2022.12.23

狙うは「往路優勝」「総合3位」
時代を紡ぐ軌跡を残せ!
箱根駅伝会見 陸上競技部長距離ブロックが抱負

取材/学生記者 奥田陽太(経済2) 影原風音(文2) 倉塚凜々子(国際経営2) 

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2023年1月2、3日の第99回箱根駅伝を前に、陸上競技部長距離ブロック(駅伝)チームの藤原正和監督とエントリーメンバーが12月19日、多摩キャンパス内で記者会見を開いた。藤原監督は「今月の強化合宿も良い形で終えられた。(各区間に)誰を起用するか、良い意味で悩ましい状況」とチームの現状を説明。大学三大駅伝の10月の出雲駅伝で3位、11月の全日本大学駅伝対校選手権で7位という戦績を踏まえた上で、箱根では「往路優勝と、総合3位を目指す」と目標を掲げた。

 

記者会見の司会進行は主務の藤村燦太選手(4年)が務め、エントリー16選手のうち15選手が出席。佐藤宏亮(こうすけ)選手(1年)は授業のため欠席した。会見には報道陣42人が集まり、中大への注目度の高さをうかがわせた。

記者会見に臨んだ箱根駅伝エントリーメンバー

藤原監督は、「新型コロナやインフルエンザなど感染症対策を重視しつつ、最後の仕上げの段階の残り2週間の調整が大事だ」「どの大学も往路重視でオーダーを組んでくる」との認識を示した上で、「一番差のつきやすい3区、4区で勝負できる状態で当日を迎え、(前回5区で6位の)阿部(陽樹=はるき=選手)で山(上り)で勝負して往路優勝を果たしたい。最低でも往路3位でゴールして、復路でどれだけ先頭を争えるかが(今回の)大きなテーマと思っている」と本番を見据えた。

 

続いて選手たち一人ひとりが抱負と決意を表明し、走りたい希望区間を明らかにした。

「4年間の集大成」「最初で最後の箱根」「恩返しの走りを」

☆4年生

若林陽大(はると)・駅伝主将「4年間の集大成として、総合3位を達成できる走りをしたい。希望区間は特にありません。これまで3回、6区を走ったが良い結果ではなかった。どの区間を任されても納得できる結果で終わりたい」

 

助川拓海選手「出走すれば最初で最後の箱根。悔いの残らない走りでチームに貢献したい。希望は10区。持ち味を最大限に発揮できる区間で、区間3位以内を目指して走りたい」

 

田井野悠介選手「任された役割をしっかりと果たして、チーム目標の総合3位以内を達成できるよう精いっぱい頑張りたい。復路後半の8、9、10区であれば自分の力を発揮できる。区間上位の走りをしてチームに貢献したい」

 

千守倫央(ともひろ)選手「今回が最後の箱根。今まで支えてくれた人に恩返しできる走りをしたい。どの区間でも力を出せる練習を積んできたので、任された区間を全力で走りたいと思っています」

 

中澤雄大選手「総合3位の目標に向かって自分の力をしっかりと出し、チームに貢献したい。過去2回で走った7区か8区が希望区間。前回を超える走りをしたい」

 

「山下りをより速く」「4年生を笑顔で送り出す」

☆3年生

大澤健人選手「箱根駅伝は初めてのエントリーですが、チームの目標の総合3位に貢献する走りをしたい。希望区間は6区。出走できたら、(前回まで3年連続で6区を走った)若林(陽大)さん(主将)のタイムより速く走りたい」

 

中野翔太選手「(11月の)全日本(大学駅伝対校選手権)を走れなかったので、箱根ではいい走りができるよう頑張る。全日本のときは調子を崩していたが、12月に入って良い練習ができている。希望は1~4区。調子を上げてしっかり往路で戦いたい」

 

湯浅仁選手「4年生を笑顔で送り出せるように自分の区間で勝負を決めたい。希望(区間)は特にありません。監督から任された区間で求められる仕事をしっかりと果たせるよう準備していきます」

 

吉居大和選手「チームに貢献できるよう頑張ります。希望は1~3区で、チーム状況によって任された区間で力を発揮したい。(前回1区で)速いペースで20キロを持たせたことが自信になった。前回以上の走りをする自信はあります」

箱根駅伝エントリーメンバーは会見後、応援団から熱いエールを受けた=2022年12月19日、多摩キャンパス

「前回の自分を超える」「1つでも上の順位を」「競り合いに自信」

☆2年生

阿部陽樹(はるき)選手「前回の自分を超えられるように、しっかりと今の実力を発揮したい。希望は5区です。前回の経験を生かしてチームの目標に貢献したい」

 

東海林宏一選手「出走にこだわって、(本番までの)残りの期間を集中して取り組んでいきたい。希望は10区です。前回の10区を走った井上さん(大輝・前駅伝主将)や先輩方と競って(今回も)走りたいと思った。1つでも順位を上げられる走りをしたい」

 

山平怜生(れい)選手「区間上位の順位で走り、チームに貢献できるよう頑張る。希望は4区か10区。自分の持ち味で得意な単独走をしっかり発揮できる区間と思っています。10区であれば、最後に他大学と競った際に勝ち切れる自信があります」

「チャレンジする走りを」「任された区間を全力で」

☆1年生

白川陽大(ひなた)選手「1年生らしくチャレンジする走りをして、チーム目標の総合3位に貢献できるよう頑張ります。希望は7区、8区。どのような流れで来ても、もう一段流れを上げて勢いをつける走りをしたい」

 

溜池一太選手「しっかりチームに貢献できる走りをします。任された区間を全力で走ります」

 

吉居駿恭(しゅんすけ)選手「4年生に恩返しできるよう精いっぱい頑張る。往路の区間を希望します。先頭で走りたい」

100回大会、後輩への思いをスローガンに

チームの柱の一人として期待を集める中野翔太選手(3年)
=2022年12月19日、多摩キャンパス

 

 

今年のチームのスローガンは「時代を紡ぐ軌跡を残せ!」。スローガンに込めた意味を問われた若林主将は、「新しい中大の土台を作りたい思いがあって決めました。(2024年の)100回大会の総合優勝に向けて、自分たち(4年生)が後輩に何かを残したいという思い、総合3位と経験値を残したいという思いを込めました」と答えた。

 

藤原監督も「今年の4年生はエース格という選手はいないが、レベルの高い5人がエントリーに入った。コツコツと積み上げてきた学年が『時代を紡ぐ』というスローガンを作ってくれたことがうれしい。何とか総合3位に入り、100回大会へとつなげたい」と期待を込めて話した。

静かに燃える伝統の「C」
学年ごとの“色”をチームの追い風に
学生記者 影原風音(文2)

 

陸上競技部の記者会見を取材して、選手たちが静かに燃えている姿が印象的だった。

 

選手の決意表明では、簡潔に気持ちをまとめて話しているように感じた。緊張感で言葉少なだったのかもしれないが、個人の強さよりもチーム力を大切にしているのだと気付いた。

 

希望区間を問われると、「任された区間でチームに貢献できる走りをしたい」という声を何人もの選手から聞いた。意外だった。なぜなら自分が出走するためには、監督や部内のライバルに自分の走りをアピールしていくものとばかり思っていたからだ。個としての走りを誇示するのではなく、チームが目標を達成するための走りをしたいと訴えた点が駅伝チームの強みであり、とても印象に残った。

 

チームの今年のスローガン「時代を紡ぐ軌跡を残せ!」には、現在だけでなくこの先の新しい中大を作ってほしいという4年生の思いが込められていた。ラストイヤーを悔いなくやり切りたいという4年生の決意にこたえるように実力者がそろった3年生、1年生から刺激を受けながら上級生を支えている2年生、チャレンジ精神で飛び込んでいく1年生と、各学年それぞれが“色”を出して、チームに追い風を吹かせているようだ。

伝統の襷を過去から未来へ

 

大学の陸上、駅伝のレベルが上がり、選手たちは藤原監督の現役時代以上に、ソフト面、ハード面で恵まれた環境の中で走ることに向き合っている。そうした環境への感謝を決して忘れず、4年間で人間的に成長させて送り出したいと、藤原監督は語った。周囲に感謝し、誰にも謙虚に接するという監督の姿勢が、選手にひた向きさとなって伝わっているのではないだろうか。

 

今回の目標は総合3位を掲げている。高々と優勝を狙うのではなく、前回は10区途中まで3位に位置していたことや、100回大会につなげたいという意味合いを含め、現実を見据えて手の届きそうな目標を設定することで、チーム全体の闘志がかき立てられているように思える。

 

駅伝は1人だけが速くても勝てない競技である。積み上げてきたものを走りに表現するためには、選手一人ひとりが主体的に考えて行動することが大切だと感じた。100回大会で優勝するための99回大会にしたいという思いを乗せて、白地に赤い「C」の文字のユニフォームが箱根路を駆け抜ける。

 

伝統という名の襷(たすき)を過去から未来につなげてほしい。そんな気持ちで私もテレビの前で心から応援したい。

チームにあふれる自信
確かに感じた「完全復活」の息吹
学生記者 奥田陽太(経済2)

「今年はいける」。そんな自信を感じる会見だった。出雲駅伝の3位、全日本大学駅伝対校選手権の7位という結果に、藤原正和監督も選手も手ごたえを感じているのだろう。

 

会見場には多くの報道陣が詰めかけ、記者同士があちらこちらで箱根駅伝の話題を弾ませていた。監督と選手が入場してくると、今回の中大への注目度の高さを物語るように、カメラのフラッシュがたかれていた。

 

会見で選手たちの表情は落ち着いているように見えた。最も印象に残ったのはチーム全体からあふれる自信だ。藤原監督は、11月の全日本でうまくいかなかった事前強化合宿を、箱根に向けた今回は良い形で終えることができたと語った。選手も調整に自信を持っているようで、希望する区間か任された区間でベストを尽くすことができる練習を重ねてきたと口々に述べていた。

 

質疑応答では吉居大和選手(3年)、吉居駿恭(しゅんすけ)選手(1年)の兄弟に質問が集中し、質疑応答後の写真撮影でもツーショットに応じていた。次々と記録を塗り替え、伊勢路(全日本)では病み上がりにもかかわらず、区間新記録を打ち立てたエース格の大和選手への注目度はけた違いだった。

戦力的にも精神的にも一致団結

他の出場校や駅伝ファンからは「中大=吉居大和」と見られているかもしれない。しかし、チーム全体が戦力的にも、精神的にも一致団結して戦うという雰囲気を私は感じ取った。経験豊富な3年生、4年生に加え、前回山上りの5区を快走した阿部陽樹(はるき)選手らの2年生、出雲や全日本にも出場した溜池一太選手、吉居駿恭選手らの1年生がエントリー。スムーズな世代交代がチームを強くするというのは、とくに学生のチームスポーツの常識だが、今の中大からはまさにそれを感じる。

 

取材後の和気あいあいとした光景からもチームが一つになっている雰囲気を感じた。会見で、上下関係がそれほど厳しくないこともチームの特徴という話が出たが、それも団結力を高める一因なのだろう。

 

「時代を紡ぐ軌跡を残せ!」というスローガンには、新しい中大の土台を作り、100回大会の総合優勝へつなげるという思いを込めたと、駅伝主将の若林陽大(はると)選手は語った。中央大学の完全復活に向け、現役学生もテレビの前で団結して、箱根路を駆け抜ける中大ランナーの背中を後押ししたい。

会見でも注目を集めた「吉居兄弟」。右が兄の大和選手(3年)、左が弟の駿恭選手(1年)
=2022年12月19日、多摩キャンパス

箱根路に一歩一歩を積み重ねていく
総合3位を目指す真意
学生記者 倉塚凜々子(国際経営2)

99回目の箱根駅伝に向け、年の瀬に出場校の記者会見が次々と開かれるなか、中央大学陸上競技部長距離ブロックの会見が12月19日、多摩キャンパスで開かれた。会見場では、数多くの報道記者から質問が飛び、質疑応答の後は選手に向けて絶え間なくカメラのフラッシュがたかれていた。

 

まぶしいほどの赤色のウインドブレーカーを身につけた選手たちの表情は硬い。しかし、誰が見てもその表情に映る自信が確固たるものであることがうかがえる。シャッター音の響くとても静かな、でもどこか熱を帯びた不思議な空間だった。したたかに、計画的に何かを成し遂げようとしているという印象を、チーム全体から一貫して感じた。

 

質疑応答の際、藤原正和監督や選手からの回答で繰り返し耳にしたのは、意外にも「(目標は)総合3位以内」、そして「100回大会に向けて」といった言葉だった。前回の総合6位という成績から、記者から「3位以内でなく、優勝を目指してもいいのでは」という質問も出た。

選手たちの表情に不思議な爽快感

その問いに対する藤原監督の答えは、「優勝に向けてはまだ“積み重ね”が足りていない。今回を踏まえて次回の100回大会で優勝を狙っていく」だった。4年生が決めたという今年のスローガン「時代を紡ぐ軌跡を残せ!」には、チームとしての経験を着実に積み上げていくことで、後輩たちに100回大会での優勝を託す思いが込められている。

 

十分に準備された長期の作戦がすでに実行に移されているという印象を私は受けた。こうした経緯があって、会見での選手たちの自信に満ちた表情や、落ち着きぶりが生まれているのだろうと、散らばった点と点が結ばれたような爽快感を覚え、なんだかほっとしたような不思議な感情がわいた。

 

お正月には毎年欠かさず、テレビで見ている箱根駅伝。ふとした瞬間にこたつの中の自分の手が握りこぶしになっていることに気付く。懸命に走る選手の姿が忘れられず、気づけば涙が出るくらいにのめり込んで応援していたという経験がある人も少なくないはずだ。今度の大会でもまた、皆で箱根を駆ける選手たち、中央大学の選手たちを応援しましょう。

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