2022.12.12

「波と呼吸を合わせる」
「反復練習のできない“一期一会”のスポーツ」
鈴木うるる選手(国際経営4)が学生サーフィン選手権Ⅴ

学生記者 奥田陽太(経済2)

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国際経営学部4年の鈴木うるる選手が、サーフィンの第51回春季全日本学生選手権大会(2022年6月11~12日、千葉県南房総市の千倉海岸)で優勝した。4人のジャッジ(審判)全員が満点を出す「パーフェクト10」を獲得する堂々の勝利だった。「大会ではいつも優勝が目標。落ち着いて波に乗り、楽しめたことが大きかった」と勝因を振り返っている。

第51回春季全日本学生選手権で優勝した鈴木うるる選手ⓒHina

圧巻のパフォーマンス「パーフェクト10」

春季全日本学生選手権の優勝トロフィーを掲げる鈴木うるる選手
(左は母の香奈子さん、右は弟の瑛斗さん)ⓒToshizou

「久々の優勝で素直にうれしかった」。小柄な体で声を弾ませ た。2021年の秋季全日本学生選手権は3位に終わったが、今回は 「絶対に優勝する」と決めて挑ん だ。最大8本のパフォーマンスのうち、1本のパフォーマンスでジャッジ4人全員が10点満点を出す 「パーフェクト10」が出た。圧巻の優勝だった。

喜びは会場に応援に駆け付けた母の香奈子さん、弟の瑛斗さんに真っ先に伝えた。元プロサーファーの父、善司さんにもSNSで報告した。瑛斗さんもサーフィンに打ち込む「サーフィン一家」が歓喜に包まれた一日だった。

大会出場には、個人として、中央大学の選手としての両方の機会があるが、有名な大学の選手として、中大生として恥ずかしくないように行動することを心掛けている。今大会でも自主的にビーチクリーン(海岸清掃)の活動を行ったという。
 

お気に入りの海 九十九里「サンライズ・ポイント」

サーフボードを手に笑顔の鈴木うるる選手ⓒFumimax

「これといった得意技はありません」と話す鈴木選手のサーフィンの特長は「波に合わせたサーフィン」。得意技がないのが得意技といったところだろうか。波と呼吸を合わせるように、フロー(流れ)を大切にしたパフォーマンスをする。刻々と変化する波に対応する臨機応変さも肝心。事前に決めた通りのパフォーマンスをできないこともあるが、技を成功させたときの喜びはひとしおだ。

好きな海は、地元千葉の九十九里浜沖にある幅500メートルほどの「サンライズ・ポイント」。「いい波が来る」とたとえるこの場所に週2回は練習に訪れる。大会で最高のパフォーマンスを披露するため練習は欠かさない。雪が降る真冬でも海に入るという。
 

魅力多きスポーツ

サーフィンは、円を描くようにえぐられた波にボードと身体を包まれたり、白波を立てる波にボードを乗せたりしながら、いかにスリリングなパフォーマンスを披露できるかを競う。自然相手で同じ波は二度と来ない。鈴木選手は、反復練習のできない“一期一会”な競技であるところに魅力と奥深さを感じているという。

決められたパフォーマンスの時間内に、いい波が来るかどうか、運に勝負が左右される面もある。選ぶ波や観客の歓声の大小、審判個々によっても採点は微妙に異なる。それも奥深さの一つだ。

また、サーフィンという競技にはさまざまなバックグラウンドを持つ人が集まっているという。「私は自由で多様性がないと心地いいと思えない人間なんです」と語る鈴木選手にとって、サーフィンの世界はピッタリとマッチしているのかもしれない。在籍する国際経営学部もさまざまな個性の学生が集まっているという点で居心地がいいという。 

サーフィンとこれから

海に感謝ⓒZen-Z

鈴木選手は2022年7月にプロへの公認テストを受験した。惜しくもパスできなかったが、サーフィンは五輪の実施競技となり、さらに高みを目指すこともできる。

「来年またプロテストを目指しま すか」と尋ねた私に、鈴木選手は「応援してくれる人のために頑張っていて、人と争うことは好きではないんです」と答え、さらに「サーフィンは自分を自分として保つ一つの大事な要素。応援してくれる家族や仲間のため、また自分自身と闘う楽しさを感じるために、プロを目指すことを含めて、大切なものとして続けていきたい」と力を込めた。卒業後は一般企業に就職するという。

尊敬しているのは、企業経営者であり努力家の祖母の計代さん、やりたいことをいつも応援してくれる母の香奈子さん、サーフィンをコーチしてくれた父の善司さんの家族3人。好きな言葉の「実るほど頭を垂れる稲穂かな」も計代さんが教えてくれた。将来の目標は「自分らしくあり続けること」。「自分らしさ」を形作っていくのも、きっと応援してくれる周りの人との関わりなのだろう。

名前の「うるる」の由来は、オーストラリア大陸中央部にそびえる世界遺産の一枚岩「エアーズロック」の先住民族の呼び名から。鈴木選手は壮麗な「ウルル」のように、どんなフィールドでも輝き続けるに違いない。

波と呼吸を合わせる―ⓒToshizou

コロナ禍で交換留学を断念…サーフィンが私を救ってくれた
高難度の技「オフザリップ」が決まる喜び

大学1年生の頃は多摩キャンパスと練習場所の海との往復に時間がかかり、練習頻度が減ったが、コロナ禍に伴うオンライン授業への切り替えで、練習頻度を確保できるようになり、実力を蓄えていった。

しかし、中大入学前から楽しみにしていた米国への交換留学をコロナ禍で断念せざるを得なくなったことはショックだったという。自然相手の屋外競技であり、屋内競技ほどはコロナの影響はなかった。「サーフィンが当時の私のメンタルを救ってくれた」と振り返っている。

いまにも崩れそうな波の最高点で、サーフボードを素早くターンする高難度の「オフザリップ」など、大会で技が決まったときが一番の喜びという。

 

 

鈴木うるる選手

千葉・木更津高卒、国際経営学部4年。身長145センチ。小学6年でサーフィンを始めた。サーフィンを通して海外や英語に興味を持ち、「英語を学ぶのでなく、英語で何かを学びたい」と国際経営学部に進学した。

ライバルは自分自身。普段から「きのうの自分に勝とう」と考えているという。中大に「サーフィン部」はないが、2021年の秋季全日本学生選手権では3位に入賞し、計32競技大会の順位に応じて付与されたポイントで大学日本一を競う同年の「UNIVAS CUP」での中大の上位入賞(関東10位、全国12位)に貢献した。
 

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