授業と組み合わせる方法も検討されており、オンライン形式は授業の一形態として今後も活用されていくだろう。学生が安心して受講できるよう、システムのトラブルを減らすことや、やむを得ず受講できなかった学生への対処が必要だ。

 

センター側への問い合わせからは、学生や教員がオンラインでも対面形式に近い形での授業を試みていることが分かる。オンラインならではの長所を生かしつつ、短所をなくしていくことが今後の大学の授業に求められるだろう。

 

(注)現在、中央大学では、「オンライン授業」については「遠隔授業」を、「対面授業」については「面接授業」という表現を使用していますが、記事中では「オンライン授業」「対面授業」という表現を使っています。

FLPジャーナリズムプログラム 松田美佐ゼミ

学期期間中は、「ジャーナリズムとは何か」を学問的に捉えつつ、調査や論理的思考、議論の力を身につけるためにディベートなどをおこない、夏休みには、場所決めや取材企画の一切をゼミ生が決める取材合宿で、日本全国を巡っている。

ここ数年の取材記事は、HAKUMON Chuoのバックナンバーで読むことができる。合宿が不可能となった2020年度は、コロナ禍の学生をテーマに各自が取材をおこない、記事にまとめた。

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