2024.04.09

インカレ連覇へ 「安定して勝ち続けたい」
全日本大学総合卓球選手権 女子ダブルスで初優勝
女子卓球部 川畑明日香選手(文3) 吉岡桜子選手(文3)

学生記者 吉田 未来(理工3)

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女子卓球部の川畑明日香選手(文3=当時2年)、吉岡桜子選手(文3=同)のペアが、2023年10月の第89回全日本大学総合卓球選手権大会(インカレ)個人の部・女子ダブルスで初優勝を飾った。中大ペアの優勝は2013年以来の快挙。2人は「優勝できると思っていなかった」と口をそろえ、成し遂げた学生日本一の栄冠に今も実感がわかないという。今後は目標とされる存在、追われる立場となるが、「安定して勝ち続けられるよう頑張る」(吉岡選手)と日々の鍛錬、努力を重ねている。

笑顔でVサインの川畑明日香選手(左) と吉岡桜子選手=2023年10月(卓球メディアRallys提供)

ベスト16に中大勢5ペア 決勝は“中大対決”

中央大学ペア7組を含む89組が出場した女子ダブルスで、中大勢は5組がベスト16以上に勝ち残り、女子卓球部のレベルの高さを示した大会となった。決勝はなんと、川畑・吉岡ペアと、川北帆香選手と髙橋あかり選手の4年生(当時3年)の先輩ペアとの顔合わせが実現した。川北選手と吉岡選手は高校(埼玉・正智深谷高)の先輩、後輩でもある。

 

「まさか全国の決勝という舞台に立てると思わなかった。相手は、いつもダブルスの練習に付き合っていただいている先輩。この舞台で一緒に試合をできることが純粋にうれしかった」。吉岡選手はそう語り、「(多摩キャンパスの)第一体育館と違う場所で試合をしているなというくらいの感覚でした」と笑顔をみせた。決勝という大舞台にも過度に緊張せず、リラックスして挑めたことがこの言葉に表れている。

女子ダブルスで優勝した吉岡桜子選手(左)と川畑明日香選手=2023年10月、金沢市・いしかわ総合スポーツセンター(卓球メディアRallys提供)

難敵に競り勝ち、波に乗る

サウスポーの川畑選手は「普段から一緒に練習してくださる先輩に感謝しています。互いに戦術を知っていて、点数もなかなか決めきれなかった」と、決勝を振り返る。第1ゲームを先取され、「普段と違うことをしよう」と、積極的に攻めに転じたり、打つコースを少し変えたりしたことが勝利に結びついたとみている。

 

そして、「会場に高校(県立福井商高)の部活動の顧問の先生や両親、祖父母が見にきてくれていた。お世話になった人たちの前で優勝できてうれしかった」と喜びを語った。

 

ノーシードからの2人の快進撃。キーポイントは4回戦だった。難敵とみられた愛知工業大の岡田琴菜選手、面田采巳選手のペアに3-1で競り勝ち、波に乗った。川畑選手は「相手は球の威力がすごくて一本を決めるのが難しかった。この試合に勝てたことが自信につながった」とうなずき、吉岡選手も「取った3ゲームも接戦だったが、最後の一本をしっかりと取り切ることができた」と胸を張った。

 

翌年の大会の出場権を得るベスト8入りが懸かったこの試合に勝つことが、大会前の川畑・吉岡ペアの第一目標だった。これをクリアしたことで勢いに弾みがつき、頂点に駆け上がった。

「卓球は細かいスポーツ」

学校で、職場で、誰もがどこかで、一度は卓球のラケットを握ったことがあるのではないか。そんな身近なスポーツではあるが、川畑選手は「卓球はとても細かいスポーツ」とたとえている。その意味は、フォアハンド、バックハンド、ブロック、サーブレシーブといった技術力を身に着けるのがまず一番に大切で、習得は並大抵の努力ではできないからだ。

 

身近ではあるが、アスリートとして“下地”を築いて初めて一線級の試合で競うことができる、奥の深い競技といえる。

 

体の動作やラケットの動かし方も独特で、練習の積み重ねが求められる。「戦術や試合の組み立てを考える“脳力”も大事」(川畑選手)という。2人は週6日、一日3、4時間は多摩キャンパス第一体育館で練習し、月1回は筋トレや体幹を鍛えるスクワットなどのトレーニングも行っている。

試合でも練習でも笑顔

学生日本一の実感がないという2人だが、川畑選手は「優勝は自信になった。この経験を生かして(今年も)連覇したい。シングルスも頑張りたい」と目標を口にする。追われる立場になっても「思い切ってプレーできるよう練習に励む」と決意を話してくれた。

 

一方、吉岡選手は試合でも、練習でも笑顔が特徴だ。「いつも笑顔で和やかな雰囲気を作ってくれる」と川畑選手からも感謝されている。「笑顔で楽しくプレーしたほうがいい練習、いい試合になる」と理由を語る吉岡選手は、「優勝は一生に一度の奇跡のようなことに思います。卓球を続けて本当によかった。ただ、まぐれだった優勝と思われたくないので、安定して勝ち続けたい。技術力と、凡事徹底の人間力を磨いていきたい」と、とびきりの笑顔で続けた。これからも貪欲に卓球と向き合っていくつもりだ。

 

☆女子卓球部

 

1928(昭和3)年創部。矢島淑雄監督、川北帆香主将。2024年度は部員数15人でスタート。4年生3人、3年生4人、2年生4人、1年生4人の少数精鋭だ。

負けず嫌いの「あすちん」 川畑明日香選手

 

 

 

かわばた・あすか。福井・県立福井商高卒、文学部3年。158センチ。両親、祖父母が卓球経験者で、自身は5歳くらいで競技を始めた。ラリーでの粘りが身上。負けると落ち込み、勝てばうれしくて向上心がわく。負けず嫌いな性格は、インターハイ団体3位の実績がある祖母の敦美さん譲りという。吉岡選手からは「あすちん」と愛称で呼ばれている。

執念で球を追う「さーちゃん」 吉岡桜子選手

 

 

よしおか・さくらこ。埼玉・正智深谷高卒、文学部3年。161センチ。卓球は経験者の父親に誘われ、5~6歳で始めた。守備型のカットマンになったのは小学2年生の頃。攻撃も得意で、球に食らいつく執念が自身の特長という。「大事な一本の場面で極度に緊張してしまう」といい、技術よりメンタルの強化を課題に挙げる。川畑選手からは「さーちゃん」と呼ばれている。

「運命のペア」誕生
カットマン×異質ラバー=絶妙のブレンド

 

出身高校の異なる川畑明日香選手、吉岡桜子選手の2人が中大でペアを組み続けるきっかけとなった試合は2022年4月の関東学生新人選手権だった。入学したばかりで“即席コンビ”だった2人はいきなり優勝し、吉岡選手は「息が合うと試合中に思った。運命を感じた」と、“出会いの時”を振り返る。

 

吉岡選手は卓球台から下がった位置で打ち返すカットマンと呼ばれる守備型の選手。ラケット裏面に異質ラバーを貼り、無回転でトリッキーな球を打ち返す川畑選手との相性が「絶妙のブレンド」に感じられたという。川畑選手も「吉岡さんは攻撃も上手で、私より威力のある球で点を決める。カットでも変化をつけて相手を混乱させて私にチャンスを作ってくれる」と全幅の信頼を置く。

 

互いに認め合い、頼りにする運命のペアの誕生となった。

☆カットマン

 

カットは、テーブル(卓球台)のネットから最も遠いエンドラインより後方で、ボールにバックスピン(下回転、後進回転)をかけながら返球する打法のこと。回転の変化で相手のミスを誘う。カットマンはこれを主力武器とする選手。

 

 

☆異質ラバー

 

ラケットの片面に粒高ラバー、またはアンチスピンラバーを貼っているラケットや戦型を指す言葉。アンチスピンラバーは極端に摩擦係数が少なく、回転がかかりにくいラバーのこと。

 

(ともに日本卓球協会ホームページの卓球用語集より)

スローモーに…自由自在の技量

ラリーが延々と続き、球がテーブル(卓球台)にバウンドする小気味よい音が多摩キャンパス第一体育館に響く。球を目で追い続けていると首が痛くなった。

 

一線のアスリートの動きは速すぎる。練習風景の撮影のため、身のこなしやラリーを少しゆっくり、スローモーにと、無理なお願いをすると、こともなげに対応してくれた。日々、鍛錬を重ねているからこそ可能なのである。

川畑明日香・吉岡桜子ペア 優勝までの道のり

 

◇第89回全日本大学総合卓球選手権大会 個人の部・女子ダブルス

(2023年10月26~28日、金沢市・いしかわ総合スポーツセンター)

 

                  ゲームスコア            対戦相手

▽1回戦   3-0(11-7、11-5、13-11) 阿部紗弓・岡本心優(福岡大)

▽2回戦   3-0(11-7、12-10、11-3) 井上鈴・塩屋杏美(神戸松蔭女子学院大)

▽3回戦   3-0(11-4、11-9、11-7) 船場清華・陳ケ尾真子(専修大)

▽4回戦   3-1(11-9、7-11、11-9、11-9) 岡田琴菜・面田采巳(愛知工業大)

▽準々決勝  3-2(11-6、5-11、11-9、6-11、11-7) 石田瑳歩・今井汐珠玖(中京大)

▽準決勝   3-2(8-11、11-4、7-11、11-7、11-5) 榎谷優香・木塚陽菜(神戸松蔭女子学院大)

▽決勝    3-1(8-11、11-8、11-9、11-4)  川北帆香・髙橋あかり(中央大)

 

 

〈女子ダブルス 中大勢の成績=ベスト16以上〉

優勝     川畑明日香・吉岡桜子

準優勝    川北帆香・髙橋あかり

4回戦進出  藤森友菜・武山華子  西脇姫花・野末彩夏  工藤夢・枝廣愛

2回戦進出  藤田奈子・香取位圭  木村花暢・吉松寿莉

【編集後記】「凡事徹底」から日本一のペアに
質の高い練習 部内で切磋琢磨
学生記者 吉田未来(理工3)

(左から)吉岡桜子選手と川畑明日香選手、学生記者の吉田未来さん

全日本大学総合卓球選手権大会の女子ダブルスで初優勝を飾った川畑明日香選手と吉岡桜子選手の練習を見学し、これまでの取り組みと今後の目標について語ってもらった。練習中の真剣な表情とは対照的に、取材中の明るい表情が印象的だった。終始、2人の仲の良さが垣間見え、卓球に対する思いや日本一を達成した背景を知ることのできる貴重な時間となった。

 

自身の強みや全日本での勝因を淡々と語る中で、2人に共通していたことは、競技以外の日常生活に重点を置いているということだった。「凡事徹底が競技に良い影響を与えている」と語る吉岡選手の表情からは、ひたむきに卓球と向き合っていることが伝わってきた。高いモチベーションを維持できている要因について、2人は「周りのチームメイトが頑張っているから私たちも頑張れる。両親やこれまで指導してくれた方々のために今後も頑張りたい」と口をそろえた。

 

ストイックな姿勢で競技に打ち込む2人に、オフの日の過ごし方を尋ねると、ともにインドア派だった。卓球部の仲間と過ごすことが大半で、学年を問わず和気あいあいとした雰囲気だそうだ。練習とオフでメリハリをつけて過ごしているという。

 

取材中に最も印象に残ったことは、大学入学までの2人が日本一に手が届くとは思っていなかったというエピソードだ。川畑選手は「高校のときは卒業したら卓球を辞めるつもりでいた」と打ち明け、吉岡選手は「大学で卓球を続けるか分からなかった」と語った。試合で敗れたときなど、2人とも卓球をやめたいと思ったことは数えきれないほどあったそうだ。

 

2人に大学で成長できた理由を尋ねると、「効率良く主体的に練習を行う環境が成長につながった」と教えてくれた。自分の課題や強みを分析して主体的に練習をするようになったのは大学に入ってからだという。また、「中大ならでは」の強みは、チームメイトのレベルが高く、練習の質も非常に高いこと。そうした環境が成長を後押ししたといえる。

 

今後の目標は「ダブルス連覇」と団体での「インカレ優勝」。取材を通して人柄に触れることができ、同学年の中大生として刺激をもらうことができた。「凡事徹底」を大事にする2人の活躍に今後も期待したい。今後もさまざまな分野で活躍する中大生の活動、思いをインタビューを通して伝えていきたい。

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