2023.08.21

今季こそ甲子園ボウル出場、学生日本一を
アメリカンフットボール部「ダイヤモンドを勝ち取る!」
「RACCOONS」期待の2年生に聞く

取材・構成=学生記者 白井美有(国際経営3) 合志瑠夏(経済2) 北村結(総合政策2)

  • アスリート
  • ゼミ・サークル

合言葉は今季も「日本一」。アメリカンフットボール部「RACCOONS」が秋の関東学生リーグ戦を見据えて調整に励んでいる。秋の関東を制し、今年暮れの学生日本一決定戦「甲子園ボウル」に勝利することが最大の目標だ。

春のオープン戦での力試し、夏場の技術・体力強化など、地力アップに余念がないメンバーの中で、日大OBで2020年に就任した須永恭通(たかゆき)ヘッドコーチが今季、とくに飛躍を期待する2年生のキープレーヤー3人に意気込みを聞いた。​​​​

日本一のプレーヤーになり チームを頂点に導く
佐々木敬尊選手(ディフェンスライン=DL)

2009年制作の米映画「しあわせの隠れ場所」(原題・The Blind Side)は、ある家族との出会いによって、貧しい環境からはい上がり、米プロフットボールリーグ(NFL)との契約を勝ち取ったマイケル・オアー選手の実話を基にした作品だ。中学2年のとき、授業の一環で見たというこの映画が競技を始めるきっかけとなった。普段は内向的な主人公が、プレー中には大胆になるところに惹かれたそうだ。

プレーヤーとしての資質を買われ、大学進学時には他の有力校からも勧誘の声が届いていた。そうした中で、中央大学を選んだ理由は「一度も日本一になったことのない大学で日本一になりたかったから」という。「一度も勝ったことのないチームを優勝に導くことはダイヤモ ンドほどに価値がある。ダイヤを勝ち取りたい」と気合を込める。

DLは守備の最前列に位置し、互いに頑丈な体格をしたOL(オフェンスライ ン)とプレーのたびにぶつかり合う。相手のラン攻撃を止めたり、攻撃の司令塔の相手QB(クオーターバック) にラッシュをかけて重圧を与え、パ スコースを狭めたりする役割を担っている。

佐々木選手はとくにパスラッシュが得意だ。ワンプレーで試合の流れを変える「クラッチプレー」を常に意識している。

泥臭いプレー、勝利への執念を

甲子園ボウル優勝、学生日本一に向けて、チーム全体の意識改革が必要だと考えている。佐々木選手がこれを痛感したのは、甲子園ボウル5連覇中の関西学院大学との今年5月の練習試合だった。

“真面目”な プレーに終始するRACCOONSに対し、泥臭くプレーする関学大の選手から勝利への執念が伝わってきた。日本一になるため、これがチーム全員に必要だと感じたという。

「自分が日本一のプレーヤーになることが、チームの日本一への一番の近道だと思っています」という佐々木選手の一言に、意志の強さを感じた。誰よりも真剣に練習に取り組むと気合を込め、個人としてはサック(パスを投げる前のQBをタックルすること)とロスタックル(タックルして攻撃側を後退させること)の数の関東リーグ1位を今シーズンの目標に掲 げる。そのため、試合中は120%動き回れるような筋持久力と、その場の判断力を課題に挙げた。

取材で最も印象的だったのは、佐々木選手の意志に迷いがないということだ。チームとしての目標や個人としての課題、チームのために自分がすべきことなどがはっきりしていた。現状を分析し、はっきり目標設定できているのは、思考し尽くした結果なのだろう。この迷いのない意志こそが佐々木選手の強さにつながっているのだろうと感じた。(学生記者 白井美有)

ささき・けいそん。東京・佼成学園高卒、法学部2年。182センチ、97キロ。ポジション はディフェンスライン(DL)。ワンプレーで試合の流れを変え、チームを勝利に導く活躍を期している。

相手のオフェンスラインとぶつかり合う佐々木敬尊選手

ピンチを無失点に抑える守備の要
山岸亮伽選手(ラインバッカー=LB)

 

高校1年の5月、野球部をやめて間もない頃にアメリカンフットボール部の友人に誘われ、体験を経て入部を決めた。高校、大学と、LBとして活躍してきた山岸選手は自らの役割について「ディフェンス(守備) の要だと思っています。LBが最強(の布陣)になれば、相手オフェンス(攻撃)に負けることはありません」と胸を張る。

ピンチを無失点で防いだときにやりがいを覚えるという。「ディフェンスの自分たちは得点するチャンスよりも失点するピンチを迎える場面が多い。そのピンチを抑えることはこの上ない喜びになります」

練習や試合における自分自身のプレーを振り返る中で成長を実感することがある。その気持ちよさがモチベーションとなり、さらなる成長へとつながっていく。個人として掲げる目標はチームの中核として活躍し、「勝利に直接貢献すること」。改善すべき課題には「ディフェンスとして最も重要で基本的なヒットとタックルの強さ、質の向上」を挙げる。

太ももを鍛えて俊敏性を高める「レッグエクステンション」も行い、「大学の全国レベルで通用する力量まで成長する」と、高みを目指している。 

プレーはどう猛に、取材では知的な印象も

自身を「ハンター」と称した山岸選手は、「動物のようにどう猛な」激しいプレーを目指す一方で、高校時代からLBとして培われた経験も武器に戦っている。戦術巧みに突破を図る相手オフェンスに対抗するため、LBにはその戦術を見破る頭脳が求められる。経験を強みに、オフェンスのプレー展開を瞬時に読んで判断する「プレーリード」を得意としているという。

取材では、「知的な方だな」という印象を受けた。「緊張するなあ。 お手柔らかにお願いしますよ」と笑い、爽やかに場を和ませてくれた。そんな山岸選手の将来の夢は法曹になること。「法曹育成に力を入れている法学部に興味を持って入学しました。アメリカンフットボール部 OBで弁護士になられた方に話を聞くなどして、法曹が目標になりました」

先輩、後輩に関係なく問題点などを指摘し合い、互いを高め合うことができるチームと評価する一方で、個々にスイッチの入るタイミングが異なり、チーム全体が同じ方向を見られないときがあることを課題と捉えている。

RACCOONSの目標はただひとつ、学生日本一。きつくても、競技をやめようとは思わない。「やるからには、一番上がいい」と頂点を狙う。 (学生記者 合志瑠夏)

やまぎし・あきと。神奈川・鎌倉学園高卒、法学部2年。176センチ、82キロ。ポジショ ンのラインバッカー(LB)はディフェンスラインのすぐ後ろに位置する。「LBは、オフェ ンス(攻撃)側の戦略を見抜く頭脳が要求されるディフェンス(守備)の要」と自負している。

自らを「ハンター」とたとえた山岸亮伽選手(右)。ゲーム中のまなざしは鋭い

“重い球”を確実にキャッチ、タッチダウンにつなげる
宮澤光士郎選手(WR=ワイドレシーバー)

大学からアメリカンフットボールを始めた宮澤選手。「自分は誰よりも努力しなければいけない」と語り、ひたすら真剣に競技に打ち込んでいる。

足の速さに自信がある。相手ディフェンダーに阻まれていても、ランアフターキャッチ(パスを受け取り、そのまま走ってボールを前進させること)で振り切り、タッチダウン(TD)につなげる。「短いパスでも 自分はロングゲイン(大幅な陣地獲得)につなげられる」という。

「レシーブ数を多くして、どんな形でもTDを取ることが自分の役割」と心得ている。ラインがしっかりブロックしてクオーターバック(QB)を守り、QBが良いパスを投げても、レシーバーがキャッチできなければ、そのプレーは水泡に帰す。

「自分に投げられた球はそれだけの重いもの」という意識を持つようにしているという。早く力強い走りができるよう、スプリントトレーニングも取り入れている。

ロングゲインを期待されるWRは、勝敗に直結するようなビッグプレーに関わるケースが少なくない。宮澤選手も「自分がTDを取ってチームが勝つことが一番の喜び」と話す。ただ、自身の課題として「球際の弱さ、調子に波があり安定感に欠けること」を挙げ、勝負どころ で飛んでくるぎりぎりのパスをしっかりキャッチできなければチームを勝たせることはできないと、自分に厳しく言い聞かせるように語った。

タックルを受けてもすぐに倒れず、1ヤードでも前にがむしゃらに進むこと、戦術通りにいかずにプレーが崩れてもパスを通すこと。チーム全体に一段上の「勝利への執念、貪欲さ、泥臭さ」を求めている。秋の関東リーグ戦で、宮澤選手をはじめ 、縦横無尽に走り回るRACCOONSの選手たちの勇姿が今から楽しみだ。

1ヤードでもがむしゃらに前進する

高校時代は硬式野球部で甲子園出場を目指していた。中大で「一緒に甲子園を目指さないか」というRACCOONSの勧誘のキャッチフレーズが目に留まり、入部を決めた。競技は違っても目指す聖地は再び甲子園となった。

中大入学後、フットボーラーとしてのスキルを積み重ねようと努力する姿と、「日本一へ、もっと執念を持つ必要がある」とチーム全体を見渡す視野の広さ。これが宮澤選手を期待の選手へと押し上げているのかもしれない。

同じ中大生の私は、ゼミ長とサークル幹事として活動しているが、その両立にはいまだ課題がある。競技と真剣に向き合う宮澤選手の姿勢や顔つきは静かに燃える青い炎のようで、大きな刺激を受けた。私も焦らず、視野を広く持って、充実した大学生活を送っていきたいと思った。(学生記者 北村結)

みやざわ・こうしろう。新潟・新潟高卒、経済学部2年。181センチ、78キロ。ポジションはワイドレシーバー(WR)。WRはパスをキャッチして、ボールを前進させる攻撃の中心の役割を担う一人。俊敏性や走力を問われる。

相手ディフェンダーにタックルされる宮澤光士郎選手。ボールは絶対に手放さない

屈強な選手たちの頭脳を駆使した戦い
アメリカンフットボール

4回の攻撃で10ヤード(1ヤードは約91.4センチ)前進すると、新たな攻撃権が与えられ、フィールドの相手ゴールライン奥(エンドゾーン)までボールを保持して運べばタッチダウン(TD、6点)。またはキックによるフィールドゴール(FG、3点)を狙う作戦もある。

パス、ランを駆使した4回の攻撃で10ヤード前進できないと、その時点で相手に攻撃権が移る。ボールを持った選手が敵陣に向かって前進する陣取り合戦という点ではラグビーに似ているが、ワンプレー中に一度だけ、前方にパスを投げられる点が決定的に異なる。

選手の体を守る防具は総重量が3~4キロ。鍛え抜かれた選手たちの肉弾戦であるとともに、さまざまな作戦を駆使した頭脳戦という要素も強い。選手交代は自由で、オフェンス(攻撃)側、ディフェンス(守備)側とも11人の選手がプレー。選手の役割は専門化され、オフェンスチーム、ディフェンスチーム、キックオフやFGなどのスペシャルチームに分かれる。1人の選手が複数のポジションを務めるのは珍しいという。

1クオーター12分(または15分)で、1、2クオーターが前半、3、4クオーターが後半の48分制(または60分制)で行われる。フィールドは100ヤード×約53ヤードの広さ。

(左上から時計回りに)取材を担当した学生記者の北村結さん、合志瑠夏さん、白井美有さん、
 RACCOONSの山岸亮伽選手、佐々木敬尊選手、宮澤光士郎選手

GO GLOBAL!
スポーツ・文化活動
中大スポーツ
Connect Web
Careers