2024.12.23

まずはシード権「目標7位」
第101回箱根駅伝 「新紅の挑戦」
陸上競技部長距離ブロック 監督、選手が記者会見

学生記者 大山凛子(法4) 影原風音(文4) 谷井花蓮(総合政策4) 倉塚凜々子(国際経営4)

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2025年1月2、3日の第101回箱根駅伝(東京・大手町―箱根間、往復10区間、217.1キロ)を前に、中央大学陸上競技部長距離ブロック(駅伝)チームが12月18日、多摩キャンパスで記者会見を開き、藤原正和監督と佐野拓実主将(4年)、エントリー16選手のうち12人が出席した。

 

2週間後に本戦を控え、藤原監督は「前回以上に体調管理に気をつけたい。目標は7位」と、まずシード権の獲得を目指す考えを明らかにし、「(チームの)直近の状況を見ると、もっと上位を狙えると思うが、まずは足元の7位をクリアし、チャンスがあれば上位を狙っていく」と強調した。

 

記者会見は多摩キャンパス「FOREST GATEWAY CHUO」3階ホールで行われた。川田涼主務(4年)が司会進行役を務め、選手12人が箱根駅伝への意気込みや抱負、走りたい区間やその理由、どのような走りをしたいかなどを次々に語った。浦田優斗選手(4年)と吉居駿恭(しゅんすけ)選手(3年)、岡田開成選手(1年)、並川颯太選手(1年)の4人は授業のため欠席した。

 

会見にはテレビ・ラジオ、新聞などの報道陣約40人が出席し、中大の駅伝チームや箱根駅伝への関心の高さをうかがわせた。

共同記者会見に出席した陸上競技部長距離ブロックの選手たち
=2024年12月18日、多摩キャンパス「FOREST GATEWAY CHUO」3階ホール

藤原正和監督

佐野拓実主将

3強の一角崩しを

藤原監督は、6位だった箱根駅伝予選会(10月)、12位でシード権を確保できなかった全日本大学駅伝対校選手権(11月)について「今年は苦しんできた」と言及し、「11月以降、立て直しの練習を行い、12月の合宿(千葉・富津)では手ごたえのある練習を選手たちが積んで(箱根本戦に向けて)いい形で来られている」と、チームの現状を説明した。

 

さらに、今年のチームスローガン「新紅の挑戦」と重ねて、箱根駅伝のテーマを「3強への挑戦」と掲げた。3強は、箱根連覇を目指す青山学院大と、2022年度に大学駅伝3冠を達成した駒澤大、今季の出雲駅伝と全日本を制している國學院大を指し、藤原監督は「3強の一角を崩すレースをしたい」と意気込みを語った。

 

エントリーメンバー入りがならなかった佐野主将は、「私は走ることはできないが、チームに貢献するという思いで、戦う16人に良い影響を与えられるように日々を過ごしていきたい」と述べ、エントリー入りした選手に向けて「全員が憧れの舞台を楽しみ、自信をもって全力で走ってきてほしい」と激励の言葉を送った。

 

前回100回大会で多くの選手が体調不良のまま挑んだ中大は総合13位でシード権を失い、10月の予選会で6位となり本戦出場を決めた。前々回の99回大会は総合2位、98回大会は総合6位でシード権を獲得している。

 

会見に出席したエントリー12人の希望区間、その理由などは次の通り。

白川陽大選手(3年)

阿部陽樹選手(4年)

「チームに勢いを」「走りで恩返し」「エースの走りをする」

☆4年生

阿部陽樹(はるき)選手 希望区間は8区です。予選会、全日本と悔しい思いをし、自分としては前回の箱根(8区22位)も悔しい思いをしている。リベンジしてチームに勢いを与える走りをしたい。

 

園木大斗選手 希望は6区以外。箱根を走るために卒業を1年延期しました。中大の目標に貢献できるよう、最後まで全力で走り切りたい。箱根にかける思いは誰にも負けません。

 

山平怜生(れい)選手 希望区間は9区または10区です。出走すれば最初で最後の箱根になる。応援してくれた方々に走りで恩返しできるよう、(本戦までの)残りの期間に自分ができることをやっていきます。

 

☆3年生

白川陽大(ひなた)選手 希望は区または9区です。4区は前回、湯浅仁キャプテン(当時)が、レースの流れがうまくいかない中で状況を変えるような走りを見せた重要な区間だと思うからです。9区は他校も強い選手を配置するゲームチェンジャーの区間で、そこで競り負けないようにしたい。

 

溜池一太選手 今年のチームのエースは自分なので、自分がしっかり2区を走らなければ、(チームの)目標を達成できないと思う。エース区間で他校のエースと競り合ってチームに貢献したい。エースの走りをしたいと思います。

 

吉中祐太選手 希望区間は7区か10区。理由は自分の長所を生かせる区間と思うからです。前回はけがで出走できなかったので、今回は出走して4年生に笑って(部活動を)終えてもらえるように頑張りたい。支えてくれた人への恩返しと、見ている人が「中大、頑張ってるな」と思うような熱い走りをしたい。

本間颯選手(2年)

鈴木耕太郎選手(2年)

「外さない走りが武器」「1年生、がむしゃらに」「上りが得意」

☆2年生

鈴木耕太郎選手 7区を希望しています。自分は「外さない走り」が武器。復路のゲームチェンジャー区間と思っている7区で、流れを変える走りをしたいと思っています。前回の箱根や全日本はメンバーにすら入れず、走れなかったことが悔しかった。今回は出走して中大の力になれるよう精いっぱい頑張ります。

 

藤田大智選手 希望区間はです。9区は、大学2年当時(98回大会=2022年)の湯浅仁さん(前主将)が順位を押し上げた区間で、自分も同じ区間を走って少しでも近づけるよう頑張りたい。最近は入学以来、一番良い練習が積めている。自信をもってスタートラインに立てるよう準備していきます。

 

本間颯(はやて)選手 希望は5区以外の往路区間です。駅伝は流れが大事で、往路での遅れは許されないと思う。支えてくれた方々、応援してくださる方々に恩返しできるように、チームの目標に貢献できる走りをしたい。

 

☆1年生

佐藤大介選手 アップダウンが多い区間を希望します。とくに上りは得意なので、しっかり勝負していきたい。いつも支えてくださる方々に結果で恩返しをしたい。1年生らしく、がむしゃらに走り、チームに貢献したいと思います。

 

田原琥太郎選手 希望区間は8区です。自分は平坦もアップダウン(のある区間)も強みだと思っています。その強みを最大限に発揮できるのが8区。走れたら、自分の最大限の走りをしたい。

 

原田望睦(のぞむ)選手 希望区間は10区です。入学以来、箱根に向けて集中して取り組んできた。その成果を出してチームに貢献したい。比較的長い距離の区間なので、自分の強みであるロード力、粘り強さを生かして、どんなコンディションでも全力を出し切りたい。

佐藤大介選手(1年)

藤原監督と司会進行役を務めた川田涼主務(左)

「山」攻略に手ごたえ

質疑応答の中で、エース区間の2区の選手起用を問われた藤原監督は「彼自身がエースと言っているし、溜池(一太選手=3年)に託したい。まずは溜池自身の力を発揮する状況をきっちり作りたい」と述べた。溜池選手はけがで10月の予選会を欠場したが、藤原監督は「けがからは8割方戻ってきている。残り半月で10割に戻すようにやっていく」とした。

 

山下りの6区は前回、区間5位で走った浦田優斗選手(4年)の配置を示唆し、「最初の5キロの上りをいかに攻められるかが全体を左右する。良い形で最初の5キロを入らせたい」と見通した上で、「前回以上の走りはできると感じている」と期待感を示した。

 

山上りの5区についても、「しっかり準備をさせてこられた。いい走りというか、攻めの5区にできる」と信頼できる選手を起用する意向を明かし、「山(5区、6区)は今回は自信をもってやれる」と力強く続けた。

 

例年同様に「往路を重視してメンバーを組んでいく」とし、岡田開成選手(1年)らを重要区間に配置するほか、7区と9区には流れを変えるゲームチェンジャーを置きたい考えも表明。当日のコンディション、区間適性を重視して最終的な選手起用を判断するとした。

共同会見に先立って、応援団から選手たちにエールが送られた=2024年12月18日、多摩キャンパス

「力を最大限に発揮」「強さを証明」
箱根への「熱量」の高まりを実感
学生記者 大山凛子(法4)

前回の箱根駅伝、10月の予選会などの結果を踏まえ、陸上競技部長距離ブロック(駅伝)チームとして、さらに飛躍するため、全員が懸命に努力を重ねてきていることを感じられた会見だった。間近に見た選手たちの表情からは終始、緊張した様子がうかがえたものの、「準備してきたことを最大限に発揮したい」「強さを証明したい」という覚悟を語る場面が多く、チーム全体の熱量の高まりを感じさせられた。

 

一人また一人と質問に答える中で、選手たちが日々背負っている期待の大きさもひしひしと伝わってきた。箱根駅伝への意気込みを問われた白川陽大選手(3年)は、「中央大学が応援されるチーム」であることを強調していた。

 

4年生の佐野拓実主将や副主将の山平怜生選手の口からは「プレッシャー」という言葉が聞かれた。重圧の大きさが垣間見えたが、周囲の支えがその重圧を乗り越える大きな力になっているとも語った。プレッシャーを力に変え、全員が笑顔で箱根駅伝を終えてほしいと強く思った。

 

会見の冒頭、藤原正和監督は「今回は足元を見つつ、上を目指す」と述べた。この言葉から、目指す頂点をやみくもに追い求めるのではなく、足元を固めながら着実に一歩ずつ努力を重ねていくことの重要性を強調しているように、私には聞こえた。この言葉を自分自身に重ね合わせ、何事も地道な努力を怠らずに進んでいくことの大切さを再認識させられた。

父の夢「箱根出走」を叶えたい

園木大斗選手(4年)

 

選手個々に走りたい希望区間を問われたとき、「6区以外」と答えた園木大斗選手(4年)に注目した。父親が中大卒業生で、総合優勝した1996年の第72回大会の代に駅伝チームに在籍していたという。園木選手は、箱根を走るために卒業時期を1年延長したと語った。父の果たせなかった「箱根出走」を叶えるのが、父との約束だという。

 

藤原監督や選手たちは、箱根駅伝への「気持ち」の強さをさらに上げていくことを課題の一つに挙げていた。「選手たちがスマートすぎるがゆえに、気持ちを全面に出して泥くさく」と指導したという監督の説明も胸に残った。一見、不器用に見える努力こそが、人を大きく成長させる原動力になる。がむしゃらに取り組む姿勢も大事だと気づかされた。

 

学生である選手たちには無限の可能性がある。中大を卒業した後も、さらに大きな成長を遂げるだろう。目標としてきた箱根駅伝という舞台で、彼らがその進化を余すことなく発揮できることを心から願っている。

気持ち新たに挑戦 箱根路へかける思い
学生記者 影原風音(文4)

一人ひとりが箱根駅伝にかける思いを確立させ、淡々と準備を積んできたことが垣間見える会見だった。中でも印象に残ったのは、箱根駅伝予選会(10月)と全日本大学駅伝対校選手権(11月)の悔しさを糧に、4年生を中心にチーム全体でメンタル面を強化してきたという点である。

 

予選会と全日本の後、藤原正和監督は選手とのミーティングを通じて、メンタル面の強化がチームの改善点として挙がったと説明し、駅伝チームが才能のある選手の集団だけに「何事もスマートにやりこなすところがあった」と分析した。その上で、これを課題と捉えて、「もっと気持ちを全面に出し、泥くさくやっていかなければならない」と意識の変化を促したという。

 

予選会と全日本の悔しさを踏まえ、佐野拓実主将を中心とした4年生はチームがどう箱根駅伝に向かっていくべきかを何度も話し合った。駅伝への「執念」をもっと積み上げていくために、いま足りないものは何か、下級生にどのような行動を見せていくべきかを考えながら、日常の生活態度を見直したり、練習への意欲を高めたりした。

駅伝への「執念」

思うように結果が出ないとき、選手それぞれが修正点の改善など自分自身のことに目が向きがちになり、チームの団結力、結束に影響するのではないかと私は考えていたが、それは杞憂だった。4年生を中心にまとまったチームは、「泥くさく」目標に向かって突き進んでいるようだ。

 

藤原監督は、101回大会の目標を7位と明らかにし、さらにテーマを「3強への挑戦」と掲げた。7位は控えめな目標にも映り、チームの潜在的な力を考えると、さらに上位への進出が期待できるだろう。選手たちは本番で自身の能力を最大限に発揮できるよう、熱い気持ちで準備を整えている。全員が体調管理を万全にし、心残りのない走りができることを心から願っている。

 

私は小さい頃からお正月の楽しみとして箱根駅伝をテレビで観戦してきた。中央大学に入学後は、さらに応援に熱が入り、一層楽しみなイベントとなった。入学から早くも3年が経ち、最終学年となった2024年度は在学中に応援できる最後の箱根駅伝になり、胸のドキドキ感も高まっている。三が日の選手たちの活躍が楽しみで仕方がない。

長距離ブロック(駅伝)チームの会見に大勢の報道関係者が詰めかけた=2024年12月18日、多摩キャンパス「FOREST GATEWAY CHUO」3階ホール

切磋琢磨して高め合う 「一人ひとりが誰かの原動力に」
学生記者 谷井花蓮(総合政策4)

年前に続き共同会見に出席して、チーム全体の箱根駅伝への覚悟が伝わってきた。前回と大きく違うと感じたことは、部員の一人ひとりが「誰かの原動力」となって影響を及ぼしているのではないかということだ。前回は湯浅仁主将(当時)、吉居大和選手、中野翔太選手ら当時の4年生がチームを引っ張っていたように感じたが、今回は全員が他の誰かに影響を与え、メンバー同士が切磋琢磨して、互いを高め合っているという印象を受けた。

 

佐野拓実主将は、予選会や全日本で悔しい思いを経験し、一人ひとりが危機感を持って練習に取り組んでいると説明した。全員が責任感を持ち、チームのために行動していることが伝わった。主将自身はエントリーメンバーから外れ、陸上を始めたきっかけとなった箱根駅伝に出走できず、「本当に悔しい」と述べた。しかし、全ての質問に堂々と受け答えする様子からは、気持ちを切り替えてチームのために主将としてできることに全力で取り組んでいる姿勢が伝わった。

 

それはまさしく責任感にほかならない。間違いなく、主将の背中を見つめるメンバーのエネルギーになっているはずだ。

完全燃焼の箱根駅伝に

エース区間の2区への出走を希望した溜池一太選手(3年)

今年2~3月に米国遠征を経験した溜池一太選手(3年)は、藤原監督が「目の色が変わった」とたとえるなど、自覚とたくましさが増した。溜池選手の練習や行動の変化は、2年生の本間颯選手ら後輩たちにも良い影響を与えているようだ。

1年生の田原琥太郎選手も、高校時代と違う練習環境として「強い同期の選手をはじめ、強くなるためのヒントが(チーム内に)たくさんあるということ」と語った。選手それぞれの努力や意識の高さが他のメンバーの刺激となり、チーム全体の活力を生みだしているように私は感じた。

全員が箱根駅伝に熱い思いを持ち、チームを強くするための努力を重ね、チームとしての一体感を生みだしていることを実感した。箱根駅伝は何が起きるか最後まで分からない。周りからの期待やプレッシャーがある中でも、今まで努力を積み重ねてきた選手たちが完全燃焼できるような箱根路になることを願っている。

選手の表情に箱根への自信と決意
学生記者 倉塚凜々子(国際経営4)

共同会見場に現れた選手たちの姿に、自信と静かな決意を感じた。その表情からは、熱い闘志を内に秘めながら、落ち着きと冷静さも漂わせていた。

 

チームとして苦しい結果に直面することの多い一年だった。そんな状況で、チームをまとめ、支え続けてきたのが佐野拓実主将をはじめとする4年生たちである。1つ上の代も、下の代にも脚光を浴びる選手が多い中で、「力的にスポットライトが当たりにくい世代だが、チームの和を大事にやってきてくれている。下級生が力を伸ばしているのも4年生のおかげ」と、藤原正和監督は感謝している。

 

チームは、選手それぞれが自分自身への理解を深め、役割を意識しながらより強くなろうとしてきた。エース格の溜池一太選手(3年)は、けがを防ぎながらベストな状態に仕上げるための走行距離を把握するように努め、白川陽大選手(3年)もやみくもにトレーニングをするのではなく、その目的や意味を考えているという。

駅伝への執念を

選手たちがけがや伸び悩みという壁に直面しながらも、自己の課題と向き合い、成長してきた結果が今年のチームの選手層の厚さにつながったと言える。それだけに11月の全日本大学駅伝対校選手権で12位と翌年のシード権を逃すことになったのは、想定外だっただろう。選手層の厚さや全日本に向けた取り組みが実を結ばなかったことについて、藤原監督と選手たちの話し合いの中で、「気持ちの面で負けている」「駅伝への執念、粘りが足りない」といった原因が挙がったという。

 

「より執念を持って」というのは一朝一夕にはいかない繊細で難しい取り組みに思えるが、練習前のストレッチを以前より入念に行い、走る距離を数キロ増やすなど、少しの差を徹底して行うことで執念を育み、チームの精神性を高め、身体的にも精神的にも鍛えてきたという。

 

「4年生が何よりチームの和を大切にしてきた」という藤原監督の言葉を聞き、現地で取材した予選会で沿道から4年生の選手に送られていた熱い声援を思いだした。真摯に競技に向き合う姿勢が多くの人を魅了していると感じる。

 

箱根駅伝では深紅の襷(たすき)が、執念の走りで深みを増し、輝くことを期待したい。

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