2020.12.16

「プロの道」切り開いた!
五十幡亮汰外野手(法4)は北海道日本ハム、牧秀悟内野手(商4)が横浜DeNA

取材・文/学生記者 石井伊蕗(法3)

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ドラフト2位指名に歓喜と感謝 硬式野球部の2人

10月26日夜、プロ野球新人選手選択会議(ドラフト会議)で、中大硬式野球部の五十幡(いそばた)亮汰外野手(法4)、牧秀悟内野手(商4)が指名を受け、プロ野球選手としての道を切り開いた。五十幡選手は北海道日本ハム、牧選手は横浜DeNAから、ともに2位で指名され、仲間の歓喜の輪に包まれた。

刻一刻と映像で伝わるドラフト会議の緊張感から、静まり返っていた記者会見場(多摩キャンパスCスクエア)に、指名とともに一斉に沸き起こった拍手。先ほどまでの硬さが解けたのか、コロナ対策のマスク越しに2人の顔に笑みがこぼれるのが分かった。指名が確定すると、2人は硬式野球部の清水達也監督に頭を下げて感謝した後、固く握手を交わし、吉報を待っていた部員と喜び合った。

大勢の報道陣が詰めかけ、会見は熱気に包まれた=10月26日、多摩キャンパス「Cスクエア」

この日、Cスクエアでは、大型スクリーンでドラフト会議の模様が中継され、五十幡、牧両選手、清水監督のほか、硬式野球部会長の福原紀彦学長らが待機。2人の上位指名が期待されたことから、テレビ、新聞などの報道陣ら約140人が集まり、注目度も高かった。

 

コロナ禍で、記者や関係者は入場前に検温と消毒を済ませ、会見用の座席もソーシャルディスタンスが保たれている。私も同じ手順を踏んで着席した。

 

会議開始前、五十嵐、牧両選手はチームメイトと談笑し、リラックスした雰囲気だ。15分前になると、両選手と清水監督がホール中央の席に座る。4年間、一緒にボールを追い、苦楽をともにしたチームメイトたちが見守るような形で後ろの座席に陣取った。

 

真剣なまなざし「野球にかける思い」

2人はまっすぐ中継の画面を見据えている。真剣なまなざしからは、まさに人生をささげてきた、野球にかける熱い思いがうかがえた。

 

午後5時、ドラフト会議が始まった。Cスクエアに緊迫した雰囲気が張り詰める。1巡目に同じ大学生の早川隆久投手(早稲田大)が東北楽天、佐藤輝明内野手(近畿大)が阪神から指名を受けた。中継をじっと見つめる2人。1巡目に名前は呼ばれなかったものの、あわてる様子はない。

歓喜の瞬間

2巡目。ほかの選手の名前が呼ばれると、硬式野球部員や記者から時折、ため息が漏れる。会場にいる誰もが今か今かと2人の名前が呼ばれるのを待った。2人の方がやきもきする気持ちでいっぱいだっただろうが、やはり表情を崩すことなく整然としていた。

 

そして、ついに―。

「北海道日本ハム 五十幡亮汰外野手」

 

会場は一気に拍手に包まれた。五十幡選手は小さく礼をし、ほほ笑んだ。どこか控えめな喜び方だ。そうだ、まだ牧選手の名前がまだ呼ばれていないのだ。きっと牧選手の名前が呼ばれてから喜びを分かち合うのだろう。会場の拍手はやみ、先ほど同様に静まり返った。そして五十幡選手の名前が呼ばれてから3分後-。

 

「横浜DeNA 牧秀悟内野手」

 

再び大きな拍手、そして歓声が起こる。牧選手にとって、この3分間は少し長く感じたかもしれない。それでも、2人とも笑顔で互いに顔を見合わせている。Cスクエアを熱気が包んでいた。

「2人にとってここからがスタート」 五十幡、牧両選手が会見

ドラフト指名を受け、五十幡亮汰外野手、牧秀悟内野手は記者会見に臨んだ。会見での2人はすでに中大生、硬式野球部員ではなく、プロ野球選手としての顔つきに見えた。2人にとって、ドラフト会議での指名がゴールではない。ここからがスタートなのだと思った。

五十幡選手「母との約束、叶える」「盗塁王をとりたい」

五十幡亮汰選手

五十幡選手は「うれしいというか、ほっとした気持ちがすごくありますが、ここからが勝負」と語った。中学時代に陸上短距離で、現在の100メートル日本記録保持者、サニブラウン・アブデル・ハキーム選手に勝った実績から、「サニブラウンに勝った男」の異名がある。もちろん、プロ野球でも自身の強みである足を生かして活躍するつもりだ。

 

「足が一番の武器。足を生かして走攻守3拍子そろった選手になれるように頑張りたい」「まずは盗塁王を取りたい」と抱負を話した。

 

小学1年で野球を始めた。プロ野球選手になることは、小学3年のとき病気で亡くした母、恵子さんとの約束だった。ずっと夢を応援し、見守り続けてくれていた母に対し、「これから、ここからが恩返し。恩返ししていかなきゃいけないと思うので、『頑張るからまた応援してね』と伝えたい」と話した。

牧選手「右打者で日本を代表する選手に」「常に感謝」

牧秀悟選手

牧選手は、チャンスに強い打撃力を生かして「1年目から活躍できるような選手になりたい」「最後は右バッターで日本を代表するような選手になりたい」と、将来の目標を口にした。

 

会見中、家族をはじめ、支えてくれた周囲への感謝の気持ちに触れることが多かった。コロナ禍で東都野球春季リーグが中止され、モチベーションが下がっていたときも、地元の友達や親戚、家族の言葉に助けられたという。

 

「プロ野球に入れたのも、周囲のおかげ」と感謝を口にし、「家族に一番早くありがとうと伝えたい」と話した。先に五十幡選手が指名され、「五十幡の名前が挙がったときに焦りというか、(自分の名前は呼ばれるかという)ちょっと不安な気持ちはありました」と正直な胸の内も打ち明けた。

記者会見で質問する学生記者の石井伊蕗さん

いよいよ、プロの世界に飛び込む2人。野球だけでなくプライベートでも一番といっていいほど仲が良いようだ。会見の結びに、五十幡選手は「牧が活躍していれば自分も負けられない」、牧選手は「五十幡は足がある。盗塁王を目標に頑張ってほしい」と互いにエールを送り合った。プロの世界でも互いの活躍を励みに野球と向き合ってほしいと強く思った。

五十幡亮汰(いそばた・りょうた)外野手

栃木・佐野日大高卒、法学部4年。172センチ、70キロ、右投げ左打ち。中学時代の陸上短距離の実績から「サニブラウンに勝った男」として知られる。50メートル5秒6の俊足。強肩と広い守備範囲、着実に力をつけた打力の評価も高い。東都リーグでは1年春からレギュラーとして出場、2年秋、3年秋にベストナイン。

 

 

牧秀悟(まき・しゅうご)内野手

長野・松本第一高卒、商学部4年。178センチ、90キロ。右投げ右打ち。東都リーグで、2年秋から3季連続ベストナイン。3年春首位打者。3年秋はリーグ最優秀選手となり、中大の30季ぶりの優勝に貢献。3年時には大学日本代表にも選出され、日米野球に出場した。広角に打ち分ける勝負強い打撃がアピールポイント。

「4年間で人間的にも成長」「活躍に期待」 硬式野球部 清水達也監督

硬式野球部の清水達也監督は、教え子の2選手の指名について「私自身もほっとしています」と喜んだ。「野球の技術はもちろんですが、人間的にもこの4年間ですごく成長したのではないかと思っている」と、間近で見守ってきた2人の成長を語った。

「下級生のころは、すごく苦しいときもあったと思いますし、そういうものを乗り越えてプロの世界に入っていくと思います。ここから今度は、私自身も彼らに期待している」とエールを送った。

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