2024.07.24
棋道会囲碁部が2024年度春季関東学生囲碁団体戦で準優勝し、1部昇格基準を満たす2位以内となった。1部昇格は2019年秋季以来5年ぶり(2020年春季と秋季、2021年春季はコロナ禍の影響で大会中止)。部長の土屋安武(やすたけ)選手(文2)は、「学生大会だけではなく、部員個々がさまざまな大会に出場して実戦経験を積み、レベルアップを図る」と力を込め、「秋季の1部でも上位進出を目指したい」と、さらなる飛躍を期している。
(前列左から)桑原廣太郎、林隆羽、土屋安武、原田将成の各選手 (後列左から)清水裕矢 岩本大輝、佐々木啓友、呉一弘、佐々木智大の各選手(写真提供:棋道会囲碁部)
春秋の関東学生団体戦は、棋道会囲碁部が最も力を注いでいる大会だ。各校とも主将、副将、三将、四将、五将の5人と、補欠5人の10人が出場選手として登録される。
春季団体戦で、中大にとってキーポイントとなったのが3戦目の日本大戦だった。副将、三将が敗れる厳しい展開となり、ともに1年生で四将の佐々木啓友選手と五将の原田将成選手が白星を重ね、3勝2敗として何とかしのぎ切った。
日大戦を前に2戦目(対東京工業大)で初の敗戦を喫し、副部長の岩本大輝(ひろき)選手(国際経営2)が「皆の気持ちが滅入っていた。まずいなと感じた」と振り返るほど、チームにショックが残っていた。1 年生2人がピンチを救う活躍を見せてチームに大きく貢献した格好となった。
この勝利でチームは勢いづいた。主将を務めた林隆羽選手、副将の桑原廣太郎選手、三将の清水裕矢選手の実力者3人を中心に、4戦目以降は一つの対局も落とすことなく、2位を確保した。
主将の林選手は5月の学生本因坊決定戦関東予選でブロック1位、桑原選手もブロック4位で全日本学生本因坊決定戦(7月)への出場を決め、個人戦でも実力を発揮している。
部長の土屋安武選手
副部長の岩本大輝選手
部長の土屋選手によると、団体戦に向けて出場希望者を募ったうえで、部内の対局で実力を見定め、対戦相手との力関係も図りながら出場者を決めた。
「初心者も楽しく活動できる囲碁部だということを知ってほしい。勝負に徹することも大切ですが、大会の出場登録者には一度は出場機会を与えたい。できるだけ多くの部員に大舞台を経験してほしい」と土屋選手は話す。部員全員が楽しんで活動できるチーム作りを目指しているという。
日頃の練習での対局は多摩キャンパスの部室のほか、東京・新宿で囲碁部出身の卒業生が経営する碁会所でも週1回行っている。卒業生や他大学の学生らと囲碁を通じてコミュニケーションを図り、和気あいあいと活動できるところも囲碁部の魅力だ。卒業生との結びつきが深く、卒業生主催の囲碁の研究会も月1回、開かれている。
囲碁は19 × 19 のマス目が書かれた碁盤の線の交点に、黒白の碁石を対局者が交互に打つ。交点からのびる全ての線(道)をふさぐと、相手の石を取れるという陣取り合戦である。複雑、難解で奥が深く、一朝一夕に実力アップに至るものではないものの、愛棋家はその魅力から碁盤を離れがたくなる。
序盤の打ち方である布石、せめぎ合いの中盤、ヨセの段階となる終盤など、局面、局面で「無限に打つ手はある」と岩本選手。「どんな手も“正解”になり得る可能性がある。そこが囲碁の魅力でもある」と続けた。
囲碁は先に着手し、主導権を握る「黒番」が有利だという。ところが、岩本選手は攻める棋風にもかかわらず、白番のほうの勝率が良いそうで、「本当は攻めが得意ではないのかもしれません」と冗談めかして笑った。
一方、オーソドックスに打つという土屋選手は、「どちらかといえば守りの碁」が身上。「中盤の攻防をより有利に展開できるようになりたい」と課題を挙げ、ネット対局や詰め碁の研究などに余念がない。「定石はあるが、独自の発想で、好きなように手を打っていける。難解な局面を考える面白さがある」と魅力を教えてくれた。
一方で、囲碁の世界では将棋と同じように対局者が一対一で向き合い、対局中は誰も助けてはくれない。打つ手全ては自分自身の責任であるという厳しい勝負の一面があることも指摘した。
12大学が出場した団体戦2部は、3日間にわたり熱戦が繰り広げられた
(写真提供:棋道会囲碁部)
中央大学戦績
▶〈1戦目 対千葉大〉
林隆羽 不戦勝○
桑原廣太郎 不戦勝○
清水裕矢 白中押し勝ち○
佐々木啓友 黒中押し勝ち○
原田将成 白6目半負け●
▶〈2戦目 対東京工業大〉
林隆羽 黒中押し勝ち○
桑原廣太郎 白4目半負け●
清水裕矢 黒34目半勝ち○
岩本大輝 白中押し負け●
土屋安武 黒21目半負け●
▶〈3戦目 対日本大〉
林隆羽 白中押し勝ち○
桑原廣太郎 黒24目半負け●
清水裕矢 白15目半負け●
佐々木啓友 黒2目半勝ち○
原田将成 白1目半勝ち○
▶〈4戦目 対埼玉大〉
林隆羽 白51目半勝ち○
桑原廣太郎 黒中押し勝ち○
清水裕矢 白中押し勝ち○
佐々木啓友 黒中押し勝ち○
原田将成 白中押し勝ち○
▶〈5戦目 対一橋大〉
林隆羽 黒中押し勝ち○
桑原廣太郎 白中押し勝ち○
清水裕矢 不戦勝○
佐々木啓友 不戦勝○
呉一弘 黒3目半勝ち○
▶〈6戦目 対筑波大〉
林隆羽 黒中押し勝ち○
桑原廣太郎 白43目半勝ち○
清水裕矢 黒中押し勝ち○
佐々木啓友 白28目半勝ち○
佐々木智大 黒中押し勝ち○
▶〈7戦目 対東海大〉
林隆羽 不戦勝○
桑原廣太郎 黒46目半勝ち○
清水裕矢 白中押し勝ち○
佐々木啓友 黒中押し勝ち○
原田将成 白32目半勝ち○
(注)各試合の持ち時間50分(秒読み30秒)。選手名はどの対戦も上から主将、副将、三将、四将、五将の順。関東学生囲碁団体戦は男女混合の大会で、出場選手に男女の制限はない。女子のメンバーがいる大学も多いという。団体戦2部は参加した計12大学が一定の試合数を行う「スイス方式」と呼ばれるトーナメント方式で争われた。総当たり戦ではないため、試合数は削減される。
土屋安武部長。部員数は男子15人、女子8人。学年別では4年5人、3年1人、2年9人、1年8人。初心者の入部も歓迎している。新宿囲碁センターと多摩キャンパスの部室(サークル棟)でそれぞれ週1回活動。月1回のOBとの練習会のほか、他大学との交流戦や、中央大学主催の練習会などを開催している。囲碁部と将棋部を合わせた棋道会として、学友会の文化連盟傘下にある。