2025.12.19

気持ちの強さ、団結力が大舞台で結実
33年ぶり 卓球部がインカレ男子団体を制覇

取材&文/学生記者 荒田智海(文2) 九十歩胡春(文2)

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卓球部が、2025年7月の第94回全日本大学総合卓球選手権大会(インカレ、団体の部=男子)で33年ぶり7回目の優勝を飾った。決勝は3-2で早稲田大に競り勝った。長い雌伏のときを経て、悲願を達成したメンバーに喜びや勝因などを尋ねた。(記事中の写真はすべて卓球部提供)

インカレ団体戦を制した卓球部のメンバー

道廣晴貴選手が殊勲賞獲得

大会で殊勲賞を獲得した道廣晴貴選手

 

 

「うれしいより、びっくりだった」「本当に優勝したのかと、実感がわかなかった」

 

33 年ぶりの栄冠にも、谷本凌・前主将(インカレ時の主将=文4)、青山貴洋・現主将(文3)は同じ思いを抱いていた。

 

青山主将は「1回戦から準々決勝まで1試合も落とさずにストレートで勝ち、良い流れで準決勝、決勝に臨めた」と振り返った。強敵と思われた大学がトーナメント序盤に姿を消し、優勝に向けてより気持ちを新たにしたという。

 

結果的に準決勝、決勝は想定していなかった相手との対戦となったが、いずれもチームの勝敗に直結する最後の5番手として道廣晴貴選手(文3)が出場した。「力を出し切れば、結果はついてくる」と重圧をはねのけ、中大に勝利をもたらした。道廣選手は大会の殊勲賞を獲得した。

「ダブルス」勝利で躍進

決勝のダブルスで活躍した小野泰和選手

谷本前主将は「(準決勝も決勝も)ダブルスを勝てたことが大きかった」とし、とくに決勝のダブルスで、前出陸杜選手(商3)、小野泰和選手(文1)のペアが、ゲームカウント0-2、ポイント3-6という土俵際に追い込まれた局面から、底力を見せて逆転勝ちしたことを一番の勝因に挙げた。

 

惜しくも2位に終わった春季関東学生リーグ戦(男子1部)の悔しさから、「インカレは絶対に優勝したいという思いが強かった」と、谷本前主将は打ち明ける。「その思いがあって、ベンチの全員が最初から最後まで良い雰囲気で応援できた。戦っている選手も思い切ってプレーできたと思う」と、チームメイトに感謝した。

 

波が少なく安定したプレーが特長という青山主将は、「インカレ優勝は秋の関東リーグ戦に向けて、チーム全員の自信になった」と胸を張った。準決勝、決勝ともゲームカウント3- 0で相手を退けた道廣選手も、「全員が一致団結できたからこその優勝だった」と、“チーム一丸”を強調する。

 

「(3-0という)結果だけだと楽に勝ったように見えるが、いつ挽回されるか分からず、一本も気を抜けなかった」と振り返り、勝った瞬間はほっとした気持ちになり、自然と仲間に向かってガッツポーズを繰り返したという。

 

道廣選手は「高校時代は1、2 番手での出場が多かったけれど、僕は緊張しないタイプ。5番手は確かにプレッシャーがきついので、メンタル面が成長できた」とも話した。

 

秋季関東リーグ戦とともに、来年の春秋リーグ戦とインカレも「全部勝ちたい」と、青山主将と道廣選手は口をそろえた。卓球部の躍進に今後も注目だ。

決勝で熱戦を繰り広げた青山貴洋選手

☆ 中央大学ベンチ入りメンバー

 谷本 凌 選手  (文4)=主将

 青山 貴洋 選手 (文3)

 藤本 雅也 選手 (経済3)

 前出 陸杜 選手 (商3)

 道廣 晴貴 選手 (文3)

 小野 泰和 選手 (文1)

 石山 浩貴 選手 (文1)

 菅沼 翔太 選手 (文1)

 

 

第94回全日本大学総合卓球選手権大会(団体の部=男子)

(2025年7月3~6日、三重・四日市市総合体育館)

 

▽1回戦      中央大 3 -0 札幌国際大

▽2回戦      中央大 3 -0 立命館大

▽準々決勝     中央大 3 -0 日本体育大

 

準決勝      中央大 3-2 朝日大

                      青山貴洋 1-3 岡野俊介〇

        〇小野泰和 3-1 川村康人

〇前出陸杜・小野泰和 3-0 岡野俊介・梅村友樹

                      前出陸杜 1-3 梅村友樹〇

                  〇道廣晴貴 3-0 王翊翔

 

▽ 決勝      中央大 3-2 早稲田大

                      青山貴洋 1-3 濵田一輝〇

                  〇小野泰和 3-0 磯村拓夢

〇前出陸杜・小野泰和 3-2 濵田一輝・徳田幹太

                      前出陸杜 0-3 徳田幹太〇

                  〇道廣晴貴 3-0 濵田尚人

 

(中央大は33年ぶり7回目の優勝、記録は日本学生卓球連盟サイトより抜粋)

【取材後記】
「うまくなりたい、強くなりたい」 卓球への情熱が支え
学生記者 荒田智海(文2)

 

優勝を決めた最後のショットが決まった瞬間、実力者ぞろいといわれながらも、長らく優勝から遠ざかっていた卓球部のメンバーは「ヤーッ!」と雄たけびを上げて立ち上がり、会場は大歓声に包まれたという。

 

「優勝を目指していた春季関東学生リーグ戦は2位。その悔しさと、インカレ団体は3年連続ベスト4ということもあり、今回はそれ以上の成績を目指して挑みました。勝ち上がるにつれて、だんだんと優勝できるかもしれないと思うようになりました」(道廣晴貴選手=文3)

 

大会前から優勝を意識していたわけではない。道廣選手だけでなく、今回取材に応じてくれた谷本凌・前主将(文4)、青山貴洋・現主将(文3)も同じイメージを描いて、大会に臨んでいた。

 

インカレ団体は対戦ごとにシングルス2戦、ダブルス1戦、シングルス2戦の順に5試合で争う。全試合で1番手を任された青山主将は、準決勝・決勝と敗れはしたものの、「トップバッターが試合の流れを左右する。仮に勝てなくても、良い感触をもって2番手の選手につなぐ」ことを心がけたという。一人ひとりが自身の役割を理解し、試合でそれを表現すること。メンバー全員がこれを徹底した先に優勝があったのだ。

 

3年生になり、以前に比べて思い切りのよいショットを打てなくなっていることを実感していた青山主将は、スクワットなどの筋力トレーニングの量を増やし、体幹を鍛えることに力をそそいだ。一方で、「試合で弱気になることがある。メンタル強化が課題」と、自身の弱点とも素直に向き合った。強くなるために自分を追い込む姿に胸を打たれた。

 

中大は1回戦と2回戦、準々決勝をストレートで勝ち上がり、5番手の最後のシングルスを任された道廣選手は、準決勝がインカレ初戦、決勝が2戦目となった。道廣選手の勝敗は必然的にチームの成績に直結する。決勝は、春のオープン戦で惜敗した相手との顔合わせだったが、プレッシャーがかかるはずの試合にも「全力を出し切る」と臆することなく戦い抜いた。

大一番も自分のプレー貫く

 

「結果(ゲームカウント3-0)だけを見ると、余裕をもって勝ったように見えますが、一本ずつ力を込めて打ちました。いつ挽回されても不思議はないので、消極的にならないように、自分のスタイルを貫きました」と振り返った。

 

気持ちの強さも見逃せない。「僕は緊張しないタイプ。5番手として戦う覚悟はできていたので大丈夫でした。インカレ決勝の5番手を戦うことができる人なんて、なかなかいません

から」―。

 

「勝負の分かれ目」を尋ねると、「勝ちたいという気持ちの強さで決まる」と答えた。競った場面で、いかに思い切ったプレーができるか。守りに入らず、自分のプレーをやりきること。タイトルがかかった大一番でも、道廣選手が硬くなることはなかった。仲間の声援を背に受け、自分の戦い方を貫いたことが勝因の一つといえるだろう。

 

「精いっぱいやって、できなかったらしようがない。この精神で卓球と向き合っています」。道廣選手を支えているのは、「卓球がうまくなりたい、強くなりたい」という情熱だ。来年また、歓喜の声を聞きたい。

そろってVサイン

【取材後記】
「好きなことに真剣に」 まぶしい姿
学生記者 九十歩胡春(文2)

 

ふだんの練習場所となっている多摩キャンパス第一体育館で、インカレ団体戦に出場した卓球部のメンバーにインタビューした。その話の内容から、多くの発見があった。まず、団体戦の目標を初めから意気込んで「絶対優勝」としたのではなく、「最低でもベスト4」と決めていたことに驚かされた。

 

今回の団体戦は優勝候補と目された強豪校が序盤で敗退するという波乱の展開となった。上位に勝ち上がるにつれて自信を深めた中大の選手たちは、徐々に優勝を意識するようになっていく。私はそれがとても現実的で謙虚な姿勢だと感じた。

 

青山貴洋主将(文3)は、波乱が起き、想定と異なる相手と向き合っても、選手各自がビデオなどで対策を練り、柔軟に対応できたことが勝因だと胸を張った。インカレ当時の主将、谷本凌選手(文4)は「正直、優勝できるとは思っていなかった。(直後は)実感がわかなかった」と振り返り、「(決勝戦3戦目の)ダブルスを取れたことが大きな勝因。優勝したいという思いがベンチからの応援にも出ていた」とうなずいた。

 

取材を通して、アスリートとしての体づくりや技術の向上も大切だが、精神的な強さがプレーを支えているという印象を受けた。平日の授業後や週末の練習、スクワットなどの筋力トレーニングに加えて、青山選手らはメンタルの大切さを熱っぽく語っていた。

重責にも「緊張しないタイプ」

 

卓球選手に求められる資質を尋ねたところ、青山主将は相手の嫌がるプレーを続ける「ずる賢さ」と「自我の強さ」を挙げた。試合で弱気になる場面をなくそうと、練習試合でも勝ちにこだわっているという。

 

5戦で勝負を決するインカレ団体戦で、最後の5戦目を任されたのが道廣晴貴選手(文3)。チームの勝敗を決する重責の5番手での出場にも「緊張しないタイプ」と話した通り、焦る気持ちはなく、試合に臨んだ。

 

「実力があっても守りに入ってしまい、自分のプレーができないことがある。最後はどれだけ勝ちたいかという気持ちが大事」という言葉から、メンタルがプレーにいかに影響を与えるかとともに、道廣選手の自信もうかがえた。

 

道廣選手は岡山出身で、中学・高校時代は福岡の名門卓球クラブに所属した。小学6年生のときには、親元を離れて一人で卓球に打ち込む環境が自立を促し、自分の糧になると前向きに捉えていたという。「卓球が好きだから続けられている」と語る表情から、「卓球愛」とともに、継続してきた努力と精神的な強さを感じ取れた。

 

道廣選手をはじめ、好きなことを当たり前のように真剣に続けられている卓球部の選手の姿は、大学生になって競争や挑戦を避けがちになっている私に、とてもまぶしく映った。

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