2025.08.05
2025年2月の第98回全日本学生スキー選手権大会で、スキー部の戸谷椋主将(法4=大会時3年)がアルペン男子1部回転で優勝した。最終学年で挑む2025~26年シーズンに向け、個人戦の連覇と、インカレ団体での総合優勝を目指し、戸谷主将はオフシーズンのトレーニングに余念がない。インカレの勝因や、今後の目標などを尋ねた。
インカレのアルペン男子1部回転で頂点に立った戸谷椋選手(写真提供:「中大スポーツ」新聞部)
ワールドカップ経験者や全日本強化指定選手もそろったインカレ・アルペン男子1部回転で勝利した。「力を出し切れば十分に戦える。納得のいく滑りができて大きな自信になった」と胸を張る。
インカレは各種目10位以内に入賞ポイントが与えられる。中大が男子1部で29年ぶりに総合優勝した2023年は、アルペンチームの中で戸谷選手だけがポイントを獲得できず、総合3位の2024年はアルペンチーム全体でポイントゼロだった。今回も総合3位と頂点にあと一歩だったものの、大学1、2年時の悔しさをバネに、個人種目での制覇を成し遂げた。
シーズン序盤から徐々に調子を上げ、前哨戦と位置づけた「第40回全日本学生アルペンチャンピオン大会」(2月7日、長野・菅平高原)で2位に食い込み、インカレに向けて弾みをつけた。
インカレ当日は降雪量が多く、雪質がソフトだった。霧も発生し、目視でコンディションを確かめづらい状況だったが、「行くしかない」と旗門を攻め抜いた。今後は、より技術的に難しくなり、繊細なスキーのコントロールを要求される、固い雪質コンディションで戦う力をつけていくことを課題に挙げている。
表彰式での戸谷椋選手(UNIVAS提供)
回転は、ほかのアルペン種目に比べ、旗門を通過する際のターンの技量を強く求められる技術系の種目だ。戸谷選手はレース中、「ターンを早く終わらせる」ことを一番に意識している。以前は「ターンで加速しよう」と考えていたが、「ターンはブレーキング動作であり、できり限り短く、早く終わらせた方がタイムは縮まる」と、ターンへの向き合い方が180度変わった。
中大1年の頃から、冬季五輪アルペンスキー3大会出場の湯浅直樹氏の指導を受けて、この意識の変化がもたらされた。戸谷選手も「指導されてきたことがようやく技術として形になってきた」とうなずく。今では、ターンの早さが調子の善しあしを図るバロメーターになっている。
「ターンを短く、早くする」ためにも、夏場のオフシーズンの練習への取り組みが大事だ。身体の瞬発力を高めるため、股関節の可動域を意識しながらウエートトレーニングをして筋力を鍛えたり、走力アップに取り組んだりする。「冬(試合)に必要な技術」を意識しながら、夏から冬につながるトレーニングを実践している。
オフシーズンの練習への取り組みで、冬季競技の選手の試合での姿は変わるという。「夏の努力がすべて報われるわけではないけれど、冬に向けて練習に励んだ選手の個性が競技に挑む姿に表れる」と、戸谷選手は説明する。自身の滑りは「落ち着いていて滑らかなスキー」と評価されることが多いそうだ。
アルペンの魅力は「100分の1秒を競う世界。そのスピード感」と即座に答えた。ターンの回数が多い回転は特に、ひとつのミスがフィニッシュでは大差となって表れる可能性がある繊細な種目でもある。
来季(2025~26年シーズン)は、「スキー部としてインカレの総合優勝を目指したい。個人としても、回転、大回転、スーパー大回転に出場して勝ちたい」と力強く話している。
戸谷椋主将(中央)を中心に、優勝を喜ぶ中大スキー部員ら(写真提供:中央大学スキー部)
☆ 戸谷椋選手
とや・りょう。長野県出身。北海道・小樽双葉高卒、法学部4年。181センチ、76キロ。両親の影響で幼少期にスキーを始め、高校は北海道のスキーの強豪校に進んだ。中大には文武両道の環境にひかれて進学。スキー部では主将を務め、「オン、オフがしっかりしていて、雰囲気の良さがチームの魅力です」と語る。競技以外もアウトドア派で、釣りやキャンプなどで気分転換を図る。
☆ アルペンスキー
回転(スラローム、SL)は大回転(ジャイアントスラローム、GS)とともに技術系のアルペン種目。高速系はスーパー大回転(スーパーG)と滑降(ダウンヒル)がある。大回転やスーパーGと比べ、回転はスタートとフィニッシュ地点の標高差が小さく、距離が短い。それとともにコース上の旗門数が多いため、細かなターンを連続して行う技術力が求められる。
旗門を攻め抜く戸谷椋選手(写真提供:「中大スポーツ」新聞部)
第98回全日本学生スキー選手権大会
アルペン男子1部回転(2025年2月21日、青森県大鰐町・大鰐温泉スキー場)
合計タイム(1本目、2本目)
① 戸谷椋(中央大) 1分43秒68(52秒34、51秒34)
② 大橋陵人(日本大) 1分43秒96(52秒75、51秒21)
③ 鎌田宇朗(早稲田大) 1分44秒15(51秒79、52秒36)
※上位3人