2020.12.18

トルコ留学レポートが日本学生支援機構ウェブマガジンに掲載
髙山桜笑さん(総合政策3)

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FLP国際協力プログラムの中川康弘経済学部准教授のゼミで学ぶ学生が、海外で得た有意義な体験を報告します。

11項目のダイアリー 国際交流の意義を考察

髙山桜笑さん

2019年9月から約4カ月間、トルコに留学した髙山桜笑(さえ)さん(総合政策3)の海外留学レポートが、日本学生支援機構(JASSO)のウェブマガジン「留学交流」(2020年5月号)に掲載された。イスラームの社会や文化に関心があったことと、地理的にアジアとヨーロッパの結節点であり、非英語圏ならではの留学ができると、トルコを留学先に選んだ。

「トルコ人と日本人の知識量の差に関する一考察 -トルコ留学時のダイアリーから-」と題した留学レポートでは、さまざまなエピソードを11項目のダイアリーにまとめ、貴重な体験や得られた知識などを記し、国際交流の真の意義を考察している。

(ウェブマガジン「留学交流」掲載の留学ダイアリーの一部を抜粋して掲載しています)

留学ダイアリー

2019年9月19日

 中央大学からの留学生4人とタクシーに乗った。運転手のおじさんが愉快な方で、どこから来たか聞かれたので日本と答えると、「ナガトモ」「シンジカガワ」や「トウキョウ」など日本についての知識を披露してくれた。

日本について良いイメージを持ってくれていることがありがたかった。

 

青森県立八戸高校時代、県教育委員会主催の留学プログラムで台湾、韓国を訪れて、英語について学びを深め、日本の魅力を紹介するプログラムに参加したことで、海外をより身近に感じたことが大学での留学の動機づけとなった。

 

トルコの首都、アンカラにある中東工科大学で社会学を専攻し、興味を持っていた「女性の社会的地位」について学んだ。イスラームの社会では女性が抑圧されていると考えられがちだが、社会階層がほぼ固定され、貧困層は学校に通えずに、早婚などにつながっているという実態が分かったという。

身についた積極性

滞在先は大学敷地内の寮。4人部屋でアゼルバイジャン、台湾、韓国のルームメイトと過ごした。朝食と夕食は共用のキッチンで自炊することが多かったが、寮の食堂やキャンパス外のレストランで取ることもあった。授業で仲良くなったトルコ人の女子学生がランチや誕生日パーティーに誘ってくれるなど、出会ったばかりでも親切にしてくれたことも印象に残っている。

留学ダイアリー

2019年10月1日

大学内の日本文化クラブに所属している学生に授業後声をかけられ、初回ミーティングに参加した。大教室のほとんどの席が埋まるくらいたくさんの生徒が参加していて、日本文化へ興味を持っている学生が想像以上にたくさんいることに驚いた。

ルームメイトや大勢の学生と関わる中で、「積極性」を身につけ、社会との向き合い方を見つめ直すようになったこと。これが留学を通して得られた大きな収穫だった。生活リズムの違いからルームメイトとの生活にストレスも感じたが、最初は気まずくなるのが嫌で我慢し、雰囲気で察してほしいと思っていた。

 

大切にしたルームメイトとの会話

ルームメイトの誕生日を祝う髙山さん(右から2人目)

しかし、「嫌なことはやめてほしい」と口にする友人を見て、「言わなくては分かってもらえない」と自分の意見をはっきり伝えるようになった。

 

それぞれの国、地域の政治や文化についてルームメイトから深く知ることができる機会ととらえて、部屋での会話を大切にした。政治や社会問題に関心を持ち、実際にボランティアなどの行動に移しているルームメイトに対し、日本の政治や社会問題について上手に説明できなかった自分に歯がゆさを覚えた。当事者意識をもって日本の社会問題などに向き合うようになっていったという。

留学ダイアリー

2019年10月21日

英語の授業でプレゼンテーションの練習を行った。トピックは理想のリーダー像についてで、あるクラスメイトはトヨタ自動車の創業者について語っていた。休み時間に彼と話したときに今学期から第2外国語として日本語を習い始めたと言っていて、黒板に「すし」と書いてくれたが、「す」を書くときに数字の9を最初に書き、そこから他の部分をつけ足していたり、「し」が左右反転したりしていた。日本語を習得するうえでひらがなは不可欠だが同時に最初の難関でもあるのだと感じた。

トルコの魅力は、「やはり親日の人が多いこと」。日本人と分かると商品などをおまけしてくれたり、日本に関する話を振ってくれたりする人が多かった。おいしい料理がたくさんあるのも魅力だった。イスラームが多いため、豚肉料理はないが、鶏肉や牛肉料理を楽しめた。

 

また、突然停電したり、水道水が濁って使えなくなったり、寒い時期に温水が出なくなったりと、日本での生活と異なるところも少なくなかった。学生証が発行されるまで1カ月以上かかり、「のんびりしているなあ」と感じたという。

留学ダイアリー

2019年11月28日

トルコで強く感じることは距離的に近くもない国であり、訪れたこともない日本という国や文化をなぜそこまで好きになってくれるのかという疑問だ。私はトルコが好きだが、留学が始まる前までトルコがどういう国なのかというイメージもなかった。

私を含め多くの日本人がトルコについてほとんど何も知らないことを申し訳なく感じた。

アンカラ城は市街地を見渡すことができるランドマーク

留学レポートで記した「知識量の差」については、日本への関心が高いトルコ人学生と、留学前はトルコに漠然としたイメージしかなかった自分を比べ、知識量に差があると感じたことがきっかけだった。

 

髙山さんは、レポートで「両国が長い間友好関係を築いてきたことは事実」としながらも、「全体的にみて国と国同士のつながりは強いが、人と人同士のつながりが弱いのではないだろうか。日本人にトルコ語の挨拶表現やサブカルチャー、代表的なトルコ企業について尋ねても、思い浮かぶ人は少ないと思うからだ」と推察する。

国際協力 「対話への転換を」

さらに、日本メーカーの自動車や工業製品が身近にあるトルコ人が日本に興味を持ちやすい環境にあることを指摘し、「国際交流とは言っているものの、日本人が与えてトルコ人が受け取るという関係性が出来上がっているように思う。(中略)本当の意味での国際交流を行うためには、自らの頭で考え、ただ与えるのではなく相手から学ぼうとする意識が大切なのではないだろうか」と結んでいる。

 

国際協力という意味で具体的に何が必要で何を改善していくべきか。髙山さんは「お互いが関わっていく中で、さまざまな発見がある。一方的な知識などの提供ではなく、まずは対話に転換していくべきではないか」と指摘する。

 

今回の留学経験から、日本国内の格差の問題に興味がわき、今度は先進国に留学して学びたいという意欲が高まったそうだ。留学中はたくさんの現地の学生に助けられたため、中央大学への留学生が困っているときは力になりたいという。

 

留学生は約1700人  アンカラの中東工科大学

中東工科大学の最新の建物には大講義室、講義室が集まる

髙山桜笑さんが留学した中東工科大学は、中央大学の協定校。留学生は、交換留学生と4年間の通学生を合わせて約1700人が在籍していた。中央アジアからの留学生が多い印象を受けたという。

 

留学が決まると、英語で行われる総合政策学部の講義を受けるなどして準備した。中東工科大は英語を流ちょうに話す教授も多く、事前の準備が役立った。トルコ語については初心者のまま現地に到着。学生や教授以外は英語が話せないため、寮母との会話や食堂などでは簡単なトルコ語の会話能力が必要で、当初はストレスを覚えた。

 

留学生向けのトルコ語の授業を受けて次第に理解できるようになり、生活に困らないほどの会話力が身についた。

 

髙山さんは留学費用が比較的安く済むこともトルコ留学のメリットに挙げる。生活費が安く、金銭面の心配はなかったという。授業は他国に引けを取らないレベルで、「1授業に留学生2人まで」という決まりがあり、教授の目が届き、気にかけてくれることも多かったという。

 

FLP国際協力プログラム中川康弘ゼミ

日本語教育・多文化教育を軸に国際協力と多文化共生を考えるゼミ。ゼミ生の調査テーマは、「青年海外協力隊活動の今日的意義」「国内外における日本語教育の社会的役割」「性的マイノリティーの語りからみる多文化共生のあり方」など。文献とフィールド調査等を通じて支援すること、対話することの意味を問いながら、皆で学びに取り組んでいる。

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