2024.04.15

スピードとパワー、頭脳戦… スカッシュの魅力
健康維持に適した生涯スポーツ 普及にも意欲
全日本学生選手権3位 徳原優輝選手(経済4)

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スカッシュは、四方を壁に囲まれたコートでゴム製ボールを交互に打ち合うインドアのラケット競技。スピード感あふれる展開はボールを目で追い続けるのも難しいほどだ。2028年ロサンゼルス五輪の追加競技に採用され、注目度が高まっている。第50回全日本学生選手権大会(2023年12月)で3位となった競技歴11年の徳原優輝選手(経済4)に、競技の面白さ、魅力などを尋ねた。

第50回全日本学生選手権の3位決定戦での徳原優輝選手(右)。ゲームカウント3-2で接戦を制した

日本代表入り
学生の世界選手権に出場へ

「負けたくない。ここで終われない」。第3シードとして挑んだ第50回全日本学生選手権の3位決定戦を、ゲームカウント3−2の接戦で制した。「自分自身を鼓舞してモチベーションを上げた。それがパフォーマンスの向上に結び付いた」と振り返る。

 

過去4戦4勝だったが、年下で勢いのある我妻莉玖選手(順天堂大)と準々決勝で顔を合わせ、ストレート勝ちで退けて波に乗った。「試合前半から速いペースでラリーを展開することで、相手のペースを乱せた」ことが功を奏した。

 

大学4年生となる2024年も出場できる大会だが、今回で第一線での活動は終えるつもりだった。いわばアスリートとして集大成の舞台となった。4年生では「長く取り組んできたスカッシュ以外の世界も知りたい。就活に力を入れたり、海外を旅したりしたい」と語り、視野を広げたいという。

 

もう一つ、「表彰台」にこだわった理由があった。大会後、世界各国の大学生と競い合う2024年9月のワールド・ユニバーシティー・チャンピオンシップ(学生の世界選手権、南アフリカで開催)の日本代表に内定したが、今大会で3位となったことが代表入りを大きく後押ししたからだ。世界大会に向け、今後も練習は継続していくという。

ラケットとボールを手にする徳原優輝選手。競技の魅力を丁寧に説明してくれた

「ラリーの楽しさ」のとりこに

現在、民間のスポーツクラブでスカッシュのレッスンを担当する。指導の中では「ラリーが続く楽しさ」や「テニスの2倍に相当する運動量で、健康維持に適した生涯スポーツであること」を挙げ、競技の魅力を説明している。

 

同じコートに対戦相手がいるスカッシュは、コートの中心付近(ティー)に自分が居続けることで、戦いを有利に進められる。逆に、高速のラリーの中で相手をいかに走らせて、ティーから遠ざけるか、どう返せば有利な展開になるかを考えながらゲームを進めるという頭脳戦の要素がある。ティーの取り合いは観戦の際に注目してほしいポイントだという。

 

友達に誘われてスカッシュを始めたのは小学5年生のとき。「ラリーが続きやすくて、それが楽しかった。年上の選手は格好良くてあこがれの存在だった」と、すぐに競技に魅了された。

 

野球や合気道にも取り組んだが、以後はスカッシュひとすじ。なかなか練習の成果が表れない時期はあったものの、高校2年の夏、マレーシアや香港など国外の選手も出場したジャパンジュニアオープンで準優勝し、「日々の練習の積み重ねが花開いた。競技人生のターニングポイントだった」と手ごたえを得た。日本スカッシュ協会の強化指定候補選手にも選ばれ、初めてナショナルチーム入りした。

体力と空間認識能力

ボールが最高時速270キロほどに到達するというスカッシュで、消耗戦の様相を呈する長いラリーは試合の流れを左右する重要なポイントとなる。失点はダメージとなり、得点になれば「満足感を得られる」と徳原選手。同じ1ポイントでも選手の精神面に与える影響が異なるのは、同じように長いラリーが続くことのあるテニス、卓球、バドミントンなどと似ているかもしれない。

 

また、正面の壁(フロントウオール)に当てた後、側面の壁(サイドウオール)と床の接合部分に当てて、そのまま転がってバウンドしない状態をつくるフィニッシュショット「ニックショット」は、スカッシュの見どころの一つという。

 

徳原選手にスカッシュ選手に求められる能力を聞くと、空間認識能力と体力と教えてくれた。空間認識能力は、ボールの速さ、高さ、長さ(距離)を瞬時に計算してボールを打ち返す判断能力のこと。高い動体視力や敏捷性も求められる競技といえそうだ。

 

普段の練習では、スカッシュ80分、心肺機能を鍛えるインターバルなどのトレーニング40~60分、ストレッチ20分の割合で、体力の維持・増強に努め、フィニッシュショットの精度を上げて成長につなげたいと取り組む。競技の一層の普及に向けて、社会人としても何らかの形で競技に関わっていきたいと自身の将来像を描いている。

徳原優輝選手

 

とくはら・ゆうき。広島市立美鈴が丘高卒、経済学部4年。171センチ、62キロ。大学2年時、日本スカッシュ協会のランキングポイントが与えられる大会「HEAD CUP TWO 2022 霜月」で優勝。攻められた後のカウンター(ストレートドライブ、クロスドライブ、ドロップ)が得意。全日本学生スカッシュ選手権では48回大会7位、49回大会4位、50回大会3位。国内の男子ランキング(2024年2月10日現在)は17位。

 


 

第50回全日本学生スカッシュ選手権大会

(2023年12月2~5日、横浜市・ヨコハマスカッシュスタジアム SQ-CUBE)

 

▽2回戦   〇徳原優輝(中央大)2(11-1、11-2)0 塩見航大(福岡大)

 

▽3回戦   〇徳原優輝(中央大)3(11-2、11-2、11-2)0 八木下智喜(明治大)

 

▽4回戦   〇徳原優輝(中央大)3(11-2、11-3、11-9)0 赤木優仁(東洋大)

 

▽準々決勝  〇徳原優輝(中央大)3(11-4、11-0、11-6)0 我妻莉玖(順天堂大)

 

▽準決勝    徳原優輝(中央大)0(5-11、7-11、6-11)3 〇安藤優太(日本大)

 

▽3位決定戦 〇徳原優輝(中央大)3(11-6、6-11、12-10、8-11、11-9) 2横田夢月(東京農業大)

 

(注)徳原選手は1回戦不戦勝。成績は日本スカッシュ協会ホームページから抜粋

ゴム製ボールは直径約4センチの大きさ

☆スカッシュ

 

英国発祥のインドアのラケットスポーツ。コートは9.75メートル × 6.4メートルの広さ。サーブ権に関わらず得点が入るラリーポイント制で、1ゲーム11点先取の3ゲーム制、または5ゲーム制。シングルスとダブルスがある。ラケットはテニスよりも小さい。内部が空洞のゴム製のボールは直径約4センチで、温まると弾みやすくなる。

 

ラリーではノーバウンドかワンバウンドで正面の壁(フロントウオール)に打ち返し、この際、サイドや背後の壁に当たった後にフロントウオールに返したボールも有効。床だけがバウンド数となる。ツーバウンド以上したり、フロントウオールに当たらなかったりした場合、得点が入る。

 

トップクラスの選手は1試合で体重が数キロ落ちることがあるほど、エネルギーを消費する。日本スカッシュ協会(1971年設立)のサイトによると、国内のスカッシュ人口は推定10万人。世界では185カ国で約2000万人がプレーしている。

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