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2025.12.16

プロで輝け! 硬式野球部3選手にドラフト指名

取材&文/学生記者 倉塚凜々子(国際経営4) 金岡千聖(商3) 松岡響紀(経済2) 荒田智海(文2) 

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岩城颯空選手「埼玉西武ライオンズ」2位
繁永晟選手「東北楽天ゴールデンイーグルス」3位
皆川岳飛選手「読売ジャイアンツ」4位

2025年10月23日のプロ野球ドラフト会議で、中央大学硬式野球部の3選手が指名された。多摩キャンパスでドラフトの中継画面を見つめていた岩城颯空(はくあ)投手(経済4)に埼玉西武ライオンズ2位、繁永晟(あきら)内野手(商4)は東北楽天ゴールデンイーグルス3位、皆川岳飛(がくと)外野手(経済4)に読売巨人軍4位で、待ち望んだ指名の報が届いた。3選手は記者会見で抱負を語り、新たなステージでの活躍に期待を膨らませていた。

指名後、ほっとしたような笑顔を見せた3人(左から)皆川岳飛選手、岩城颯空選手、繁永晟選手
=2025年10月23日、多摩キャンパスCスクエア

多摩キャンパスCスクエアで待機

 

硬式野球部の3選手はこの日、ドラフト会議が始まる時間に合わせて多摩キャンパスCスクエアの中ホールで、樫山和男部長、清水達也監督、同期や後輩の部員たちとともに待機し、吉報を待った。

 

1巡目での指名はなかったが、岩城選手の名前が最初に埼玉西武2位でアナウンスされると、一斉に歓声と拍手がわく。中ホールはすぐさま記者会見の場へと変わり、岩城選手は「うれしいという感情しかない」と笑みを交えながらも緊張気味に言葉を発した。さらに「僕の魅力は真っすぐ(ストレート)。ピンチでも真っすぐで押して抑える強気のピッチングを見てほしい」と早くもファンに向けてアピールした。

 

同席した樫山部長は「1年生のときから期待された選手で、チームの大黒柱として活躍してくれた。(埼玉西武で)優勝のピースとなってほしい」と隣の岩城選手に語りかけ、清水監督も「(中大卒業生で埼玉西武の)古賀(悠斗捕手)とバッテリーを組む姿を見たい」と期待していた。

指名後、ガッツポーズで会見場に現れた皆川岳飛選手

互いの指名を喜び合う岩城颯空選手(左)と繁永晟選手

3選手がそろって記者会見に臨んだ

会見中も次々に指名の報

 

岩城選手の会見が始まり約15分が過ぎた頃、東北楽天3位で指名された繁永選手が待機していた別室から笑顔で姿を現し、岩城選手や樫山部長、清水監督とがっちり握手。その後、読売巨人軍4位で指名された皆川選手が目を潤ませながら登壇し、3人がそろっての記者会見となった。

 

繁永選手は「(東北楽天は)東北の温かい人たちに支えられている雰囲気のいいチーム」と印象を語り、「1年目からスタメンで出て、新人王も取りたい。(大阪桐蔭高校の先輩で東北楽天の)浅村栄斗(ひでと)選手のような球界を代表する右バッターになりたい」と抱負を語った。

 

皆川選手は「指名されたのも自分だけの力ではなく、支えてくれた家族、見守ってくれた同期や後輩たち、指導者の皆さんのおかげ」と感謝の言葉を述べ、「(指名に)うぬぼれることなく、1年目からレギュラーとして活躍したい」と誓っていた。

古賀先輩とのバッテリーで勝つ! 「長く一軍で活躍したい」
埼玉西武2位 岩城颯空選手

 

質問(以下Q) 指名された率直な思いと、プロとしての抱負を聞かせてください

岩城颯空選手 うれしい気持ちでいっぱいです。うれしいという感情しかない。早く一軍で投げて、チームに貢献したいです。

 

Q 埼玉西武ライオンズという球団にはどのような印象がありますか

岩城選手 ピッチャー陣がとても良いイメージが強くあります。同じ東都リーグで投げていた2学年上の武内夏暉投手(國学院大出身)がチームにいらっしゃいますので、同じ左投手として負けないようにしたい。先輩の古賀悠斗選手(中大卒の捕手)と早くバッテリーを組んで勝っていきたいと思います。

 

 

Q 目標とする選手はいますか

岩城選手 (米メジャーリーグ、シカゴ・カブスの)今永昇太投手です。自分の魅力はストレート。今永投手もストレートが良いので、ストレートでどんどん押していくスタイルが自分と似ているのかなと思っていて、目標にして頑張りたい。

 

Q きょう、ドラフト当日を迎えた心境を教えてください

岩城選手 ちょっと(ドラフトを)意識しながら、きょうも練習していたんですけれど。そうですね、とても緊張していました。

 

Q 2位という指名順に対する思いを聞かせてください

岩城選手 (上位の)24人の中に入れたことは、高く評価していただいたと思っています。

先発で10勝、リリーフなら無失点
真っすぐで押す 強気のピッチング

 

Q プロ選手としての目標を教えてください

岩城選手 自分がどういうところ(場面)で投げるか、わからないのですが、先発もリリーフも、どちらもやろうと思っています。先発なら10勝を挙げてみたいですし、リリーフなら無失点で抑えたい。長く一軍で活躍したいというのが第一の目標です。

 

Q ファンに見てほしい、応援してほしいというポイントはありますか

岩城選手 ピンチの場面などで、真っすぐでどんどん押して抑えるのが自分の魅力。ピンチのときほど、真っすぐに頼るので、強気なピッチングを見てもらいたいです。

 

Q 中大の4年間で成長したのはどのような点ですか

岩城選手 「ストライク率」を上げる練習を意識して頑張ってきました。あとは体幹トレーニングなどを1年生のときからコツコツとやってきて、そういった積み重ねが結果(指名)につながったと思います。

 

Q 印象に残っている授業はありますか

岩城選手 1年生の頃に体育でバレーボールをして、それがすごく楽しかったなっていうのが一番にあります。

 

Q プロという夢をかなえるため、支えになったり大切にしたりしていた言葉はありますか

岩城選手 この4年間、試合があるたびに親からメッセージというか、言葉をかけてもらいました。「自分を信じてやりなさい。絶対大丈夫だから」とよく言われていました。4年間、いろいろなことがありましたが、この言葉があって、ここまで頑張ってこられたと思います。

 

Q プロで対戦してみたい選手はいますか

岩城選手 リーグが違いますが、(中大の)先輩の牧秀悟選手(横浜DeNA)、森下翔太選手(阪神)と勝負してみたいという思いがあります。

 

Q 近い将来、中大同期の繁永晟選手、皆川岳飛選手と対戦するかもしれません

岩城選手 やっぱり絶対に打たれたくないという思いがあるので、僕は全力で。真っすぐでいく(ストレートを投げる)かはわからないですけど、はい(笑い)。打たれないように全力で抑えたいと思います。

 

Q 埼玉という土地への思いや、何かゆかりはありますか

岩城選手 埼玉はまったく行った経験がないので、わからないんですけど…。初めての場所なので楽しみだなと思っています。(本拠地球場の)ベルーナドームは経験したことのない球場なので、投げるのが楽しみです。

☆ 岩城颯空投手

 

いわき・はくあ。富山商高卒、経済学部4年。182センチ、92キロ。左投げ左打ち。最速152キロの速球とキレのあるスライダーが持ち味。野球を始めたのは小学2年の頃。中大では1年から東都リーグ戦に出場。中継ぎでの登板を中心に、力強い直球を武器にチームに貢献した。4年生からは副主将を務めている。東都リーグの通算防御率1.70、通算勝利数は10勝。

球界を代表する打者、日本一に貢献できる選手に
中大で充実の4年間
東北楽天3位 繁永晟選手

 

質問(以下Q) 指名を受けた率直な思いと抱負を教えてください

繁永晟選手 指名されて、本当に今はすごくうれしいという気持ちでいっぱいです。選ばれたからには、東北楽天の一員として、日本一に貢献できるような選手になりたいと思っています。

 

Q 東北楽天という球団の印象を教えてください

繁永選手 東北のチームとあって、温かい人が多いと思いますし、雰囲気が良いチームだと思っています。

 

Q 目標とする選手はいますか

繁永選手 大阪桐蔭高校の先輩である浅村栄斗選手のような球界を代表する右バッターになりたいです。

 

初球から振っていける積極性
誰にも負けない「明るさ」

 

Q  選手としての長所、アピールポイントを教えてください

繁永選手 自分はバッティングが売りの選手で、初球から振っていける積極性や、広角に打てるミート力がアピールポイントだと思っています。それに加えて、(性格の)明るさは誰にも負けません。プロに行っても変えずにやっていきたい。

 

Q 1年目のシーズンはどのような活躍をしたいですか

繁永選手 1年目からスタメンで出るつもりで頑張ろうと思いますし、新人王も取りたいです。

 

Q 選手としてターニングポイントとなったような試合はありますか

繁永選手 大学3年の春、國学院大との2回戦で、初回に打った逆方向(右方向)へのホームランです。1、2年生のときは、「長打より単打」という選手だったんですが、3年生からウエイトトレーニングなどで体づくりをしっかりとした結果、逆方向への長打が出るようになった。その春はホームラン3本を打つことができました。

 

Q プロという夢をかなえるため、大切にしてきた言葉はありますか

繁永選手 小さい頃から、こういう明るい性格というわけではなかったんです。両親から「どんなときも周囲に明るく接していれば、良いことが起きる」と教えられ、言われ続けてきました。4年生になってキャプテンの重圧だったり、プロに行きたいというプレッシャーだったり、結果が出なかったりしたときにも、「楽しくやりなさい」という一言があったので、やってこられた。今後も忘れないようにやっていきたいと思います。

 

Q  4年間を過ごした中央大学はどのような存在、場所になりましたか

繁永選手 そうですね…。最初はチャンスは数回しかなかったんですけれど、チャンスをものにして、監督が1年生のときから試合で使い続けてくれたことは、本当にありがたいと思っています。1年生のときから、ずっとスタメンで出ていたので、後輩たちにもいい姿を見せられた4年間になったのではないかと思います。

 

Q 中大の好きなところを教えてください

繁永選手 学食がうまいと聞きます。食べたことがないんですけど(笑い)。食べてみたいです。

 

Q プロで対戦してみたい投手はいますか

繁永選手 ソフトバンクのリバン・モイネロ投手です。良いピッチャーだと思いますし、カーブがどのくらい曲がるのかを実感してみたいです。

 

Q 本拠地の仙台の印象を教えてください

繁永選手 仙台は行ったことがないので…。牛タンを食べたいです(笑い)。

☆ 繁永晟内野手

 

しげなが・あきら。福岡県出身。大阪桐蔭高卒、商学部4年。硬式野球部主将。173センチ、77キロ。右投げ右打ち。広角に打ち分ける技術と勝負強さ、選球眼の良さが持ち味。高校時代は甲子園出場2回。中大では1年春からリーグ戦に出場し、1年秋、3年春秋にベストナインを受賞、3年春には首位打者に輝いた。4年で主将を務め、大学日本代表にも2年連続で選出された。東都リーグの通算打率.260、通算打点22、通算本塁打数3。

1年目からレギュラー奪取!
支えてくれた両親へ「結果で恩返ししたい」
読売巨人軍4位 皆川岳飛選手

 

質問(以下Q) 指名を受けた率直な思いと抱負を教えてください

皆川岳飛選手 ほっとしています。(指名されたのは)自分だけの力ではなく、支えてくれた家族、ここで見守ってくれている指導者の方々、後輩たちのおかげ。ここがゴールではないので、プロ選手になっても、うぬぼれることなく、しっかりと1年目からレギュラーとして出られるように頑張りたい。

 

Q ジャイアンツという球団への印象を教えてください

皆川選手 阿部慎之助監督は中央大学出身ですので、厳しく指導されると思います。期待されているという覚悟をもって頑張りたい。

 

Q 目標とする選手はいますか

皆川選手 阿部監督や、同じ外野手の亀井善行コーチ(中大OB)です。中央大学の名に恥じないよう、立派な社会人として、球界を代表する選手になれればと思います。

広角に飛ばす打撃、肩と足にも自信
「走攻守そろった選手に」

 

Q どんな点を阿部監督にアピールしますか。セールスポイントは?

皆川選手 まずは社会人としての立派な態度。生活面で未熟なので、鍛えて見つめ直していかないと、という思いでいっぱいです。長所は広角に逆方向にも長打が打てるバッティングと、肩と足を生かした守備力、ツーストライクからも粘れる打撃など、そういう(チームから求められる)ところを追い求めていきたい。肩や足には自信あります。守備で投手を助け、走攻守そろった選手になりたい。

 

Q ドラフト当日のきょうをどのような心境で迎えましたか

皆川選手 大学ジャパン(日本代表)に選ばれずに挫折を味わった。でも、夢であるプロ選手になるという思いで練習し、あとは信じるのみという思いで、きょうを迎えました。ご縁のある球団に選んでいただき、うれしい気持ちでいっぱいです。(会見場に現れたときの涙は)少し不安もあったので、率直にほっとした気持ちと、すぐに駆け寄ってくれた同級生や、(会見場で)後輩たちやいろいろな方々が迎えてくれたので…。

 

Q 一緒にプレーしたい選手はいますか

皆川選手 中大で2学年上だった(巨人の)西舘勇陽(ゆうひ)投手とは、大学時代から仲良くしていただいたので、機会があれば後ろで守り、勝ち投手にできるように打撃で貢献したい。

 

Q 1年目のシーズンの目標と、プロ選手として目標を教えてください

皆川選手 レギュラーとして、けがをしないで1年を通して出られるような体づくりをして、新人王などのタイトルを狙いたいと思っています。チームの優勝や勝利に貢献できるような活躍をしたい。日本を代表するバッターになり、高校と大学で果たせなかった日本代表として日の丸を背負って戦いたい。

 

Q プロで対戦したい投手はいますか

皆川選手 中大の先輩である石田裕太郎投手(横浜DeNA)と対戦してみたい。映像を見ると、(大学時代以上に)良いピッチャーになられている。対戦する機会があれば、真っ向勝負でお願いしたいです。

 

Q 学生生活、寮生活の思い出はありますか

皆川選手 日々、同級生や後輩と他愛のない会話や、コミュニケーションを取るのが支えだった。これからなくなると思うと少し残念。授業では、岩城君(岩城颯空選手)と取った体育のバレーボールが楽しかった(笑い)。

 

Q 自身の支えとなってきた言葉はありますか

皆川選手 家族の言葉です。プロ野球選手という夢を(一緒に)追いかけ続けてくれた両親でしたので。つらいとき、いつも支えてくれたし、自分にとって力になる言葉を今でもかけてくれています。プロ選手として結果で恩返ししたい。

 

Q 交流戦で岩城選手と対戦する機会があるかもしれません

皆川選手 練習のシートバッティングでは、外の真っすぐしか投げてこないので、そこにヤマを張って…。インコースの真っすぐだったら、バットが折れてもセンター前にポトッと落としたいなと思います。

 

Q 打ちたい打順はありますか

皆川選手 おこがましいですが、4番です。

☆ 皆川岳飛外野手

 

みなかわ・がくと。群馬・前橋育英高卒、経済学部4年。181センチ、81キロ。右投げ左打ち。走攻守の3拍子そろった即戦力としてプロの評価が高い。小学1年で野球を始める。中大では1年春からリーグ戦に出場。4年秋に史上25人目の通算100安打を達成し、首位打者とともに、通算4回目となるベストナインも受賞した。4年生からは副主将を務めている。東都リーグの通算打率.278、通算打点28、通算本塁打数3。

中央大学応援団から激励のエールが3選手に送られた

【取材後記】 「尊敬」「信頼」で結び付く部員たち
夢をかなえる瞬間を3度、目に焼き付ける
学生記者 倉塚凜々子(国際経営4)

 

プロ野球選手になりたい。幼い頃、多くの友人がそう口にするのを耳にした。野球少年にとって、それはおそらく一番の夢であり、夢がかなうかどうかがわかるのがドラフト会議だ。10月23日、私の目の前にも、プロという夢を胸に、今日までひたむきに努力を続けた選手たちの、きゅっと引き締まった表情があった。

 

指名の瞬間を静かに待つその姿は、まさに「人事を尽くして天命を待つ」という言葉の通りであった。そして今回、硬式野球部の選手が夢をかなえる瞬間を、私は3度もこの目に焼き付けることができた。

 

多摩キャンパスCスクエアの会見場では、指名を待つ選手たちのほか、硬式野球部の樫山和男部長や清水達也監督、仲間の部員たち、大勢の報道関係者が、今か今かと指名の瞬間を待っていた。期待や不安が入り交じった空気が漂っていたように感じられた。

 

1巡目から指名を映しだしていくスクリーンに皆が注目し、岩城颯空選手が指名されると、会見場がワーッという大歓声に包まれた。拍手と歓声の先に、緊張の抜け切らない、それでいて、とてもうれしそうな岩城選手の表情を見ることができた。

 

繁永晟選手、皆川岳飛選手も指名され、歓喜の輪が広がった。岩城選手、繁永選手と2人の次に指名があった皆川選手は、特にプレッシャーを感じていたのではないか。会見場に現れたときは涙ぐみ、記者の質問に言葉を詰まらせながら答える姿が印象的だった。

 

最初は緊張した表情で答えていた岩城選手も、繁永選手、皆川選手といつもの仲間が加わって表情がほぐれ、笑顔が増えていったように見えた。

 

私は学生スポーツを見るのが好きだ。個々の存在もそうだが、チームという存在をとても大きく感じることができる。そこでは、困難や苦労を一緒に経験した部員同士が「尊敬」や「信頼」で結び付いているように見える。今回の会見でも、夢をかなえた先輩を後輩たちがとてもうれしそうに見守る姿から、そのことを強く感じることができた。

 

これからプロを目指す後輩たちに、先輩3人は大きな勇気を与えただろう。新たな夢に向かって踏み出す選手たちの挑戦を心から応援したい。

【取材後記】 積み重ねた努力、部員同士の絆
異なるチームで戦う3人、プロの舞台で輝いて
学生記者 金岡千聖(商3)

 

会見場の多摩キャンパスCスクエアで指名を待つ硬式野球部の選手たちの表情は硬く、空気が張り詰めていた。私は緊張感にのみ込まれそうになりながら、ドラフト会議が始まるのを待っていた。

 

1巡目、中央大学の選手の名は呼ばれなかった。2巡目、埼玉西武の指名で、「岩城颯空」とアナウンスが聞こえた瞬間、会場の空気が一変した。どよめきとは、まさにこのことだろう。拍手と歓声が響きわたる。

 

岩城選手は大きく表情を崩すことはなかったが、安心感のような、達成感のような感情がにじんでいた。隣に座る清水達也監督との固い握手に、積み重ねてきた努力を感じた。とりわけ印象的だったのは岩城選手を祝福する部員たちの表情だ。自分のことのように喜び、笑みをたたえた表情を見て、仲間を大事に思う気持ちと、ともに努力した者同士に生まれる絆を感じた。

 

岩城選手の会見中、主将の繁永晟選手が東北楽天3位、皆川岳飛選手が読売巨人軍4位で相次いで指名された。会見場に近い別室で部員たちと待機していた繁永選手が指名を受けたときには、喜びにわく声が会見場まで響いてきた。

 

主将としてチームをまとめてきた人望の厚さが、その歓声にも表れていた。繁永選手は「どんなときも周囲に明るく接していれば、良いことが絶対にやってくる」という家族の言葉を支えにしてきたそうだ。繁永選手の朗らかな性格は、会見で私が「中央大学の好きなところは?」と質問したところ、「学食がおいしいところです。食べたことはないですけど」と笑って答えてくれたところにも表れていた。

 

会見に“合流”した皆川選手は、指名された安心感とうれしさから、目に涙を浮かべていた。質問に詰まりながらも一生懸命に答える姿に、皆川選手が今日まで積み重ねてきた努力と、プロ選手になりたいという強い思いを感じた。

 

3人はプロ1年目を迎える来年、異なるチームでプレーすることになるが、プロの舞台での対戦も待ち遠しい。同じパ・リーグの岩城選手と繁永選手は対戦の可能性が高そうだが、岩城選手は「絶対打たれたくない」と意気込んでいた。岩城選手を指名した埼玉西武には中大OBの古賀悠斗捕手がいて、バッテリーを組む2人の姿も楽しみだ。

 

3人が大きな舞台で輝く日を心から願っている。

(左から)皆川岳飛選手、岩城颯空選手、繁永晟選手=2025年10月23日、多摩キャンパスCスクエア

【取材後記】 三者三様、喜びと涙 「One Team」の硬式野球部
学生記者 松岡響紀(経済2)

 

プロ野球ファンはシーズン中の試合観戦でもドキドキとワクワクを味わっているが、10月のドラフト会議も一大イベントである。私もそんなプロ野球ファンの一人として取材に臨んだ。

 

1巡目の指名が終わり、休憩を挟んだ後、岩城颯空選手が埼玉西武から2位で指名された。その瞬間、Cスクエアの会場は後輩部員らの大歓声に包まれ、私も心からうれしく思うと同時に安堵した思いもあった。繁永晟選手、皆川岳飛選手も続いて指名され、中大生3人がプロの世界に足を踏み出す瞬間に立ち会うことができた。同じ中大生として誇らしい気持ちでいっぱいになった。

 

記者会見では、3選手の思いを感じ取ることができた。岩城選手は安堵した表情、繁永選手は喜びの笑顔で、皆川選手は涙ながらにそれぞれ質問に答えた。三者三様に夢がかなったうれしさをかみしめ、プロ選手になるという夢への熱い思いを感じさせた。

 

実際に私は、春と秋の東都リーグ戦を観戦したことがあるが、指名された3選手の攻守にわたる活躍以外にも、魅力を感じることがあった。それは、チーム内外の雰囲気である。

 

リーグ開幕戦では、ベンチからの声出しだけでなく、スタンドで応援していた硬式野球部員たちが、グラウンドの選手に向かって激励や盛り上げの言葉を送っていた。その姿に「One  Team」で戦う姿勢を感じることができた。

 

選手以外にも、応援団や野球部のOB と思われる方々も多く駆けつけており、チームへの期待の大きさを知った。Cスクエアで待機していた部員たちが、指名された3選手に熱いエールを送っている姿を見て、来年もその次の年も“快挙”が続きそうな雰囲気も感じた。

 

少子化で野球人口も減少しているといわれているが、プロ選手への道は容易ではない。東都リーグでベストナインや最高殊勲選手賞に輝いた選手でも、指名されるとは限らない。硬式野球部から3人も指名されたことは、非常に素晴らしいことであり、一軍の舞台で輝きを放つ姿を心から楽しみにしている。

【取材後記】 皆川選手の「人間力」に感銘 強い志と情熱でプロでも活躍を!
学生記者 荒田智海(文2)

 

幼いころから追いかけてきた夢が現実になるというのは、どのような気持ちなのだろう。岩城颯空選手の名前が指名選手としてアナウンスされ、会見が始まるまでの準備の合間に、そんなことをふと思った。指名された硬式野球部の3選手とも小学校低学年の頃から野球を始め、プロの世界を目指してきた。10年以上の時を経てかなった夢である。

 

外国籍の選手や特別な場合を除き、多くのプロ選手はドラフト会議を経験して今に至る。プロ志望届を出した選手は皆、強い志をもってこの日を迎えたに違いない。この日最も心に残ったのは、会見での皆川岳飛選手の姿である。こみ上げる涙を堪えながら一つ一つの言葉をかみしめるように心境を語っていた。記者の質問に答えながらも、どこか自分自身に語りかけているようにも見えた。

 

硬式野球部の仲間とともに、自分を見つめ、問い続けた4年間だったのだろう。その歩みに間違いはなかった。プロの世界はこれまで以上に競争が激しくなる。プレッシャーに押しつぶされそうになるときがあるかもしれない。そんなときは、この日、指名後の会見でCスクエアの壇上に立ったときにわき起こった後輩部員の祝福の大歓声を思い返してほしい。後輩たちに勇気や希望を与えたこの日の記憶を思いだしてほしい。

 

皆川選手は会見で「立派な社会人として」という言葉を発した。野球選手である前に、一人の社会人として成長するという決意の表れであり、皆川選手の「人間力」の高さを感じた。そういう意識を持った選手は、審判や対戦相手にもリスペクトを忘れないだろうし、結果を残し続けるのだろう。慢心せずにやるべきことを全うしようとする皆川選手のような姿勢を、私も持たなくてはいけないと思った。

 

ドラフト会議翌日の東都リーグ最終戦に、3選手がそろって出場した。皆川選手は見事にリーグ通算100安打を記録した。東都リーグの長い歴史の中でも皆川選手が25人目という輝かしい記録だ。会見で目標の選手に名前を挙げた一人、中大OBで巨人の亀井善行コーチも達成している。

 

強い志と、それを貫徹する情熱があれば道は開ける。プロの世界に飛び込んでも次々に記録を打ち立ててほしい。頑張れ、皆川選手!岩城選手!繁永選手!

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