2024.12.11

チーム躍進の背景に「自主性と言語化」あり!
ボクシング部 関東大学リーグ1部で21年ぶり“復活”勝利

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ボクシング部が2024年5~7月に開催された関東大学リーグ1部(6校総当たり戦)で、2勝3敗の戦績で4位となった。1部リーグで「1勝」を挙げたのは実に21年ぶりだという。躍進の最大の要因として、チームのテーマに掲げる「自主性と言語化」があった。多摩キャンパス第一体育館のボクシング道場で、渡辺龍大選手(前主将=経済4)と牧野蓮選手(前副主将=商4)、森貞宏太選手(主将=商3)の3人から、競技への取り組み、復活の経緯などを聞いた。

競技への意識の深化

ボクシング部は2023年7月、ともに部OB である岩渕雄介監督(2017年卒)、河口周悟・組織統括コーチ(同)というフレッシュな指導体制へと刷新され、新体制1年目のテーマに「自主性と言語化」が掲げられた。

 

ボクシング部には伝統的に自主的に競技に取り組むという姿勢が根付いており、「自主性」は比較的わかりやすかった。ところが、「言語化」は「最初はよくわからないというのが本音だった」と渡辺選手は話す。ただ、「たとえば何ができて、何ができていないのかや、リングでの一つひとつの動きを考える指導を受けられた」と振り返り、「何かをできるようにするため、どう取り組めばよいか」といった競技に対する意識の“深化”につながったという。

 

「自主性と言語化」の意識、考え方が浸透するにつれ、部員たちの思考にも変化が生じた。森貞選手は「相手の動きを観察し、パンチを打ち込もうとするときの癖を見抜いて、パンチを返す。当たるパンチには理由があるんです」と、戦術を言語化して理解する大切さを説明する。

 

牧野選手は「漠然と取り組んでいたボクシングをさまざまな角度から見ることができるようになった」と言語化の効果を説明し、さらに「チーム全体で話し合う機会が増えた。そうした積み重ねがチームとしての成長や、今回の勝利に結び付いた」と受け止めている。渡辺選手は「コーチだけでなく後輩や同期にも、皆が積極的にアドバイスをもらうようになっていった」と変化について語った。

駒澤大戦での牧野蓮選手(右)(ボクシング部提供)

チームメイトとの絆 団体戦への闘志

ボクシングをはじめ、相撲や柔道、剣道など、一対一で戦う「個人戦」の競技は少なくない。団体戦(チーム戦)の魅力、やりがいを3人に尋ねると、学生生活の中で、ハードなスパーリングや地道なトレーニングに普段からともに打ち込み、寮生活を送りながら芽生えていく絆をその原動力に挙げた。

 

練習は週6日、ボクシング道場で一日2、3時間行い、シャドーボクシング、マスボクシング(8割程度の力で行うスパーリング)、敏捷性を鍛えるフィジカルトレーニングなどに汗を流す。

 

牧野選手は「中大でかけがえのないメンバーに出会えた」と感謝し、「リング上では一対一の勝負だけれど、リーグ戦(団体戦)は絶対に負けたくないと思っていた」と力を込めた。森貞選手も「団体戦を行うのは大学(同士の対戦)がメインで、勝てば喜びも倍増する」と話す。団体戦に闘志を燃やせる理由について、渡辺選手は「監督、コーチ、OBなどのチームを支えてくださる方々への思いをもって全員で戦えるからです」と教えてくれた。

右ストレートを繰り出す森貞宏太選手(右)(ボクシング部提供)

「感謝の気持ち」忘れずにリングへ

渡辺選手、牧野選手ら4年生は部を引退し、後輩にチームを引き継いだ。

 

法政大戦の21年ぶりの1部リーグ勝利は、渡辺選手にとって「ボクシングを続けてきて一番うれしかった」という経験だった。渡辺選手は、「OBをはじめ、さまざまな方に喜んでいただいた」と感謝しながら、後輩たちに「4位という結果をバネにして、来年はさらに上位を目指してほしい」と期待する。

 

牧野選手は「今回のリーグ戦で優勝した駒澤大に勝ったことは、チームとして自信になる。来年の戦いが楽しみ」と笑顔を見せた。さらに、「周囲への感謝の気持ちを胸に試合に挑み、ピンチをしのいで勝利したことがあった。(後輩たちも)そうした思いを忘れずにリングに上がってほしい」とも。

 先輩2人にエールを送られた新主将の森貞選手は、「4年生がチームを引っ張ってくれての4位はうれしかった。(来年は)王座を目指してやっていきます」と抱負を話している。

法政大戦で勝利した渡辺龍大選手(リング中央)を大歓声が包んだ=2024年6月8日、後楽園ホール(ボクシング部提供)

駆け引き、心理戦がボクシングのだいご味

森貞宏太選手(主将)

 

もりさだ・こうた。愛媛・新田高卒、商学部3年。身長174 センチ。階級はライト級(リミット60 キロ)。7、8キロの厳しい減量を経て試合に出場する。高校時代はインターハイで3 位(ライト級)の実績がある。

 

ボクシングスタイルは前に出るファイター。相手も前に出てくるタイプの選手の場合はアウトボクシングで対処する臨機応変さも備えている。「ボクシングは単なるパンチの応酬ではなく、駆け引きや心理戦の要素の大きいスポーツ」と競技の魅力を訴える。

気持ちを強く持ち、泥くさく戦う

渡辺龍大選手(前主将)

 

わたなべ・りゅうだい。群馬・伊勢崎工高卒、経済学部4年。身長174 センチ。階級はライトウェルター級(リミット63.5 キロ)。試合では普段の体重から約5キロ減量する。高校2年のインターハイ(バンタム級)で個人ベスト16。

 

ボクシングスタイルは、近距離での打撃戦に主眼を置く「インファイト」。「気持ちを強く持って泥くさく戦う」のが身上という。主将として部員全員の考えやモチベーションを把握し、チームにポジティブな雰囲気を作ろうと意識していた。「ボクシングは地道に努力した人が勝つ競技。対戦した者同士でないと分からない感情が生まれるところが魅力」と話す。

手数の多さ、スタミナと馬力が強み

牧野蓮選手(前副主将)

 

まきの・れん。静岡・浜松工高卒、商学部4年。身長172 センチ。階級はウェルター級(リミット67 キロ)。試合には普段より約4キロ減量して臨む。高校時代は静岡県代表として国体出場(ライト級)の経験がある。

 

ラウンドのラスト30秒で、手数を多く出せる馬力、スタミナが自慢。丈夫に産み、育ててくれた両親に感謝しているという。今回の法政大戦は、自身のボクシングキャリアの中で一番の勝ち方だったと振り返る。

朗らかに取材に受け答えする3人。(写真左から)渡辺龍大選手、牧野蓮選手、森貞宏太選手=多摩キャンパス第一体育館・ボクシング道場

中央大学ボクシング部

 

1930(昭和5)年創部。岩渕雄介監督、河口周悟・組織統括コーチ、森貞宏太主将。監督とコーチはともに2017年卒のOB。部員数24人。関東大学リーグの1部優勝が目標。過去には五輪金、銅メダリストを輩出している。

 



 

関東大学ボクシングリーグ戦

 

毎年5 ~7月に後楽園ホール(東京都文京区)で開催される大学対抗のリーグ戦。1 部リーグは選手9人同士による対戦、2部は7人同士の対戦。3分3ラウンド制。関東ボクシング連盟主催。3~ 5部はトーナメント方式で行われる。

2024年度第77回関東大学ボクシングリーグ1部成績

 

①駒澤大4勝1敗(勝ち数33)

②東洋大4勝1敗(勝ち数31)

③拓殖大3勝2敗(勝ち数20)

④中央大2勝3敗(勝ち数20)

⑤法政大1勝4敗(勝ち数17)

⑥日本大1勝4敗(勝ち数14)

 



 

第77回関東大学リーグ1部(東京・水道橋 後楽園ホール)

中央大学成績

 

★第1戦(5月11日)

             中央大 (1-8) 東洋大

ミニマム級      波多野 陽(WP)  〇古藤 昇大

フライ級       柿沼 力生(WP)  〇中居 真壮

バンタム級      山川 空蒼(DISQ)  〇谷川寿貴哉

フェザー級      木村 琉雅(RSC)   〇大原 寧王

ライト級      〇森貞 宏太(WP)   大園丈太郎

ライトウェルター級  渡辺 龍大(WP)  〇秋元 啓介

ウェルター級     牧野 蓮 (WP)  〇黒田丈二朗

ライトミドル級    髙橋 慶翔(RSC)   〇瀬井りゅう一

ミドル級       中島 鉄人(WP)     〇黒部 竜聖

 

 

★第2戦(5月25日)

             中央大( 4-5) 日本大

ミニマム級     〇波多野 陽(WP)  平井 胤充

フライ級       柿沼 力生(WP) 〇川下 豪

バンタム級      山川 空蒼(RSC)  〇野添 碧澄

フェザー級      伊達勇次郎(RSC)  〇井上 偉心

ライト級      〇森貞 宏太(WP)  中里 陽向

ライトウェルター級  渡辺 龍大(RSC)  〇佐々本祥吏

ウェルター級    〇牧野 蓮(WP)           村中 滉希

ライトミドル級   〇渡邊 柊弥(RSC)      増田 祐士

ミドル級       中島 鉄人(RSC)  〇鎗田怜次郎

 

 

★第3戦(6月8日)

             中央大( 6-3) 法政大

ミニマム級     〇波多野 陽(RSC)   西村 大歩

フライ級      〇柿沼 力生(WP)     金澤 大和

バンタム級      柴田 玲央(WP) 〇溝口勢十朗

フェザー級     〇篠田 立輝(WP)  大隅 零生

ライト級      〇森貞 宏太(WP)  円谷 健聖

ライトウェルター級 〇渡辺 龍大(WP)  小池 立騎

ウェルター級    〇牧野 蓮(RSC)    松久 優作

ライトミドル級    川端 響喜(WP) 〇本名 駿

ミドル級       佐々木 巌(WP) 〇木場 海星

 

 

★第4戦(6月22日)

             中央大(5-4) 駒澤大

ミニマム級      波多野 陽(WP)    〇金谷 成留

フライ級        (不戦敗)        〇平塚駿之介

バンタム級      柴田 玲央(RSC)  〇山口 瑠

フェザー級      佐藤 楓汰(WP)    〇岡  聖

ライト級      〇森貞 宏太(WP)     原田 雪舟

ライトウェルター級 〇渡辺 龍大(WP)     立川 久遠

ウェルター級    〇牧野 蓮 (WP)     桐越 舜

ライトミドル級   〇中島 鉄人(WP)     髙田成之介

ミドル級      〇川端 響喜(WP)       荒木 陽仁

 

 

★第5戦(7月13日)

 中央大 (4-5) 拓殖大

ミニマム級     〇波多野 陽(WP)    安食 諒哉

フライ級       近藤 良(RSC)  〇山口 庵莉

バンタム級      柿沼 力生(WP)   〇山下 遥輝

フェザー級      大島 愛都(RSC) 〇篠田 覇時

ライト級      〇森貞 宏太(ABD)     山﨑 湊

ライトウェルター級 〇渡辺 龍大(WP)      月東 佳生

ウェルター級     牧野 蓮(RSC)  〇六井 和

ライトミドル級   〇中島 鉄人(WP)    堀田 陸志

ミドル級       川端 響喜(WP)   〇鳥谷部 魁

 

(注)WP =判定(ポイント)勝ち、RSC =技量の差の大きさや負傷で試合続行不可能と判断したレフェリーによる勝敗宣告(プロのTKO に相当)、DISQ =失格による勝利、ABD =相手やセコンドからの棄権による勝利。記録は関東大学ボクシングリーグ戦の公式サイトより抜粋

 

 

 

(写真左から)森貞宏太選手、渡辺龍大選手、牧野蓮選

〈取材後記〉 ボクシングと向き合う真摯な姿勢、深い情熱
学生記者 吉田未来(理工3)

2024年6月8日、ボクシングの聖地といわれる後楽園ホール(東京都文京区)に足を運び、関東大学ボクシングリーグ1部の法政大戦を観戦した。緊迫した雰囲気の中で、ホール中央のリングに多くの観客の視線が集まっていた。試合開始のゴングとともに、リングを熱狂が包む。

 

9つの階級別に中大、法大の選手による熱戦が続き、中大は3-1とリードした後、ライト級の森貞宏太選手(主将)、ライトウェルター級の渡辺龍大選手(前主将)、ウェルター級の牧野蓮選手(前副主将)が3連勝した。6-3で勝利した瞬間の会場の盛り上がりから、かつてないような迫力を感じたことを鮮明に覚えている。中大にとって関東大学リーグ1部

で実に21年ぶりという“復活”の勝利となった。

 

渡辺選手、牧野選手、森貞選手への取材を通じて、競技への真摯な姿勢と深い情熱を感じた。ボクシング部員はともに寮生活を送る中で絆が生まれ、多くの人に支えられてリングに上がっている。3人の言葉から、個人としての成長だけでなく、チームで戦う意義を強く感じていることがわかり、それが非常に印象的だった。

 

リーグ戦前は決して高くなかった評価を覆した背景には、ボクシング部内のこの一年の明確な変革があった。以前から「自主的に動く」という風土は根付いていたが、学年間の“風通し”をよくして、選手が学年の隔てなくアドバイスを求め合い、積極的に交流を図る空気が作られた。自主性はさらにチーム内に浸透した。

 

渡辺選手は「(4-5で惜敗したリーグ最終戦の)拓殖大戦では、それぞれが抱えていた課題を乗り越え、チームの集大成にふさわしい試合ができた」と胸を張り、表情に達成感をにじませた。

団体戦の魅力「 仲間のために勝つ」

私には「ボクシングは個人戦」という固定観念があった。取材を経て、それは180度変わった。「みんなのために勝ちたいという一心で、2年前に負けた相手に勝つことができた。法政大戦はこれまでのキャリアで一番良い試合ができた」と語った牧野選手は、けがが続いて競技をあきらめそうになった時期があった。そんなとき、チームの仲間が支えになり、今日まで頑張れたという。チームの結束力が伝わる印象的なエピソードだった。

 

新チームの主将となった森貞選手は「4年生が作ってくれた明るい雰囲気などは継続し、より自主性の高いチームを作っていきたい」と抱負を話した。中大は今回のリーグ戦で、優勝校の駒澤大に勝利した。森貞選手は、それをチームの財産、自信に変えて、2025年は個人もチームも日本一の高みを目指すという。

 

選手3人のボクシングにかける熱い思いと、互いに仲間として支え合う姿勢に深い感銘を受けた。ボクシング部の選手たちがどう成長し、戦績を上げていくか。今後の活躍を楽しみに期待を膨らませている。

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