駅伝主将の吉居駿恭（しゅんすけ）選手（４年）は「最後となる箱根駅伝で優勝したいという気持ちで一年間、取り組んできた。箱根で勝ちたいという気持ちをどれだけ強くできるか、優勝への思いを強く持ってほしいと（チームメイトに）言葉をかけることを意識してきた。優勝して卒業できるよう頑張りたい」と決意を語った。

各選手の走りたい希望区間とその理由、抱負などは次のとおり。

☆４年生

吉居駿恭・駅伝主将　最後の箱根で優勝したい。走りたい区間はとくにありませんが、与えられた区間で区間賞を取り、先頭で襷（たすき）を渡したい。

折居幸成選手　希望区間は５区です。自分の強みである上り（の走り）を生かせると思うからです。自分の力を発揮してチームに貢献したい。

白川陽大（ひなた）選手　希望区間は９区です。どの大学も強く、優勝争いがどこまでもつれるかわからない状態で、９区で自分が勝利を決定づける走りをしたいと思います。

溜池一太選手　６区以外ならどこでも行けます！　今回は区間賞よりも、総合優勝に貢献できる走りをしたいと思っています。

吉中祐太選手　希望は９区です。前回９区を走って目標タイムに届かず、悔しい思いをした。区間賞を狙って、しっかり走りたい。

☆３年生

佐藤蓮選手　希望区間は６区です。理由は前々回も６区を希望して走れなかったことへのリベンジと、入学前から山の区間に憧れがあり、下りが得意なので希望します。

柴田大地選手　希望は１区です。１区で区間賞を取り、チームに良い流れをもたらすことが一番重要かなと思うので、１区を走りたい。

藤田大智選手　５区、６区以外ならどこでも走れると思う。任された区間でしっかりと自分の役割を果たしたい。

本間颯（はやて）選手　希望は（前回区間賞を取った）３区です。前回は１区、２区の先輩が良い流れをもってきてくれた。今回は59分台を出して、チームの優勝を決められるような走りをしたい。

☆２年生

岡田開成選手　希望はとくにありませんが、強いていえば７区です。前回はゲームチェンジャーとして７区に出走したが、悔しい結果に終わった。区間新記録に迫るような記録（タイム）で走りたい。

佐藤大介選手　希望は（前回と同じ）８区です。前回は区間最下位で悔しい結果だった。今回は区間賞を取り、自分の力をしっかりと発揮したいと思っている。

七枝（ななつえ）直選手　希望区間はとくにありません。チームが勝つために必要な区間を誰にも負けない走りで駆け抜けたい。さまざまな方々に恩返しとなる走りをできるよう頑張る。

並川颯太選手　希望区間は10区です。前回はあと一歩で出走がかなわなかったので、リベンジの意味を込め、自分が最後に優勝を決定づける走りをしたい。

今回で３度目となる箱根駅伝の共同取材（記者会見）だったが、これまでと明らかに違う、いい意味で選手それぞれの優勝への思いを強く感じ取れた会見だった。というのも、選手たちの言葉から、「中央大学は伝統校だから優勝しなければならない」という義務感を感じなかったからだ。選手たちは自分たちの可能性を信じ、「優勝したいから優勝を目指す」という主体的で明確な意志を持っていた。

「４年生のため」「家族や応援してくれるファンのため」、あるいは「去年の走りへのリベンジ」など、個々の思いと真摯に向き合いながら、ひたすら優勝を目指して努力を積み重ねてきたことが、会見を通して伝わってきた。その努力の過程も具体的な言葉で説明されていた。夏合宿でしっかり距離を踏み、地道に練習を重ねてきた道のりを語る選手が多く、積み重ねてきた豊富で質の高い練習が確かな自信につながっているように感じられた。

11月の全日本大学駅伝対校選手権の２位という結果に、駅伝主将の吉居駿恭選手をはじめ選手たちが決して満足していない姿勢も印象的だった。さらに高みを目指す言葉や表情から、チームが本気で箱根の頂点を狙い、なおかつ、その実力を備えていることがうかがえた。心強く頼もしい姿に映った。

藤原正和監督も、優勝への自信を言葉ににじませた。過去の記者会見で、藤原監督は簡単に「優勝」という言葉を口にしない印象が強かったが、今回はその言葉を何度も耳にした。チーム全体に優勝するんだという意識が浸透し、監督就任以来、指揮した中で最も優勝に近いチームになってきたといえるだろう。苦い経験も乗り越えてきた藤原監督だからこそ、その言葉に重みを感じ、その言葉を聞けたことにうれしさを覚えた。

中大生として毎年欠かさず箱根駅伝を見てきた。悔しさをかみしめる表情、快走後の笑顔、粘りの走り―。選手たちの姿に胸を打たれてきた。多くの選手が納得のいく走りをして、笑顔を見せてくれる箱根駅伝になってほしい。そして、ひたすらに追い続けてきた総合優勝という目標が達成されるなら、心から喜ばしいことだと感じている。

前回101回大会の予選会（2024年10月）を現地で取材し、その101回大会をテレビの前で食い入るように見つめ続けた私にとって、今回の記者会見で目にしたのは、見覚えのある選手のよりたくましさを増した表情、顔つきだった。

藤原正和監督は「吉居大和がいた前々回より今回の方が総合優勝への手ごたえがある」と語った。上位10人の10000メートルの平均タイムが史上初の27分台に突入というデータの裏付けとともに、選手全員の箱根に対するパッション（熱情）の強さにも言及した。駅伝主将の吉居駿恭選手については、「普段はあまり弱音を吐かないが、なかなか自己ベストが出ないなどつらい思いもしていたはず。練習前にチームメイトにかける言葉に強さを感じるようになり、チーム全体をよく俯瞰して見てくれている」と、その姿勢に感謝し、主将としての成長を褒めた。

私と同じ２年生の選手たちが、よりたくましく成長した姿も印象的だった。とくに2025年の箱根駅伝に出走した岡田開成選手、佐藤大介選手から、やる気に満ちた言葉を聞くことができた。岡田選手は、洛南高校（京都）の先輩である駒澤大の佐藤圭汰選手（４年）の名前を挙げ、2025年箱根駅伝でも、11月の全日本大学駅伝対校選手権でも同じ区間で競り合い、「全く歯が立たなかった」と悔しそうに振り返った。今回の箱根でもし同じ区間を走るなら、リベンジしたいと闘志を見せていた。一方、佐藤大介選手は、「前回は８区の区間最下位で本当に悔しかった。今回は区間賞を取りたい」と力強く宣言した。緊張やプレッシャーで思うような走りを見せられなかった前回の経験を経て、今回は気持ちの部分でゆとりを作れていると語った。２人が発した言葉は、不安を感じさせず、これまでの自分を信じて走るのみという姿勢を受け取ることができた。

山の上り下り（５区、６区）を走った経験者がいない中でも、藤原監督と選手たちは、混戦を抜け出しての総合優勝を狙っている。今回の会見を取材して、またひとつ駅伝にのめり込んでいく私がいる。すさまじいスピードで成長を続ける選手たちの走りをとても楽しみにしている。