2021.12.24

ダイナミックなアタックが持ち味
東京五輪で躍動 2024パリでメダル獲得を目指す
フェンシング・女子フルーレ 上野優佳選手(法2)

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今夏の2020東京オリンピック。5つの輪に象徴される夢の舞台に立った喜びと、メダルに手が届かなかった悔しさ。若きアスリートは、競技人生の現在の足跡を東京に刻み、3年後のパリ五輪での大いなる飛躍を誓う。現役生の「白門オリンピアン」(五輪選手)として、貴重な経験を積んだフェンシング・女子フルーレの上野優佳選手(法2)に、五輪や競技への思いなどを聞いた。

東京五輪のピスト(試合場)で躍動する上野優佳選手(左)(写真提供:共同通信社)

小さな頃からの夢の舞台

「五輪出場は小さな頃からの夢。調子も良くて、いけるという手応えがあった。個人でも団体でもフルーレでメダルを取りたいという気持ちが強かった」

 

上野優佳選手がそう振り返る。個人では6位入賞と日本女子選手として過去最高の成績を残し、団体でも6位に入賞した。「緊張するかもしれない」と想像していたが、それ以上に楽しみだなという気持ちが強かったという。19歳(当時)という若さに似合わぬ強心臓ぶりだ。

 

しかし、エペの男子団体では日本が金メダルを獲得し、自身はメダルに届かなかった。悔しさをかみ締めた。

 

「相手の攻めを封じてから攻めに転じる。この得意な戦い方がしっかりと通用した」。五輪の個人3回戦(ベスト16)のニコル・ロス選手(米国)との対戦で、調子の良さを感じた。ディフェンス力の高いロス選手に対して、一進一退の攻防から徐々にリードを奪っていったことで、「少しびびっていた気持ちが、勝てるという確信に変わった。満足のいく試合だった」とうなずく。会心の勝利だったといっていいかもしれない。

会心の勝利 未来への課題

 

ただ、この良い流れを次の準々決勝につなげられなかった。優勝したリー・キーファー選手(米国)との大一番について「キーファー選手対策をしっかりとして、(力を)出し切ったつもりなので後悔はない」と言いながらも、「決め切る強さは、彼女が一枚上だった」と続けた。

 

キーファー選手の強さの裏付けとして「経験」「瞬時の判断力」を挙げ、「そうしたものを磨いていきたい。戦術を増やしていきたい」と課題を見据える。

 

東京五輪の1年延期は「より成長できる」と前向きに捉えた。競技に対するモチベーションの維持は難しかったが、トレーニングや練習の相手になってくれた同じフェンシング部の兄、優斗さん(法4)の支えが大きかった。

 

けがの克服へ、五輪前の今年3月には手術を決断した。「コーチや支えてくれる人がいたからこそ、けがを乗り越えられた」と周囲への感謝も忘れない。

目標は「五輪でのメダル」

団体女子のチームメートとともに(中央が上野選手)(写真提供:共同通信社)

ナショナルチームのコーチで、アトランタ五輪銅メダリストのフランク・ボアダン氏(フランス)の存在も大きい。

 

「言われてすぐに直せるタイプではないし、練習でも良かったところより、悪かったところを探してしまう」と自己分析する上野選手に対し、少しでもポジティブ思考になるようにと、気持ちを切り替えるきっかけとなるアドバイスをいつも送ってくれるという。

 

フットワークの強化や戦術面だけでなく、メンタルを鍛えて強くしてくれる存在といえる。

 

東京五輪では「自分より上のレベルの選手がたくさんいる」と感じた。年齢的にあと2回以上は出場のチャンスがある五輪で「個人でも団体でも金メダルを獲得する」のが目標だ。

 

自身の活躍によってフェンシングの知名度をさらに上げて、「支えてくれた人に結果で恩返ししたい」と強く願っている。

上野優佳選手

 

うえの・ゆうか。大分県出身。星槎国際高卒、法学部2年。身長159センチ。2018年世界ジュニアカデ選手権、同年のユース五輪でともに女子フルーレ優勝。ダイナミックなアタック、スピード感のあるフットワーク、素早い剣さばきなどが持ち味。フルーレで対戦する全員がライバルという。兄の優斗さん(法4)もフェンシング部に在籍、父の正昭さんも中大フェンシング部OBで元国体選手というフェンシング一家に育ち、小学校低学年でフェンシングを始めた。

 

【東京オリンピック成績】

フルーレ女子個人

〈2回戦〉 ◯15-5 ノラ・モハメド(エジプト)

〈3回戦〉 ◯15-9 ニコル・ロス(米国)

〈準々決勝〉●11-15  リー・キーファー(米国)

 

フルーレ女子団体日本(上野優佳、東晟良、東莉央、辻すみれ)

〈決勝トーナメント準々決勝〉●日本36-45米国

〈5~8位決定予備戦〉◯日本45-27エジプト

〈5、6位決定戦〉●日本31-45カナダ

 

バッハIOC会長と競技会場で"再会"

上野優佳選手は、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長と並んで、フルーレの女子団体決勝と3位決定戦をピスト(試合場)正面の観客席で観戦した。フルーレ・チームのメンバー、コーチらも一緒だった。上野選手の2018年ユース五輪出場をバッハ会長が覚えていてくれて、うれしかったという。

 

バッハ会長はフェンシング選手だった現役時代、1976年のモントリオール五輪のフルーレ団体で、西ドイツ(当時)の一員として金メダルを獲得している。

☆フェンシング競技の3種目「フルーレ」「サーブル」「エペ」

 

フルーレは、背中を含む胴体への攻撃が有効となる種目。攻撃は「突き」のみで、先に腕を伸ばし剣先を相手に向けた側に攻撃の「優先権」が与えられ、相手に剣を払われたり、間合いを切って逃げられたりすると、優先権が相手に渡る。攻防をめぐる瞬時の技の応酬が見どころとなっている。

 

サーブルは、頭や腕を含む腰から上の上半身への攻撃が有効となる。攻撃は「斬り」と「突き」。フルーレと同様に優先権にのっとりゲームが進行する。攻撃の要素に斬りが加わることで、より激しい攻防が展開される。

エペは、頭からつま先までの全身への攻撃が有効で、攻撃は「突き」のみ。先に突いた方がポイントを獲得し、同時の場合は両者にポイントが入る。全身が攻撃対象となることなどから、変化に富んだ試合展開が魅力だ。

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